概要
鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、製造過程で排出されるCO2排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」(シーオーツースイコム)を用いた埋設型枠を、高速道路の橋脚工事に初めて導入しました。これにより、通常排出されるCO2を100%削減し、さらに10%のCO2を吸収しました。橋脚1基あたりの温室効果ガス(CO2)の固定化量は59kgです。
また、埋設型枠※とすることで、CO2削減と同時に、脱枠作業の省略による橋脚工事の工程合理化を実現したリリースニュースをお届けします。
※埋設型枠:コンクリート打設後も取り外すことなく構造物の一部として使用される型枠
CO2-SUICOMとは
CO2-SUICOM埋設型枠の導入 完成パースと橋脚写真
「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」は、「CO2–Storage and Utilization for Infrastructure by COncrete Materials」の略称(商品名)で、コンクリートが固まる過程でCO2を吸い込み、貯めてしまう技術です。
コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下、つまり人間の生産活動で排出されるCO2を減少させることに世界で初めて成功したコンクリート技術です。
具体的には、コンクリートの主原料となるセメントの半分以上を特殊な混和材「γ-C2S」や産業副産物に置き換えることで、セメントの製造時に排出されるCO2を削減します。
さらに「炭酸化養生」を行うことで、コンクリートが固まる過程でγ-C2Sが大量のCO2を吸収・固定します。
埋設型枠の使用によるCO2固定量
セメントや骨材などの材料起因による当埋設型枠のCO2排出量は207kg/m3です。
この埋設型枠を製造時に炭酸化養生することで、229kg/m3のCO2を吸収させました。
これにより、当埋設型枠の実質CO2排出量は▲22kg/m3となりました。
今回、本橋脚に設置した埋設型枠のコンクリート総使用量は2.68m3であるため、CO2総排出量は▲59kgとなりました。
埋設型枠の施工の流れ
以下の(1)~(2)の作業を所定の高さまで繰り返し、埋設型枠設置完了後にコンクリートを打設して、橋脚の埋設型枠箇所が完成します。
(1) 埋設型枠を鋼材で連結して大判化
(2) 大判化した埋設型枠を所定の位置に建込み、据付
(3) 埋設型枠内にコンクリート打込み
なお、埋設型枠はそのまま構造物の一部となるため、脱枠作業なしに次の工程に移ることができます。これにより施工の生産性向上にも貢献しました。
今後の展開
鹿島は今後、建設構造物へのCO2-SUICOMの採用を提案し、脱炭素社会の実現ならびに生産性の向上に貢献していきます。
工事概要
工事名 : 海老江工区開削トンネル工事
工事場所 : 大阪市福島区海老江8丁目付近
発注者 : 阪神高速道路株式会社
施工者 : 鹿島建設株式会社
用途 : 高速道路
工事諸元 : 開削トンネル/土工・擁壁区間(延長508m),高架橋下部工(13基)
工期 : 2019年6月~2024年3月
資料引用:鹿島建設
おわりに
上記の写真はCO2-SUICOM(シーオーツースイコム)の紹介ページからの引用ですが、生育環境を同じとして、CO2-SUICOMで作った鉢で育てた小松菜の成長は明らかにいきいきと繁茂しています。
CO2-SUICOM自体がCO2を吸収しているので、マメ科に寄生する「根粒菌」に近い役割をしていると考えると成長度合いに差が出ているのだろうと考えられます。
本来の根粒菌は空気中の窒素をアンモニアに変換する窒素固定を行い、固定した窒素をマメ科植物に供給することで、マメ科植物の生長に大きく貢献します。
しかし、このCO2-SUICOM場合、直接、大気のCO2を吸収つまり「固定」するわけで、植物は葉から大気のCO2を吸収して光合成をするところ、さらに根からもCO2を吸収できる循環圏を形成するので、無肥のままでも成長が可能でしょう。
一つの建設素材が産業を超えて転用の可能性をひめる素材なのではないかとライターは思いました。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202305/9c1-j.html