概要
2017年よりスギブログでも動向を記している會澤高圧コンクリート株式会社(以下、會澤高圧コンクリート)の自己治癒コンクリート『バジリスク』。このたび、国土交通省の新技術情報提供システムNETISに登録が完了。自己治癒コンクリートを広く普及させることでセメント由来の温室効果ガスの排出量を減らし、脱炭素化を目指す會澤高圧コンクリートの展望を見つめます。
「Basilisk HA自己治癒コンクリート」 国交省NETISに登録
會澤高圧コンクリートが世界で初めて実用化に成功したバクテリアの代謝機能を用いてコンクリートを自己治癒させるテクノロジー「Basilisk HA 自己治癒コンクリート」が、国土交通省の新技術情報提供システムNETIS(New Technology Information System、以下NETIS)に登録されました。
NETISは、新技術の活用促進のため、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的として、国土交通省が運用しているデータベースシステムです。
新技術にかかわる情報が分類され、インターネットで一般公開されているため全国の地方整備局や北海道開発局、工事事務所等で共有しやすく、国や地方自治体が行う公共事業全般にも積極的に利用されています。NETISの登録技術を使うことで、施工者は国や地方自治体が発注元となる公共工事において、工事成績評定や総合評価落札方式での加点対象となります。
私たちはコンクリートの耐久性を著しく向上させる自己治癒コンクリートを広く普及させることでセメント由来の温室効果ガスの排出量を戦略的に減らすNET ZERO運動に最も力を入れており、今回のNETIS登録をテコに本技術の普及に拍車をかけたい考えです。
【NETIS登録情報】
技術名称:Basilisk HA自己治癒コンクリート
NETIS登録番号:HK-220003-A
登録日:2022年7月28日
登録ページ: https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=HK-220003%20
Basilisk HA自己治癒コンクリートの概要
Basilisk HAコンクリートとは、アルカリ耐性のある特殊培養したバクテリアを生コンクリート製造時に処方することで、経年で“壊れて行く”通常のコンクリートを、クラック(ひび割れ)が発生しても自動的に治し続ける自己治癒型のスマートマテリアルへと転換する、バイオと素材技術を融合させたテクノロジーです。
コンクリートに自己治癒性能を付加することで圧倒的に長寿命化し、社会インフラ等のライフサイクルコストの削減に繋げることが可能になります。
新設時の初期コストは一定程度増加しますが、その後のメンテナンスがほぼ不要となるため修復コストの大幅な削減や人による維持管理・調査が軽減され人手不足の解消にもつながります。
また、ひとの手を介さず自己治癒メカニズムが絶えず繰り返されることで一世紀を優に越える高耐久化が実現し、通常60~65年で訪れるコンクリート系インフラの全面的な更新を先送りすることができます。この結果、セメント製造時に排出されるCO2を削減することにつながり、セメント・コンクリート産業全体の脱炭素化に大きく貢献することが可能です。
Basilisk HAコンクリートは普通コンクリートと比較して強度や耐久性が低下しないことが各種試験により確認出来ております。また使用するバクテリアが人体に悪影響を及ぼさないこともスクリーニング試験によって確認しております。
自己治癒のメカニズム
硬化後のコンクリートに劣化等の原因でひび割れが発生すると、侵入してくる水や酸素によってバクテリアは乾燥状態から解放されると同時に、ひび割れ表面のpHが下がりバクテリアは活動を開始します。
ひび割れ内に侵入する酸素を取り込み、分裂を繰り返しながらひび割れの表面で増殖を繰り返しバクテリアは活動を活発化させ乳酸カルシウムと酸素を摂取しながら代謝活動によりひび割れ内に炭酸カルシウムを排出することでひび割れを埋めていきます。
ひび割れが完全に閉塞すると、水や酸素の供給が断たれることでバクテリアは再び休眠状態を保ち、次のひび割れ発生に備えます。
Basilisk HA自己治癒コンクリートの効果
Basilisk HA自己治癒コンクリートは、コンクリート1立米当たり5kgのBasilisk HAを使用し、最大幅1mm程度までのひび割れを修復可能です。
