概要
株式会社安藤・間(以下、安藤ハザマ)は、脱炭素社会の実現を見据え、建設事業等の事業活動に関連する温室効果ガスの削減に向けてさまざまな取り組みを推進しています。その一つとして、温室効果ガスなどの環境影響物質を建築工事の見積書から自動計算する仕組み(以下、LCA(ライフサイクルアセスメント)(注1)支援システム(注2))を開発しました。本システムにより、「業界統一の算定ルールがない」「相応のコストと時間が必要」の2つの課題を解決し、建物のライフサイクルを通じた公的なLCA算定数値「見える化」情報をお客様に早期に提供できるというリリースニュースをお届けします(図1)。
見積書から温室効果ガスなどの環境影響物質を自動計算
お客様が得られる効果
安藤ハザマが提供する「見える化」したLCA算定数値は、お客様のサプライチェーン排出量の定量評価に貢献し、ステークホルダーとのコミュニケーション(図2)にご活用いただけます。
- 計画段階から建築物を公的な指標で算定することで、具体的な削減シナリオを分析できます
- ベンダーからの建築物のカーボンニュートラル化要求に対して、根拠に基づいた対応ができます
- 安藤ハザマの設計施工案件だけでなく、他社設計案件にも対応できます
- TCFD、CDP、SBTなどの情報開示の根拠データとして、プライム市場上場企業等に求められる情報開示にも活用できます
背景および本システムの特長
脱炭素社会を実現するためには、二酸化炭素をはじめとする環境負荷物質の定量分析により環境影響を評価するLCAが有効であり、負荷削減策を計画、実行することが不可欠です。
LCAの手法はISO14040/14044に規格化されていますが、ISOに準拠したLCAを実施するには、高い専門性が求められます。
そこで安藤ハザマでは、公平かつ信頼できる評価手法を確立するため、LCA用インベントリデータベース「IDEA(注3)」と、LCA評価ツール(IDEA用)(注4)を活用することで、二酸化炭素だけでなく多様な環境負荷物質を合わせた総合的な環境影響評価の仕組みを確立してきました(注5)。
しかしながら、建設分野は資材投入量が多いため、1物件の算定で多くの時間や労力が必要な点が課題でした。
本システムは、建築工事の見積で利用した資材の内訳明細書をシステムにアップロードすると、LCA評価に必要なすべての項目にIDEAコード等を自動で紐付け、修繕改修を含めたライフサイクル全体のLCA評価レポートを出力します(図3)。
今後の展開
本システムによるLCA算定結果や活用例を積極的にお客様にご提案していくとともに、安藤ハザマで開発を進めている「企画段階のボリューム設計を自動化するシステム(注6)」との連携も検討していきます。
- 注1 LCA(ライフサイクルアセスメント)
製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法。 - 注2 LCA支援システム
株式会社コトバデザインによる技術提供を元に開発したシステム。 - 注3 IDEA
産業技術総合研究所 安全科学研究部門が開発、運用している環境影響評価用のデータベース。農林水産業、鉱業、建築・土木などの非製造業、飲食料品、繊維、化学工業、窯業・建材、金属、機械などの製造業と電力・都市ガス、上下水道、運輸業などのすべての製品を対象とした網羅性の高いインベントリデータベース。 - 注4 LCA評価ツール
日本建築学会地球環境委員会LCA小委員会にて開発した、IDEAデータベースを用いて環境負荷物質を評価するツール。 - 注5 総合的な環境影響評価
二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF2)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、生物化学的酸素要求量(BOD)等を総合的に判断することで、オゾン層破壊・酸性雨・大気汚染・富栄養化などを含む様々な評価が可能。広島県公立大学法人県立広島大学 小林謙介准教授との共同研究を実施。安藤ハザマ2021年4月13日リリース資料を参照
LCA手法を活用した、建築物の新たな環境影響評価 - 注6 安藤ハザマ2022年1月24日リリース資料を参照
企画段階のボリューム設計を自動化するシステムを開発中
同システムの「コスト算定プロセス」へのアドインにより、設計初期段階においてより詳細なLCA予測も可能にしていくこと等も検討
資料引用:安藤ハザマ
おわりに
世界情勢を受けつつある昨今ですが、建設物の設計や施工において、環境負荷の低減が重視され、省エネ・再生可能エネルギーの利用、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物のリサイクルなどの取り組みが一層に進み始めています。
同時に、建設物のライフサイクル全体を考慮した持続可能な運用方法やメンテナンス方法の開発・普及が進められることにより、建物の寿命を延ばし、環境負荷を低減することが期待されます。
また、建設業界が単独で環境負荷の低減に取り組むだけでなく、サプライチェーン全体で環境負荷を削減する取り組みも必要です。つまり、建設に必要な資材や部品の調達、輸送、処理などにおいても環境負荷を考慮し、サプライチェーン全体の環境負荷を低減することが求められる時代が到来しています。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社安藤・間
リリースニュース:https://www.ad-hzm.co.jp/info/2023/20230316_01.php