概要
2022年12月1日、静岡県熱海市初島で、衛星ブロードバンドインターネット「Starlink」をau通信網のバックホール回線として利用する基地局の運用を開始したKDDI。auの高速通信を日本中どこででも体験できることを目指し、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域、災害対策など、今後全国約1,200カ所に順次提供を拡大するなかで、傘下のKDDIスマートドローン株式会社(以下、KDDIスマートドローン)は法人企業・自治体向けにStarlink×スマートドローンの実用化に向けた取り組み「Satellite Mobile Link」を公開。その将来イメージと「starlink」の歩みに注目したいとおもいます。
Starlink×スマートドローンの活用
KDDIスマートドローンは2022年12月5日、ドローンの利活用の幅を広げることを目的として、KDDIが提供するStarlinkを活用したauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」の取り扱いを開始。これまでモバイル通信の提供が困難とされていた山間部や島しょ地域においても、モバイル通信に対応したスマートドローンの提供が可能となります。
さらにKDDIスマートドローンと株式会社大林組 (以下 大林組)は、建設工事における監視・測量などの業務の生産性向上を目的とした、ドローン活用に関わる協業(注)を開始しており、今後はStarlink×スマートドローンの実用化に向けた取り組みの第一弾として、「Satellite Mobile Link」を活用したソリューションの構築にも取り組んでいきます。
(注)2022年11月9日報道発表「大林組とKDDIスマートドローン、ドローンによる建設工事の生産性向上で協業」https://kddi.smartdrone.co.jp/release/793/
「Satellite Mobile Link」の衛星基地局を介したモバイル通信と、KDDIスマートドローンが開発したドローンの遠隔制御・自律飛行や映像伝送を実現する運航管理システム、各用途に応じたドローンを組み合わせることにより、これまでモバイル通信の提供が困難であったエリアでもドローンの安全な長距離飛行や遠隔自律飛行が実現できます。
今後は社会課題やお客さまの課題の解決に向けて、山間部や島しょ地域におけるドローンを活用した日用品・医薬品配送、災害時の緊急物資配送、建設現場における監視や測量、インフラ設備などの監視や点検の分野において、実用化を目指します。
また、2022年12月5日から12月7日に東京ビックサイトで開催される「建設DX展」のKDDIブース(24-37)にて、大林組とKDDIスマートドローンのStarlinkを用いたドローンソリューション構築に向けた取り組みの展示を行います。
ドローン市場で注目を浴びるStarlink
モバイル通信環境の整備という克服すべき大きな課題が残るドローン市場ですが、この課題を解決するために注目を浴びているサービスがあります。それが、スペースX社が手掛ける衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」です。
Starlinkとは、世界中の人々にインターネット接続の提供を可能にするための人工衛星です。
2022年10月時点で3,000機超の衛星を打ち上げており、最終的には地球全体をカバーする計画です。
スターリンクは今では17カ国で提供されており、そのほか多くの国で規制当局に認可を申請しており、アメリカではTモバイルUSと提携し、2023年末までに携帯電話の電波が届かない地域に対して、音声通話やデータ通信サービスなどが使用できるようにすることを発表しています。日本初としてKDDIがスペースXと業務提携し、2022年に1,200箇所の基地局を介して地方の顧客向けにより高速な通信の提供を発表。同年12月に静岡県熱海市の初島にスターリンクを利用した最初のau基地局を設置完了と運用に至っています。
周知のように、2022年ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ウクライナでは通信インフラが攻撃され、開戦2日後の2月26日、ウクライナのデジタル転換相を兼務するフョードロフ副首相はツイッターでスターリンクの提供を要請。スペースX社CEOのイーロン・マスクは2022年2月27日7時33分(日本標準時)、ツイッターを通じて、スターリンクがウクライナで利用可能であると表明。
それ以降、スターリンクは、ウクライナの部隊による無人航空機(ドローン)での偵察や攻撃、公的機関や市民による戦況などのSNSへの投稿に利用され、国土防衛戦や国際世論に対する情報・宣伝戦を支えています。ウクライナでの利用者増加により、スマートフォン用のスターリンク接続システムは同年3月に一時、世界で最も多くダウンロードされたモバイルアプリになっています。
資料引用:KDDIスマートドローン
おわりに
「歴史は繰り返す」という言葉がありますが、新たな技術利用の実践がウクライナ侵攻での攻防戦で繰り広げられるドローン戦争で試されているのも事実。
僻地利用での通信状態の垣根をとりはらい日本のどの地域にでも安定的な通信環境を提供するプラチナバンド企業の公共的な使命でもある。ひいてはその地域の産業基盤、さらには日本の国防に通じるインフラであることを考えなければならないだろう。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□KDDIスマートドローン株式会社
https://kddi.smartdrone.co.jp/
リリースニュース:
https://kddi.smartdrone.co.jp/release/895/
Satellite Mobile Link
https://biz.kddi.com/service/satellite-mobile-link/