業界が直面する共通課題:非GNSS環境下での施工管理の限界
建設業界では、トンネルや屋内、地下などのGNSS(全地球測位システム)信号が届かない環境において、施工精度の確保が長年の課題とされてきました。さらに、深刻な人手不足や遠隔施工の必要性が高まる中、現場ではリアルタイムで正確な重機位置の把握が求められています。
新技術の登場:重機に手を加えず、1cm精度での動態検出が可能に
こうした中、鉄建建設、CalTa、マップフォーの3社が共同開発したのが、独自の自動検出システムと可搬式LiDARを活用した新たなマシンガイダンス技術です。
このシステムの特長は、重機そのものにLiDARやGPS装置を取り付けることなく、現場に設置したLiDARが点群データを取得し、重機の動きや出来形を自動で解析・可視化できる点にあります。リアルタイムに1cm単位での位置検出が可能となり、施工の正確性が飛躍的に向上します。
実証実験で確認された技術の信頼性
屋内試験施設にて行われた実証実験では、非GNSS環境下(LiDARとの距離10〜30m)での重機動態や掘削の進捗を、リアルタイムかつ高精度で検出できることが確認されました。
この成功により、現場における本格的な活用へ向けた道筋が見えつつあります。運転手は、タブレットやPC端末上の可視化されたデータを通じて、直感的に重機の稼働状況や掘削進捗を把握できるようになります。
現場のDXと働き方改革を支える技術へ
この技術が持つ最大の可能性は、遠隔施工管理の現実化にあります。情報通信ネットワークと組み合わせることで、遠隔地からでも重機の状況を正確に把握・操作できるようになり、これまで現場常駐が前提だった施工管理のあり方を大きく変えようとしています。
また、これにより、テレワークによる施工管理の導入や安全性の向上、作業負担の軽減が期待され、持続可能な建設業界の実現へ向けた大きな一歩となります。
今後の展望と建設業界へのインパクト
今後は、さらなる現場での実用化に向けた検証が進められ、マシンガイダンスの本格導入が視野に入っています。単なる“便利な新技術”にとどまらず、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を根幹から支える技術基盤として、広範な展開が期待されます。
まとめ:現場の制約を超える“目”をもたらす技術
これまで「測位ができないから仕方ない」と諦められていた非GNSS環境下での精密施工。それに対し、今回の技術は「現場に“新たな目”をもたらした」とも言える革新です。
重機の位置や稼働状況を1cm単位で把握できる時代が、すでに始まりつつあります。単なる技術開発ではなく、働き方そのものを変える力を秘めた取り組みとして、今後も注目していく価値があるでしょう。
参考情報
□鉄建建設株式会社「独自の自動検出システムによる革新的マシンガイダンス」
https://www.tekken.co.jp/media/20250327_Developed%20machine%20guidance%20technology_Tekken%20CalTa%20Map%204.pdf(PDFデータ)
※本記事は、鉄建建設株式会社の公式リリース情報をもとにしています。
□CalTa 株式会社
https://calta.co.jp/
□株式会社マップフォー
https://www.map4.jp/