概要
寛文6年、京都の木炭商を起源にする専門商社であり、現在は、工業と建設の複合型専門商社として、産業機器、工業機械、住設・管材・空調、建築・エクステリア、建設機械、エネルギー、その他の7部門に事業を営むユアサ商事株式会社。
寶永2年以来、300年以上の歴史を持ち、橋梁工事に実績がある株式会社錢高組。
そして、デスクトップGIS(地理情報システム)の提供に加え、クラウドやモバイル環境に対応した「空間情報システム」をベースとし、LiDARセンサー、AR(拡張現実)・MR(複合現実)、機械学習を利用した広範囲なアプリケーションの開発・提供も行う「総合的な空間情報ソリューションカンパニー」の株式会社インフォマティクス。
この三社共同によるMR(Mixed Reality)を利用したコンクリート締固め管理システムを構築・実用化の運びに至ったと発表。
コンクリートの締固めとは?
まず、「コンクリートの締固め」について簡単にみてみましょう。
コンクリートの締固めとは、コンクリートを打設後、型枠中のコンクリートが分離せず型枠の隅々まで均一に充填させる作業です。
打設したコンクリート内部に空洞ができたら、欠陥建造物になってしまいます。そうした問題を防ぐために、コンクリートの打設後は必ず締固めを行います。
コンクリートの締固めを行う理由は、豆板、コールドジョイントなどコンクリートの欠陥を生じさせないため。そして、型枠の隅々まで密実かつ均質にコンクリートを充填させるためです。
コンクリートの締固めはコンクリートの品質に大きな影響がある作業です。
よって、コンクリートの打ち込み後は必ず「締固め」を行います。
□コンクリートの締固めの機械
コンクリートの締固めに使う機械として振動機があります。
棒状の形をしており、高周波の振動起こすことでコンクリート内部を均一にします。
例えば、公称棒径45mm以上の振動機を使うことが多いです。
□コンクリートの締固めの間隔
コンクリートの締固め間隔の規定を下記に示します。
・打ち込みした層ごとに行い、打ち込み層の下層に振動機先端を垂直に入れる
・締固め間隔は60cmごとに行う
・1カ所あたり5~15秒程度行う(コンクリート表面にセメントペーストが浮き上がるまで)
□コンクリートの締固めと留意点
型枠内には鉄筋が配置されています。振動機が鉄筋に触れると、所定の構造性能を満足しなくなる可能性もあります(鉄筋のあき、鉄筋のかぶりなど)。できるだけ触れないよう留意し、不具合が発生した場合は修正が必要で、現場での経験則が品質に影響します。
このようにコンクリートの分離を始め、有害な欠陥を除去するために締固めが必要です。
「打ち込み」から「締固め」を必ず行う工程なのです。
こうした熟練度にたよらず、MR技術で、従来の締固めの工程を改善するシステムが…
MRを利用したコンクリート締固め管理システムです。
ユアサ商事株式会社(東京都 以下、ユアサ商事)は、株式会社錢高組(大阪府大阪市 以下、錢高組)、株式会社インフォマティクス(神奈川県川崎市 以下、インフォマティクス)と共同で、MR(Mixed Reality)によるコンクリート締固め管理システムを構築し、実証実験により実用化に目途をつけました。
コンクリート構造物の品質は、コンクリート打込み時の締固め作業に大きく左右されます。
従来、コンクリート締固め作業は、現場作業員の目視による経験的な判断に委ねられているところが大きく、効果的な締固めには熟練度が必要とされています。
近年のMR技術の進展は目覚ましく、あらゆる場面で品質管理や生産性向上に役立てられています。
そこで、コンクリート締固め作業の品質確保と省力化(生産性向上)を図るため、MR によりリアルタイムで、コンクリートの締固め位置と締固め程度を色と数値で「見える化」するシステムを開発しました。
システムの特長
システムの特長は、バイブレータのコンクリートへの挿入深さを3次元座標でリアルタイムに判定できることです(特許出願中)。
作業員は、ヘッドマウントディスプレイ等で打込み箇所の締固め状態を確認しながら、現場管理者は、タブレット等でコンクリート締固め状況を把握しながら、締固め作業が可能となるため、打ち重ねが必要な場合においても未熟練者でも締固め不足のない良質なコンクリート打込みが可能となります。
実証実験では、仮想空間でのバイブレータ先端位置(X、Y、Z)は、実空間でのバイブレータ先端位置とほぼ一致していることを確認し、今回開発したシステムの有効性が認められました。
今後は、実証実験で得られた知見を基に、打ち重ね管理システムとの連携やバイブレータの空間的な位置合わせ精度の向上、演算処理速度の向上など、現場で扱いやすいシステムに改善しながら実用化していく予定です。なお、サービス展開は2年後の2024年。ユアサ商事より発売予定としています。
おわりに
6月初旬にはコンクリートの品質報道が飛び交ったのも記憶にあたらしいです。
打設から締固めの工程にこうした建設DXの恩恵をうけて、より効率的で良質なコンクリート基礎が出来上がることは、安心安全の建造物につながることになるでしょう。
この3社の展開も注視していきたいと思います。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□ユアサ商事株式会社 http://www.yuasa.co.jp/
リリースニュース:
http://www.yuasa.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/07/01386569b61d02e2cd86ca5f8a17aaf1.pdf
□株式会社錢高組 http://www.zenitaka.co.jp/
リリースニュース:
http://www.zenitaka.co.jp/news/2022/tech-service/220725.html
□株式会社インフォマティクス
https://informatix.co.jp/xr/