概要
戸田建設株式会社(以下、戸田建設)は、近赤外線カメラデータを利用してトンネル切羽などの岩盤面から流出する水について定量評価する水検知手法を開発というリリースニュースをお届けします。
近赤外線カメラデータを用いた水検知手法
本開発により、岩盤面から発生する湧水を迅速、簡易、かつ定量的に評価することができるため、その情報を施工や維持管理に活用することで、工事の安全性や経済性の向上につなげるという。
開発の背景
岩盤斜面の水検知に関する研究は以前から行われていますが、そのほとんどは赤外線の中でも熱赤外線(波長8~14μm:図-1参照)カメラのデータを使用して評価されていました。
ただし、熱赤外線カメラで得られる温度データでは湧水範囲を特定することはできますが、流量との相関が不確定であり、湧水量を予測するのは困難です。
そこで、水の波長が吸収される性質を有する近赤外線カメラのデータに着目して、水検知に関する評価システムを考案しました。
近赤外線カメラデータを用いる理由
水検知に近赤外線カメラデータを用いる利点としては以下の2点が挙げられます。
1. 画像における利点:近赤外線の波長領域には水の波長を吸収する領域が含まれており、水がない場所では明るく表示され、水がある部分では暗く表示されます。つまり、水の有無を映像として明瞭に判断することができます。
2. 輝度値における利点:近赤外線カメラデータは、単位面積当たりの明るさを示す輝度値が得られます。輝度値は明るい箇所では高く(最大値:65,535 cd/m2)、暗い箇所では低く(最小値:0 cd/m2)なり、定量的な評価ができます。
本開発で使用している近赤外線カメラの特性としては以下の通りです(図-2参照)。
1 軽量・人力可搬
カメラ・PC・ポータブル電源を搭載し、持ち運びが可能な重量と大きさであるため、現場のどこにでも設置することができます。
2 撮影と同時に映像確認が可能
カメラと映像処理を行うPCを組み合わせたことで、撮影と同時に映像を確認することができるため、簡易に水の流出位置と範囲を判断することができます。
水検知の原理
近赤外線カメラデータを用いた流量予測手法の適用性を確認するために、室内実験を実施しました。花崗岩試料に一定流量の水を上部から流した状態で撮影を行いました(図-3参照)。
その結果、流量の増加とともに画像として暗くなる領域が増えていることが明らかとなり、画像による評価が可能であることを確認しました(図-4参照)。
定量的な評価として、以下のような手法をとりました。
- 各流量のデータのうち、1秒毎に同じ範囲の輝度値を抽出します。
- 水が影響していない値(画像で白色となる箇所の値)を基準値(値:65,535 cd/m2)として、各流量のデータから基準値を示す画素数を算出します。
- 各流量で求めた基準値を示す画素数を解析範囲の総画素数で除した割合を算出します(図-5参照)。
その結果、流量が増加するにつれて基準値の割合が少なくなっていることが明らかとなりました。
つまり、近赤外線カメラで得られたデータのうち、指定範囲内の基準値の割合と流量は相関があることが明らかとなり、流量予測が可能であることを確認しました。
今後の展開
今後は、近赤外線カメラデータを使用して湧水(範囲・流量)に関する評価手法を確立するとともに、現場での実証実験を行い、本開発の実用化を目指します。
また、岩盤面だけでなく、トンネルの覆工や構造物壁面等のコンクリート面での適用も視野に入れており、建設時だけでなく維持管理でも使用したいと考えています。
資料引用:戸田建設
おわりに
壁面や躯体劣化の前に、漏水調査も当然、必要となる。
赤外線サーモ調査を担う弊社としましては、今回の戸田建設様のリリースニュースは、学びのあるニュースと思うライターでした。今後の展開に注視したいと思います。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□戸田建設株式会社
リリースニュース:
https://www.toda.co.jp/news/2023/20230126_003164.html