清水建設
コンクリート打設後のアンモニア低減対策で美術館・博物館の早期供用に貢献

sugitec

概要

清水建設株式会社(以下、清水建設)は美術館・博物館等の新築・改修工事向けのソリューション技術として、打設後の躯体コンクリートが文化財の収蔵・展示施設内に放散するアンモニアの濃度を確実かつ早期に低減させる手法を構築したことで、竣工後にアンモニアを減衰させるための“枯らし期間”を設ける必要がなくなり、施設の早期供用を実現できるというリリースニュースです。


清水建設のコンクリート打設後のアンモニア低減対策

清水建設はこのほど、美術館・博物館等の新築・改修工事向けのソリューション技術として、打設後の躯体コンクリートが文化財の収蔵・展示施設内に放散するアンモニアの濃度を確実かつ早期に低減させる手法を構築しました。

本ソリューションは、アンモニアの「発生抑制」「除去」「濃度管理」の各技術を組み合わせた対策メニューを施設ニーズに応じて提供するもので、工事の進捗に合わせて各メニューを適切に実践することで、竣工前に、対象室のアンモニア濃度を基準値以下に抑制します。

これにより、竣工後にアンモニアを減衰させるための“枯らし期間”を設ける必要がなくなり、施設の早期供用を実現できます。

背景

美術館・博物館等の収蔵庫や展示室では、文化財保護の観点から空気質を適切に管理することが求められます。

なかでも、物量の多い躯体コンクリートから放散されるアンモニアの濃度管理が重視されており、東京文化財研究所の指針では、室内濃度を30ppb以下に保持することが推奨されています。

一方、コンクリートの打設後、室内に拡散したアンモニアを基準値まで自然減衰させるには、1年以上の枯らし期間が必要とされています。

無対策の場合、状況によっては、空気質を改善するためだけに開業を遅らさざるを得なくなり、その分、投資回収が遅れることになります。

こうした課題に対し、従前から種々のアンモニア低減対策技術が開発されてきましたが、単発的かつ対処療法的に適用されるケースが多く、十分な対策効果は得られていませんでした。

アンモニア濃度管理と除去手法

そこで清水建設は、各種対策技術を組み合わせ、コンクリートからのアンモニア発生量を最小限に抑制しつつ、室内に拡散したアンモニアを効率的に除去する手法を構築。

併せて、対策効果を確実なものとするため、アンモニア濃度の工事中の実測データと、対策の着手時から竣工までの濃度の経時変化を事前にシミュレーションした予測データとを照合しながら作業を進める濃度管理手法を導入しました。

コンクリートから発生するアンモニア量の抑制手法については、原材料の調達の難易度を考慮した上で、セメント・骨材・減水剤等の材料選定や配合設計の最適化を図り、最適な生コンプラントを選定・確保します。

アンモニアの除去手法については、コンクリートの散水養生や室内の加温・換気に加え、ケミカルフィルタによる化学吸着手法を導入。

筒型ファンで吸引した空気のアンモニア成分を活性炭フィルタに吸着させ、浄化された空気のみを室外に排出することで、環境面にも配慮しながら室内のアンモニア濃度を低減します。

濃度管理においては、化学分析に基づく精密な環境測定データと、工事の進捗に応じて変化する施工時の室内換気量や気温等の推移を踏まえたアンモニア濃度の経時変化の予測データにより、高精度な予実管理を実現します。

本ソリューションは既に美術館新築工事での適用実績があり、竣工後の早期供用に寄与するなど対策効果が実証されています。
今後、美術館・博物館等の建設計画のソリューション技術として提案活動を進めていく考えです。

資料引用:清水建設 アンモニア濃度の推移イメージ
資料引用:清水建設 ケミカルフィルタの設置状況

おわりに

室内に拡散したアンモニアを効率的に除去する手法で肝になる部分は、やはり、化学吸着手法のケミカルフィルタにある。

清水建設はクリーンルーム用機器の専門メーカーである(株)忍足研究所と共同で、SACC®フィルター(高性能ケミカルフィルター)を内蔵した汚染物質除去装置「SACCユニット」を開発・実用化している。※SACC:Super Clean & Airborne Molecular Contamination Control
https://www.shimz.co.jp/solution/tech133/index.html

活性炭を基材とするSACCフィルターは、60cm角、厚さ3cmの製品で、空調機の中に設置され、クリーンルームに取り入れる外気やクリーンルーム内の空気から、アンモニアやNOx、SOx、VOCなどのケミカル汚染物質を効率よく吸着・除去します。

清水建設のエンジニアリングにより、ナノレベルの極微量のケミカル汚染物質まで除去した超クリーン環境(ナノクリーン:清水建設商標)を実現でき、かつ耐用年数が一般的なケミカルフィルターの約2倍と長いことや様々なケミカル汚染物質に対して高い除去性能を有することから、半導体やフラットパネルディスプレイをはじめとする先端エレクトロニクス分野の事業者から高く評価されている。

これは見事な現場転用の実例だろう。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□清水建設株式会社 
リリースニュース
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022028.html

□株式会社忍足研究所 http://www.oshitari.co.jp/

エアフィルタ・クリーン機器|「きれいな環境」のために~株式会社忍足研究所
空気・水のクリーン機器の専門メーカー。空気清浄機、エアフィルタ、半導体産業・医療・食品・各種産業向けのクリーン機器、クリーンルーム設計、製作。
タイトルとURLをコピーしました