軍艦島の鉄筋建物を「衛星」で変位計測

sugitec

こんにちは。ここの所は朝から日差しの強い日が続いておりましたが、本日以降からずっと雨続きの予報となっています。とは言えど暑さはそんなにマシになる訳ではありませんので体調管理はしっかりと…

さて本日は、昨年スギテックの社員旅行の観光地の一つでもあった「軍艦島(端島)」の話題。GNSS(全球測位衛星システム)を利用した測位システムによる、鉄筋コンクリート建物の変位を計測するという、日本初である取り組みがされています。

築100年を越える鉄筋コンクリートの劣化の変形を計測。

この試みは日本アジアグループ株式会社の傘下、国際航業株式会社と国立研究開発法人建築研究所が、長崎市ならびに東京大学地震研究所の協力を得て実施されている共同プロジェクトとなっています。

このプロジェクトの老朽化した鉄筋コンクリートの経年による変形を計測することで劣化状態を確認し、建物自体が自然倒壊に至るメカニズムを把握する、ということが目的です。

計測は以下のような感じで30号棟屋上にセンサーを設置し、常時計測をおこなっています。


出典:国際航業

計測結果はネット経由でどこでも確認が可能

常に計測された結果に関しては刻々と変化する建物の変形の推移が確認できます。下図のように「水平量」や「沈下量」がいつでもネット上で確認できます。これは便利ですね。


出典:国際航業

この衛星測位システムは、次世代衛星測位システムの頭をとって「SMILEsafety」※と名付けられているそうです。
※「Satellite-based Monitoring Information system of Learning and Evaluation for safety」

ちなみにこのブログでも何度か紹介していたので皆さんご存知かもしれませんが、GNSSとは「アメリカ国防総省のGPS、ヨーロッパのGalileo、ロシアのGLONASS、中国のCompass」等システムの総称です。

じゃあ今回ご紹介している「SMILEsafety」はGNSSとうたっているので独自の全球測位衛星なのか?と思う所ですが、実は衛星はRTK(リアルタイムキネマティック)というGPSを利用しています。GPSです。

これに国際航業さんの独自の解析手法を加えて、2mmの変位まで捉えることができるようにしたシステムが「SMILEsafety」ということです。

SMILEsafetyの概要


出典:国際航業

衛星を使った測位手法であるキネマティックを用い、国際航業独自の解析手法を加えることで、約2mmという微小な変位を捉えることができます。衛星からの計測で地上2mmの変位を記録するというのはかなり驚異的ですが、これは国際航業さんの解析手法の凄さでしょう。

今回軍艦島での試行という感じですが、今後これを大地震の振動を受けた建物の変形を計測する技術にも応用可能と考えられていることから、大地震後の建物の診断技術の一つとして期待がされているということです。

まとめ

国内で軍艦島の鉄筋コンクリートほど古いRC造はありませんし、自然に朽ちていっているので良い試験体と言えそうです。旅行で訪れた際に軍艦島のガイドさんが、1年ぶりに訪れるだけで随分と建物の外観が変わってしまう。刻々と状況が変わっている。と言われていました。

海風や高波の影響をモロに受ける環境なので少々普通の環境よりも過酷ではあると思いますが、そのまま朽ちて崩れ去ってしまうには余りにも勿体無い、貴重な資料の集まりだと思いますので、こういった試みは素晴らしいですね。

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