清水建設
バイオ炭を用いてコンクリート構造物に炭素を貯留

sugitec

概要

カーボンネガティブの取り組みをコンクリート生成に「バイオ炭」を混合された環境配慮型コンクリートを開発した清水建設のリリースニュースです。


CO2の吸収が排出を上回る「カーボンネガティブ」とは?

カーボンネガティブとは、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)の量よりも大気から吸収するCO2の量の方が多い状態を指す。

世界的な温暖化対策への取り組みの一環として、世界中の企業から注目されています。ちなみにカーボンニュートラルは放出するCO2と吸収するCO2の差を「実質ゼロ」にする取組みです。

カーボンネガティブの具体的な手法として挙げられるのは「植林」や「グリーンエネルギーの生産」。カーボンニュートラルが「金銭の支払い」によってCO2排出量をオフセット(相殺)するのに対し、より積極的な行動といえます。

本日はカーボンネガティブの取り組みをコンクリート生成に「バイオ炭」を混合された環境配慮型コンクリートを開発した清水建設のリリースニュースをお届けします。

バイオ炭を用いてコンクリート構造物に炭素を貯留

清水建設株式会社(以下、清水建設)はこのほど、木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」をコンクリートに混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート(以下、バイオ炭コンクリート)を開発しました。

本技術は、成長過程で大気中のCO2を吸収した木材の炭化物を利用し、コンクリート内部にCO2を固定するもので、製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を高炉スラグで代替した低炭素セメントを併用することで、CO2の固定量が排出量を上回るカーボンネガティブを実現できます。

バイオ炭コンクリートは、普通コンクリートと同等の流動性も備え、施工現場で打設できるため、幅広いコンクリート構造物への適用が見込めます。

バイオ炭は、バイオマス原料を不完全燃焼させて炭化したもので、木材から生成したバイオ炭には、木が光合成で吸収したCO2が固定されています。

農業分野では、「バイオ炭の農地施用」が国のJ-クレジット制度の対象として認められ、バイオ炭によるCO2貯留量が環境価値としてクレジット化されています。
本技術では、粒状もしくは粉状にしたバイオ炭をコンクリートの混和材として利用することで、コンクリート生産に伴うCO2排出量の低減を図ります。

混和材として利用するバイオ炭の材料には、針葉樹や広葉樹の製材時に廃棄されるオガ粉を利用します。オガ粉を炭化したオガ炭は、他のバイオ炭と比べて炭素を安定的かつ多量に固定できる特徴があり、炭素含有率は約9割、100年後の炭素残存率も約9割に上ります。

混和材1kgあたりのCO2固定量は約2.7kgで、コンクリート1m3あたり60kgの混和材を添加することで、約160kgのCO2を固定できます。

セメント材料に普通ポルトランドセメントを使用した場合のCO2排出削減率は67%、製造に伴うCO2排出を抑制できる低炭素セメントを使用すれば最大127%のCO2排出削減効果が得られ、カーボンネガティブを実現できます。

バイオ炭コンクリートの強度については、一般的な土木配合(設計基準強度24N/mm2)において普通コンクリートと同等の性能を有することを硬化性状試験で確認しています。

施工性についても、現場でのポンプ圧送に適応する流動性をフレッシュ性状試験で確認しており、コンクリート二次製品への適用のみならず、現場でのコンクリート施工にも広く対応できます。

清水建設は今後、土木現場での実証施工を通じてバイオ炭コンクリートの施工性や耐久性を検証し、2022年度内に大規模コンクリート構造物への適用を目指します。併せて、J-クレジット制度での認証など、バイオ炭コンクリートの環境価値のクレジット化に向けた取り組みを進めていく考えです。

引用:清水建設 粉状および粒状のバイオ炭
引用:清水建設 硬化後のバイオ炭コンクリート

おわりに

折しも、太平洋セメント株式会社(以下、太平洋セメント)はセメント・セメント系固化材への「石炭価格サーチャージ制度」導入を2022年9月1日出荷分より開始。

太平洋セメントは昨今のエネルギー価格や輸送コストの高騰を受けて、本年1月よりトン当たり+2,000円のセメント販売価格の改定を実施。しかしながら、セメント製造用の石炭価格はその後も上昇を続けており、さらに本年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機として、前例がない水準まで高騰しているのが実情です。この未曽有のコスト高騰を企業努力だけで吸収することは困難であると判断し、事業継続のため石炭価格の変動をセメント販売価格に適時反映させる「石炭価格サーチャージ制度」を導入することを決定している。
本制度の実施期間は、2022年9月1日より2023年8月31日までとし、以降の対応は2023年6月時点の石炭価格動向等を踏まえ判断するとのこと。
目先の注視する指標としては2022年9~10月度のサーチャージ額の8月中旬の掲載発表が資材調達を左右すると思えます。

このように原材料の高騰を加味しつつ、並行してカーボンネガティブも行うことで、異素材を混合構成した新たなコンクリート生成が活発化していく機運が到来しているのではないでしょうか。


引用参考・関連情報・お問い合わせなど

□清水建設株式会社
リリースニュース:
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022030.html

□太平洋セメント株式会社
リリースニュース:
https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/220610.pdf

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