こんにちは。建設・土木業界などではICT技術を使った見える化が進んできておりますが、この業界以外でも働き方改革として、見える化技術の開発が進んできています。本日は農業分野での見える化技術のご紹介。
土壌環境をリアルタイムに見える化するセンサー
出典:ラピスセミコンダクタ
ロームグループのラピスセミコンダクタさんが、農業法人・農業分野のICTサービスベンダー向けに開発した土壌センサーユニット「MJ1011」と呼ばれるこのユニット。
これは農業圃場(ほじょう)の管理で重要とされる、土壌環境の情報を見える化できるようにする技術製品です。このセンサーを土壌に直接埋め込むことで、EC(電気伝導度)、pH(酸性度)、地中の温度、含水率等の土壌環境情報をリアルタイムで測定することができます。
低消費電力と小型化を実現しており、ソーラーパネルを使ったシステムにも有効とのこと。定量的にデータを蓄積することで、栽培や管理へのフィードバックができるため、経年データの比較や将来予測などによる生産性の向上、及び品質管理への貢献、販売店への安定した出荷などへの効果が期待されています。
開発の背景
この製品の開発背景として、近年の農業分野では「6次産業化」が注目を集め、圃場にもICTの導入がおこなわれてきています。「6次産業」とは、農業や水産業などの1次産業が、食品加工(2次産業)や流通販売(3次産業)にも業務展開する経営形態のことです。
出典:ラピスセミコンダクタ
ちなみに何故6次なのかという所ですが、1次産業である農業が衰退してしまうと2次3次が成り立たないので、総合的な結合を図るという意味で、1次×2次×3次の掛け算で6という数字になっているそうです。
この6次産業化で、栽培や加工・流通情報などのデジタルデータ化や管理が進められる中、栽培の工程だけは天候などの自然環境に左右されやすいため、そこが管理におけるボトルネックになっていました。
その為「圃場環境の情報をリアルタイムでモニタリングしたい」というニーズがありましたが、従来の方法では土壌を採取し、それを評価施設で分析する必要があり、その方法だと数メートルで大きく変化する土壌環境のリアルタイム計測や、広範囲の土壌情報を同時に取得するというのは困難でした。
そこで半導体技術をベースに、ラピスセミコンダクタさんが得意とする無線通信技術や、低消費電力マイコン技術を組み合わせた土壌センサユニットの開発・商品化に至ったということです。
土壌センサユニットの特長
1.土壌環境指標4項目(EC・pH・地中温度・含水率)を同時計測可能
これまで採取した土壌を実験室で測定していましたが、土壌センサユニットと通信システムを併用することで、リアルタイム測定を可能にしています。
2.業界トップクラスの制御技術で超低消費電力を実現。太陽電池での長時間駆動も可能
太陽電池での動作が可能なため、圃場などでの電源供給の課題が解決され、土壌モニタリングの実現性を高めます。
3.どこでも使用できる小型・防水モジュール
削減された部品点数と、122×42×42mmの小型サイズで、先端部にある土壌センサ部分はワンタッチ交換式で、別売りのセンサヘッドとの交換も可能。IP67の環境耐性防水企画にも対応しています。
4.汎用I/Fにより、既存のIoTシステムにもかんたん接続
汎用コネクタを採用し、接続仕様を合わせることで、各種データロガー等、既存のIoTシステムへの導入も可能。
出典:ラピスセミコンダクタ
従来、実験室で測定しなければいけなかったものが、土壌に設置するだけで簡単に、しかもリアルタイムで環境を測定できるというのは、それだけでかなり画期的な改善となりそうです。
しかも電力の問題も解決している他、他の既存IoTシステムへの接続も可能にしている汎用性を持たせているのも素晴らしいですね。
今後もセンサーや通信技術の発達で、あらゆる産業でIoT技術などを活用した見える化が躍進してくるでしょう。