概要
NEDO※1のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクト(以下、本事業)の一環として、鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、デンカ株式会社、株式会社竹中工務店とともに、本事業を実施するコンソーシアムであるCUCO®(クーコ)の幹事会社として、コンクリートの製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)の排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリート※2の開発を進行というリリースニュースをお届けします。
消波ブロック「CUCO®-SUICOMテトラポッド」
熱海ビーチライン沿岸に設置したCUCOテトラ
今般、鹿島建設と本事業の共同実施先である株式会社不動テトラ(社長:奥田眞也)は、カーボンネガティブコンクリートを市中のレディーミクストコンクリート工場(以下、生コン工場)において製造・出荷し、熱海ビーチライン(静岡県熱海市)の屋外製造ヤードで打設から脱型、炭酸化養生※3までの一連の作業を行い、消波ブロック「CUCO®-SUICOMテトラポッド」(以下、CUCOテトラ)を製造しました。
これにより、製造段階で排出されるCO2を一般的なコンクリートで製造されるテトラポッド※4と比較して112%削減することに成功しました。また、鹿島建設が培ってきた炭酸化養生技術によりCUCOテトラ表面を低アルカリ化し、より環境に優しいコンクリートを実現しています。
今後、NEDOとCUCOは、CUCOテトラの早期の社会実装を目指し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献できる取り組みを進めていきます。
※1 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
※2 製造時のCO2排出量よりも、CO2削減・固定・吸収量の方が多いコンクリート
※3 CO2を封入した槽内でコンクリートを養生し、CO2を安定な形で吸収・固定する方法
※4 「テトラポッド」は不動テトラの登録商標
開発の背景
海に囲まれ、台風や高波の被害が多い日本では、海岸沿いに消波ブロックを設置することで、沿岸の住居やインフラを守っています。この内、テトラポッドだけでも全国で年間50万tが製造・設置されています。その一方、テトラポッドは製造時に大量のCO2を排出するセメントから成るコンクリート製品であるため、より環境に優しい製品の開発が必要であると考えます。
なお、脱炭素社会の構築について、国土交通省からは2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた「カーボンニュートラルポート※5」の構想が打ち出されており、この環境に優しいテトラポッドは本構想の実現に資するものと考えます。
※5 「2050年カーボンニュートラル」等の政府目標の下、日本の産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニア等の受入環境の整備等を図るもの
技術と成果の概要
これまでに本事業で開発した薄型のコンクリート製品※6で得た知見を発展させたCUCOテトラは、材料と製造方法の工夫により、大きな断面を持つ部材として初めてカーボンネガティブを達成しました。
具体的には、製造時にあらかじめCO2を吸収・固定した材料(CCU材料)である炭酸カルシウムを大量に配合するとともに、炭酸化養生を行うことでCO2の吸収量と固定量を増大しました。これにより、一般的なコンクリートで製造したテトラポッドと比較して、製造時に排出されるCO2を100%削減し、さらに12%のCO2を吸収・固定できました。また、炭酸化養生によりコンクリートの表面が低アルカリ化し、環境保全に適したものとなっています。
これまで炭酸化養生を行うコンクリートは、プレキャストコンクリート工場で製造・出荷されるものでしたが、今回、初めて市中の生コン工場で製造したコンクリートをアジテータ車で運搬、打設・脱型、そして炭酸化養生し、完成までの全ての工程を現場で実施できることを確認しました。
CUCOテトラの概念図
※6 NEDOグリーンイノベーション基金事業の成果としてカーボンネガティブを実現するコンクリートを用いた「CUCO-SUICOM型枠」を国土交通省発注の現場に初適用(2022年11月16日プレスリリース)https://www.kajima.co.jp/news/press/202211/16c1-j.htm ※7 CCU(CO2回収・貯留)粉体である炭酸カルシウム「エコタンカル」は日本コンクリート工業の登録商標 ※8 CO2と反応して固まる特殊混和材γ-C2S 「LEAF」はデンカの登録商標
製造の流れ
(1) 生コン工場でコンクリートを製造して設置場所近傍の屋外ヤードまで運搬し、テトラポッドの型枠へ打ち込む
(2) 脱型後、炭酸化養生槽の中でCO2を吸収させる
(3) CUCOテトラの完成・設置(今回は、耐久性試験のため、海岸付近の陸上に設置しています)
今後の展開
今回の製造過程で得た課題を解決し、耐久性試験等を経てCUCOテトラの早期の社会実装を目指します。CUCOは、「2050年カーボンニュートラル」社会の実現に貢献すべく、さらなる研究開発を進めてまいります。
(参考)
環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM®(シーオーツースイコム)」
動画でみる鹿島建設の土木技術 カーボンニュートラル(CN)
(熱海ビーチライン)
鹿島建設は、2021年に、グループ会社の鹿島道路株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:吉田英信)と、道路の維持補修や環境配慮技術の社会実証・実装を行うことを目的に、熱海インフラマネジメント合同会社(本社:東京都港区、社長:太皷地敏夫)を設立し、熱海ビーチラインの事業を運営しています。
資料引用:鹿島建設
おわりに
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、震源域南西部にあたる能登半島北西部の海岸で、最大で約4mの海岸の地震時隆起が生じたと推定されています。
能登半島地震では、皆月海岸東端部に位置する皆月漁港で約3.3m、皆月漁港南で約3.4mの海岸隆起が推定されています。また、黒島漁港でも最大4mの海底隆起が確認されています。
海洋資源の復旧にも定評のある鹿島建設の土木技術。
環境配慮型コンクリートを用いた消波ブロックで、能登の住居やインフラを復旧できる将来を切に願いたい。復興をともに。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202401/25c1-j.htm