概要
鹿島建設株式会社(以下、鹿島)は、静岡県熱海市の自動車専用有料道路「熱海ビーチライン」において、一定の区間を走行する車両の位置や速度を、道路上に敷設した光ファイバでリアルタイムに把握する実証試験を初めて実行。具体的には、ケーブル状の光ファイバセンサを車道と路肩の区画線上に設置し、高性能の光ファイバ計測器を用いて道路に生じる振動を計測しました。結果、同区間を走行する全ての車両の位置や速度などのデータが精密かつリアルタイムに取得でき、道路管理ツールとして活用できることを実証したというリリースニュースをお届けします。
走行車両の位置や速度を精密かつリアルタイムに把握
開発の背景
熱海ビーチラインのような自動車専用道路では、従来、交通状況や路面状態の異常を道路管理者による目視やカメラ監視、あるいはドライバーからの通報によって検知してきましたが、精度やリアルタイム性に欠けるといった課題がありました。
一方、鹿島は2021年に、グループ会社の鹿島道路株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:吉田英信)と、道路の維持補修や環境配慮技術の社会実証・実装を行うことを目的に、熱海インフラマネジメント合同会社(本社:東京都港区、社長:太皷地敏夫)を設立し、熱海ビーチラインの事業を運営しています。
そこで、近年進歩の著しい、高性能の分布型光ファイバ計測技術を熱海ビーチラインにおける道路舗装のモニタリングに採用し、その効果を検証することとしました。
実証試験の概要と確認された効果
実証試験の概要と確認された効果全長約6.1kmの熱海ビーチラインのうち、東京方の門川料金所付近から65m地点までを試験区間としました。
この区間の車道と路肩の区画線上にケーブル状の光ファイバセンサを敷設し、高性能の分布型光ファイバ計測器を用いて、車両走行に伴い道路に生じる振動を計測しました。
今回の計測では、微細な舗装の振動に着目し、光ファイバ計測技術の一つである、DAS※(Distributed Acoustic Sensing)方式による振動(動的ひずみ)の計測を行いました。
その結果、試験区間を走行する全ての車両の位置や速度を明確に把握することができ、パトロールや監視カメラを補完する道路管理ツールとして活用できることを確認しました。
このことから、光ファイバ計測を全線に用いることで、監視カメラによるプライバシー侵害などの問題もなく、すべての車両の走行状態を精密かつリアルタイムに把握できることが実証できました。
※ 振動(動的ひずみ)計測用の計測器「DAS」は、光ファイバ全長の振動状態を超高速(一秒間に数千~数万回)に把握可能
今後の展開
今後、熱海ビーチラインにおける光ファイバ計測区間を拡大し、車両重量の検出や海岸線道路特有の波浪による越波の発生検知、さらには降雨や気温の変化に伴う路面状態の評価に取り組んでいきます。
併せて、取得したデータを基に、インフラ事業者の道路管理ソリューションやドライバーへの道路情報提供サービスに向けたデジタルロード技術の実証を推進していきます。
熱海ビーチライン概要
正式名称 : 熱海海岸自動車道(道路運送法を根拠法令とする一般自動車道)
事業地 : 静岡県熱海市
延長 : 6.063km
設計・施工 : 鹿島建設株式会社
供用開始 : 1965年8月
運営会社 : 熱海インフラマネジメント合同会社
運用開始 : 2021年8月
資料引用:鹿島建設
おわりに
先日にご紹介した「光ファイバでダム堤体コンクリートのひずみ挙動を検知」の技術を道路管理ツールに転用した今回のリリースニュース。皆様はどうお感じになられたでしょうか。
ライターは週末に拝見したNHKドラマ「南海トラフ巨大地震 」を思い出しました。
敷設した地域の光ファイバで「ひずみ挙動」を感知できるのならば、大地震が発生する数日前に感知される大地からのスロースリップ挙動も感知できるのではないかと。
災害に立ち向かう国土強靭化を担う鹿島建設に双肩が託されている…。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202303/1c1-j.htm