自己治癒コンクリート製の養生水槽に意図的に生じさせたひび割れからの漏水を僅か2週間ほどで止めることができたことや、供用開始後に生じたボックスカルバート頂版内側のひび割れを結露による水により自己治癒した実現場の調査結果からも、本技術による自己治癒効果が確認出来ます。
使用用途としては、特に乾燥状態ではない環境下のコンクリート全般に利用できますが、水関係の構造物や地下建築物及びトンネルなど維持管理が難しい構造物のひび割れ修復に本領を発揮します。
ひび割れ発生初期の段階で自己修復していくことで内部の鉄筋保護に大きな効果が期待できます。
Basilisk HA自己治癒コンクリートの将来性
會澤高圧コンクリートは2020年11月に専用プラントによるHAの量産体制を確立して以来、すでにプレキャスト製品34,000トン、生コンクリート5,800立米の自己治癒コンクリートを供給して参りました。
NETIS登録を機に、今後はコンクリートのメンテナンスフリーを実現する切り札として、設計供用期間100年を標準として規定された高速道路や国道の橋梁のほか、港湾構造物や山岳トンネルおよび地下埋設物などへの採用を積極的に働きかけて行く考えです。
おわりに
基本技術概念の開発者は、オランダ・デルフト工科大学のヘンドリック M.ヨンカース博士。
コンクリート中に、特殊なバクテリアと栄養分のカルシウム有機塩を混入することで、コンクリートにひび割れが発生した際に、バクテリアの代謝活動によって自動的に修復する技術の開発に成功されました。この技術が、コンクリート構造物の長寿命化およびメンテナンスフリーまたは大幅軽減等の特長を有することが評価され、2015年に欧州特許庁の欧州発明家賞にノミネートされます。
それに注目したのが、會澤高圧コンクリート。この技術の将来性に着目し、実地調査と検証実験を行った結果を踏まえ、2016年6月に、この技術を利用した製品「Basilisk HA 自己治癒コンクリート」の日本での独占販売に関する契約を締結。足掛け6年を経て、新技術情報提供システムNETISへ登録。
脱炭素化の風を帆にうけ、普及への環境が整いました。
先週の8月25日付けの日本経済新聞オンラインの記事から、會澤高圧コンクリートは2022年度、バクテリアがひび割れを修復する「自己治癒」コンクリート製品の生産量を前年度比6倍の3万6000トンへ増産という一報があがっています。
そして、福島県浪江町でも23年4月、生産設備を稼働。住宅や農業用排水設備に加え、公共事業向けにも販路を広げるとのこと。
浪江町は福島第一原子力発電所からの距離が最も近いところで約4km、浪江町役場までは約8km。
A区域にある浪江町役場の付近の空間放射線量は、およそ0.1マイクロシーベルト毎時の現状です。
被災前、A区域の人口は全体の約4割を占めていましたが、このA区域を町の「復興の核となるエリア」として、まちづくり整備を進めています。
浪江町役場の機能の大部分は、平成29年4月1日より元の役場本庁舎に復帰。
避難指示が継続するC区域についても、「特定復興再生拠点区域」を設定して国による除染、インフラ復旧を進め、将来的に帰還できる環境づくりを目指します。
「Basilisk HA 自己治癒コンクリート」に混合されている、この特殊なバクテリアは、高アルカリ環境に耐え、200年まで休眠する。コンクリート硬化後、ひび割れが発生した場合、雨水などの水分が浸入すると酸素を有する環境下でバクテリアが復活し、修復期間は平均で6週間程度。栄養分を吸収して炭酸カルシウム(石灰石)を生み出しひび割れを閉塞し、内部の鉄筋腐食を防止するサイクルをコンクリート内に生態系を形成する。
200年のも補修生態系を築くことから、長い道のりの廃炉工程で使用する建屋建造物や汚染水の地中浸食防止壁の打設転用も考えるだろうとライターはふと考えます。
そして、インフラ整備の資材生産を軸に、地域の雇用拡大と人々の帰還につながり、浪江町の復興の一助になることを、心より願います。
引用参考・関連情報・お問い合わせなど
□會澤高圧コンクリート株式会社
リリースニュース:
https://www.aizawa-group.co.jp/news2022081801/
生産科学本部副本部長 酒井 亨
080-2863-4123
生産科学本部 品質システム統括 神坂 和博
080-2863-4184
Basilisk Webサイト
https://basilisk.co.jp/