鹿島建設 超高層ビルをエコ解体。その名も「鹿島スラッシュカット工法」!!

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概要

国内最高162mの世界貿易センタービルディングを新開発の「鹿島スラッシュカット工法」で解体している鹿島建設。風散・飛散や騒音を大幅に低減し、産業廃棄物削減にも配慮したエコ解体を紹介。


エコ解体「鹿島スラッシュカット工法」

株式会社鹿島建設(以下、鹿島建設)は、超高層ビルの新たな解体工法「鹿島スラッシュカット工法TM」を開発し、鹿島建設東京建築支店で施工中の世界貿易センタービルディング既存本館(東京都港区)の解体工事に適用しています。

本工法は、工期の短縮に加え、超高層ビルの解体工事に欠かせない強風・地震対策や第三者災害リスクの排除に寄与するとともに、騒音の大幅な低減や施工中のCO2排出量の削減など環境にもやさしい工法です。

1970年に東洋一高い建物として鹿島が施工した世界貿易センタービルディングは、最高高さ162mの超高層ビルで、解体される建物としては国内最高となります。

同ビルディングの解体工事に本工法を適用することで、解体材等の風散・飛散など様々なリスクを低減しながら、工事を進めています。

鹿島スラッシュカット工法のフロー図(以下、資料引用:鹿島建設)

開発の背景

世界貿易センタービルディングは、JR浜松町駅と東京モノレール浜松町駅に直結し、都営地下鉄大門駅に近接する交通の結節点にあり、歩行者や車の交通量が非常に多いエリアに位置しています。

また新幹線が往来する線路など、重要なインフラ施設にも近接しています。
そのため、解体ガラの外部への落下や風散・飛散の防止、近隣への粉塵飛散、騒音等に関する対策を通常以上に徹底する必要があります。

超高層ビルの主要な解体工法としては、重機を最上階に乗せて解体する階上解体工法建物をブロック状に解体して吊取っていくブロック解体工法があります。

しかし、階上解体工法は解体ガラの落下リスクや最上部での粉塵の飛散、地上への荷下ろしが煩雑となるなどの問題があります。

また、ブロック解体工法は解体ガラの落下や粉塵の風散・飛散リスクは低減できるものの、切断されたスラブを吊下ろすまで支えておく仮設支保工の存置量が多くなるため、コストの増加や工事期間が長くなるといった問題がありました。

これらの問題をクリアするため、鹿島建設は仮設支保工の存置を必要としないブロック解体工法「鹿島スラッシュカット工法」を開発しました。

鹿島スラッシュカット工法の施工フロー

  1. 密閉された建物内部で「斜め切断カッター」によりスラブを先行解体
  2. 躯体を切断して大割ブロック化
  3. 大割ブロックを建物内部の大型揚重開口より吊下ろし、地上階で小割解体
  4. せり下げ足場を逆クライミングし、次の下層フロアを解体
スラブを斜めに切断

鹿島スラッシュカット工法の特徴

新たに開発した次の3つの技術を活用し工期を短縮

1.「斜め切断カッター」(特許出願済)

斜めにスラブを切断できる「斜め切断カッター」を開発しました。
これにより、切断後から隣接するスラブが荷重を支えるため、階下にスラブの落下を防ぐ支保工を存置する必要がありません。
そのため、先行して下層階の床解体に着手することが可能となり、工期短縮を実現します。

本工法では階下に支保工が不要

2. スラブ切断兼吊上げ治具(特許出願済)

大割ブロックを効率よく揚重するため、スラブの切断時に必要な荷重受けの機能と、吊上げる際に必要な曲げ破壊を防止する機能を兼ね備えた、スラブ切断兼吊上げ治具を開発しました。
本治具を用いることで、ブロックを大型化でき揚重回数の削減につながるなど、作業効率が向上します。

荷重受けと曲げ破壊の防止を兼ねる

3. 4点自動吊上げ装置(特許出願済)

大割ブロックは重心がブロックの中心にないため、揚重時に荷姿が水平になりません。
そこで、大割ブロックを水平な状態で揚重するために4点自動吊上げ装置を開発しました。
本装置を用いることで、作業員の高所作業を低減するとともに、地上階に吊下す際の大割ブロックの姿勢を遠隔操作で制御し、安全な姿で着地させることができるため、搬出作業時間を短縮できます。

ブロックを水平に吊上げる

密閉空間内での作業により、粉塵の飛散・風散、騒音を最小限に

本工法では、粉塵の飛散・風散を伴う全ての作業を、外壁で囲まれた建物内部の密閉空間内で完結させることで、外部への粉塵の飛散・風散を抑えます。

また、建物を大割ブロックに切断してタワークレーンで吊取り、建物内部に設けた開口部から吊下ろして解体していくため、吊荷が風の影響を受けることはなく、外部へのコンクリート片等の落下リスクを最小限にしています。

さらに騒音が発生するスラブの切断は、あらかじめ外壁で囲まれた建物内部の密閉空間で行い、階上の作業は溶断による梁や外壁の解体のみとなるため、建物上方で騒音を発生することがなく、近隣のビルに伝播する騒音を抑えることができます。

建物頂部における粉塵飛散のシミュレーション
騒音発生のシミュレーション

施工中CO2排出量の削減

本工法では、建物を大割ブロックに切断して解体していきますが、切断作業には重機を使用しないため、CO2を排出する重機の稼働数を少なくすることが可能です。
また切断作業に使用する燃料を、アセチレンの代わりに水素・エチレンの混合ガスにすることで、更なるCO2の削減を実現します。

産業廃棄物削減に向けた取組み

スラブ切断ノロ水脱水装置

斜め切断カッターでスラブを切断する際に発生するノロ水を、ろ過・脱水する装置を開発しました。
ノロ水を脱水ケーキにすることで廃棄物を削減します。
さらに、ろ過・脱水後の回収水は再生水として循環させ、スラブ切断に再利用します。

スラブ切断ノロ水脱水装置

今後の展開

近年、1970年代に建設された超高層ビルが解体やリニューアルの時期を迎えています。

都市部における超高層ビルは公共交通機関やインフラ設備が隣接することが多く、解体工事を行う場合は高い安全性や環境配慮が求められます。

鹿島建設は、現場周辺への環境負荷の低減と安全性を兼ね備えた、「鹿島スラッシュカット工法」と既に実績のある「鹿島カットアンドダウン工法®」を活用して、超高層ビルの解体工事を検討する顧客のニーズに応えてまいります。

解体手順

動画再生は鹿島建設webにて https://www.kajima.co.jp/news/press/202207/13a1-j.htm

全景イメージ

動画再生は鹿島建設webにて https://www.kajima.co.jp/news/press/202207/13a1-j.htm

おわりに

おりしも、大気汚染防止法の一部を改正する法律が2021年(令和3年)4月1日から順次施行され、建築物等の解体等工事における石綿の飛散を防止するため、全ての石綿含有建材への規制対象の拡大、都道府県への事前調査結果報告の義務づけ、および作業基準の徹底のための直接罰の創設などの対策も一層強化されています。

1970年代の資材で建設された建造物群は解体やリニューアルの時期を迎えている今、建設企業が次の時代の橋渡しになる役目を果たす時が到来しています。
エコ解体、ひては完全なリサイクル解体へのとりくみが将来的にも重要になるでしょう。

本日も読んでいただき、ありがとうございました。


参考・関連情報・お問い合わせなど

鹿島建設株式会社
リリース記事:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202207/13a1-j.htm

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