大成建設✕Madaster
日本版建設物資源循環データプラットフォーム構築に着手

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概要

大成建設株式会社(以下、大成建設)は、オランダに本社を置くMadaster社と提携し、Madaster社が開発したプラットフォーム※1の国内建設物への適用検討を開始するとともに、日本版の建設物資源循環データプラットフォームの構築に着手というリリースニュースをお届けします。

日本版建設物資源循環データプラットフォーム構築へ

現在建設中の「大成建設グループ次世代技術研究所」(所在地:埼玉県幸手市、以後、次世代技術研究所)において、同社が開発したプラットフォーム(図1参照)の試用を通じて、建設物のライフサイクル全体で使用される各建材・設備および建設物全体の資源循環に関するデータ解析を行い、課題抽出と改良を加えることで日本版プラットフォームの構築を目指します。

図1 Madaster プラットフォーム概念図

2023年3月に策定された経済産業省の「成長志向型の資源自律経済戦略」※2では、資源枯渇に伴う制約や調達リスク等の増大、廃棄物処理の課題などを背景に、製品・生産・事業などのライフサイクル全体で資源の効率的・循環的な利用やサーキュラーエコノミー※3の推進等が求められています。
また、2023年12月には環境省から「循環型社会形成推進基本計画の策定指針」が公表され、業界・企業に関わらず動静脈連携※4によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環の推進等が示されました。このため産業界では廃棄物の再利用に加え、建材・製品などの設計段階から廃棄物やCO2などの排出を抑制し、資源を循環させて有効利用するなど、サーキュラーエコノミーの推進が極めて重要な取り組みとなっています。

一方、建設物に使用される建材・設備等は、鉄・コンクリート・木質等の構造部材やガラス等の外装材、石こうボード等の内装材、空調・衛生等を含めた設備部材など多種多様となっています。
また、調達、施工、運用・維持管理、解体まで建設物のライフサイクルは長期間にわたり、各建材・設備等の交換時期は使用状況に応じて異なってきます。そのため、建設物のライフサイクル全体で使用される建材・設備等をサーキュラーエコノミーの観点から統合して管理する仕組みづくりが急務となっています。

そこで大成建設は、建材・設備毎の環境インパクト※5を数値化した資源循環データベースに基づくMadasterプラットフォームを国内建設物に適用できるよう課題抽出と改良を施した上で、日本版の建設物資源循環データプラットフォームの構築に着手することとしました。

今回試用するMadasterプラットフォームは、建物や橋など建設物のCAD(BIM/CIM)データと資材仕様やトレーサビリティに関するExcelデータを連携させ活用することにより、建設物のライフサイクル全体で使用される各建材・設備および建設物全体でのサーキュラリティ※6等の数値化やCO2排出量を算出し、見える化することができます。(図2参照)

また、今後構築する日本版では設計段階から資源循環性が高く、CO2削減にも配慮した建設物のライフサイクルを踏まえた効率的な計画策定、維持管理を可能とし、解体時には建材ごとに再資源化の程度も予測させることができ、建設物のマテリアルバンク※7としての機能を付与する可能性も期待されます。これらの取り組みを進めることにより、循環型社会および脱炭素社会の形成にも貢献できます。

今後、大成建設は、Madasterプラットフォームの試用および運用を通じて課題抽出と改良を加えながら日本版プラットフォームの構築を進め、各建材・設備および建設物の設計段階から解体までライフサイクル全体を通じた資源循環性やCO2排出量等に関する精度の高い情報を提供し、サーキュラーエコノミーの推進を目指すお客様や社会のニーズに対応することで、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

※1
Madaster社の開発プラットフォーム:
本プラットフォームは、各指標の算出にオランダの原単位等を採用しており、一部の機能が日本の実情に適合していないという課題があることから、今回の試用で取得するさまざまなデータを解析し、日本に適した「建設物の資源循環データプラットフォーム」の構築を目指す。

※2
成長志向型の資源自律経済戦略:
『循環経済ビジョン2020』に基づく戦略。同戦略では、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会プラットフォーム(リニアエコノミー)から資源の効率的・循環的な利用とストックの有効活用を最大化する社会経済プラットフォーム(サーキュラーエコノミー)への転換を掲げている。

※3
サーキュラーエコノミー:
サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、従来の3Rの取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指す取り組み。

※4
動静脈連携:
製造・流通など資源を供給する動脈企業と消費・使用された廃棄物の回収・選別・リサイクルを行う静脈企業による連携のことで、サーキュラーエコノミーの実現に向けてモノのライフサイクル全体での資源循環を推進するために必要となる仕組み。

※5
環境インパクト:自然環境や生態系を変化させる影響(力)のこと。

※6
サーキュラリティ:
サーキュラリティ(循環性)は、「リサイクル材使用率」および「解体時にリサイクル可能性のある材料の割合」と「長寿命指標」から算出される本プラットフォーム独自の数値。

※7
マテリアルバンク:建設物を資源の貯蔵庫(バンク)と捉えた概念。

資料引用:大成建設

おわりに

EUでは、デジタル製品パスポート(DPP)が盛り込まれたエコデザイン規則案がいよいよ発効に向かって動き始めています。モノと情報の一体化による資源の高付加価値化はサーキュラーエコノミーにおいて必然の流れなのでしょう。
世界のCO2総排出量の約4割を占めるとされる建造環境においては、建築物を資源貯蔵庫と見なす「マテリアルバンク」とそれを実現するツールであるマテリアルパスポートにフォーカスが当たっています。このマテリアルパスポート(Material Passport)とは、建築に使用される材料の履歴とリサイクル方法をデータベース化することで、材料の利用の最適化をサポートする技術です。マテリアルパスポートは、2014年にオランダの建築家Thomas Rau氏が建設物やその備品を建設物の再利用可能な材料貯蔵設備と考え、革や布、金属など再利用可能材料の種類や分解性などを記録したものを呼称したことに由来しています。EUを中心に標準化と利用が進んでおり、材料がどのサプライヤーから提供され、どのプロジェクトで使われたのかのトレーサビリティ(追跡可能性)を確保する目的で利用されています。

資材をデータサイエンスする。日本の建設の現場に根付くことができるのか。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□大成建設株式会社
リリースニュース:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/240305_9937.html

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