CO2を固定化するコンクリート技術が前進
鹿島建設と川崎重工は、大気中から回収したCO2を利用してコンクリートを製造する実証実験に成功しました。今回の実験では、川崎重工のDirect Air Capture(DAC)技術を用いてCO2を回収し、それを鹿島が開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM®(シーオーツースイコム)」の製造に活用。この技術を用いた舗装ブロック「CUCO®-SUICOMブロック」が、2025年大阪・関西万博の「サステナドーム」のエントランスに敷設されました。
この技術の確立により、今後、建設業界のCO2排出量削減やカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献する可能性があります。
CO2吸収コンクリートとは?
CO2-SUICOMは、従来のコンクリートとは異なり、製造過程でCO2を吸収・固定化する技術を持つコンクリートです。これにより、通常のコンクリートが排出するCO2を実質ゼロ以下にすることが可能となります。
CO2固定化のプロセスは、「炭酸化養生」という手法を用いています。これは、CO2を封入した環境でコンクリートを硬化させることで、CO2を内部に閉じ込める方法です。これまでCO2-SUICOMの炭酸化養生には、外部から購入したCO2を使用していましたが、今回の実証では大気中から直接回収したCO2を利用することに成功しました。
この技術の確立により、CO2の供給方法を自前で確保できるようになり、より持続可能なコンクリート生産が可能となります。
DAC技術で大気中のCO2を直接回収
今回、CO2-SUICOMのCO2供給源として活用されたのが、川崎重工が開発したDirect Air Capture(DAC)技術です。
DAC技術の特徴
- 大気中のCO2を直接分離・回収する技術
- 1日5kg以上のCO2を99%以上の高純度で回収
- コンテナ型装置により、さまざまな場所に設置が可能
- 完全自動でCO2を供給し、コンクリートの炭酸化養生に活用
DACは、外部のCO2供給に頼らずに建設現場や工場でCO2を自給自足できる可能性を秘めた技術です。今回の実証では、日本興業株式会社のプレキャストコンクリート製造工場で、このDAC装置と炭酸化養生槽を組み合わせたシステムが試されました。
今後の展望:CO2を「地産地消」する社会へ
今回の技術実証により、建設業界におけるCO2削減の新たな可能性が示されました。今後の展開として、鹿島と川崎重工は以下の取り組みを進めていきます。
- プレキャストコンクリート工場における本格的なCO2-SUICOMの量産化
- CO2需要に合わせたDAC装置の規模拡大と最適化
- 建設現場や都市部にDAC装置を分散配置し、CO2の地産地消を目指す
この取り組みが進めば、将来的には都市のCO2を都市の建材に固定する「カーボンサイクル都市」の実現も期待されます。
まとめ:建設業界の脱炭素化が現実に
CO2を吸収・固定化するコンクリート技術の発展は、建設業界のカーボンニュートラル化を加速させる大きな一歩です。今回の実証では、DAC技術とCO2-SUICOMを組み合わせることで、外部からCO2を購入することなく、大気中のCO2を直接活用できる新たな可能性が示されました。
今後、この技術が量産化・実用化されれば、建築物や道路がCO2を吸収する「環境貢献型インフラ」としての役割を果たすことも考えられます。
これまで「CO2を出さない社会を作る」ことが目標でしたが、これからは「CO2を積極的に活用する社会」へシフトする時代がやってくるかもしれません。今後の研究開発の進展に期待したいところです。
参考情報:
□鹿島建設株式会社「大気中から回収したCO2を用いたコンクリート製造を実証」
https://www.kajima.co.jp/news/press/202503/12c1-j.htm
※本記事は、鹿島建設株式会社の公式リリース情報をもとにしています。