概要
建築メタバースプラットフォーム「comony」のウェブサイトをリニューアルしたラストマイルワークス株式会社のニュースリリースを紹介。
メタバースの市場規模は、2030年には6,788億米ドルに達すると予測されています。
同市場は、メディアやエンターテイメント、教育、航空宇宙・防衛などの最終用途産業からの需要増加により、2022年から2030年の間に39.4%のCAGRを記録すると予想され、業界の成長を促進することが期待されています。
また、メタバース市場は、様々なプラットフォームでのユーザーエクスペリエンスを向上させるためのXR技術の着実な採用により成長しています。
暗号通貨を使用してデジタル資産を購入するためのメタバースに対する需要の高まりは、市場を大きく牽引することが予想されます。
拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)デバイスの開発と流通は、今後数年間で市場成長に拍車をかけると考えられます。(株式会社グローバルインフォメーション、市場調査レポートより)
という市場調査レポートが示すように、変革の波は建築分野にも押し寄せています。
そこで、興味深いニュースリリースを目にしましたので、紹介記事としてしたためてみました。
comonyのサービスサイトをリニューアル
ラストマイルワークス株式会社(東京 以下、ラストマイルワークス)が、建築メタバースプラットフォームcomonyのウェブサイトをリニューアル。
クリエイターはメタバースを利用したポートフォリオが作成でき、アップロードした空間は自分で見るだけではなく、世界中から招いたゲストとコミュニケーションを取ることにも活用できます。
また、建築好きな方々はバーチャル空間上に建てられた世界の名建築や、ここでしか見られないアンビルド作品など24時間365日巡ることができます。
「comony」立ち上げの背景とは
ラストマイルワークスは2016年の創業以来、建築CGやVRコンテンツの制作を行う中で空間情報を正確に伝える難しさを痛感してきてました。
従来の2Dパースだけでは完成イメージの共有が不十分であり、設計と施工時に生まれる認識のギャップは決して小さくはありません。
そのような傾向は施工時に図面が読まれないこともある東南アジアでは特に顕著です。
これらの課題に対して、comonyでは3D空間を通して作り手と受け手をつなぐ円滑なコミュニケーションを可能にしました。
また、建築や空間設計に従事する方とのヒアリングを通し、建築について正しく理解し設計者の考えに学びたいニーズがあるということがわかりました。
従来であれば建築雑誌やメディア、講演や設計者が主催するオープンハウスなどがその役割を担ってきましたが、仮想空間だからこそ時間にとらわれず建築空間そのものを体験し、作り手や識者との対話を通して理解を深める新しい機会を生み出せるとラストマイルワークスは考えます。
さらに、メタバースにおいては現実で培った設計のスキルが大きな価値となるにもかかわらず、
適したプラットフォームが存在していないという現状があります。
単なる投機目的としてではなく、今後ますます経済圏が生まれていくメタバース上の空間体験をより良くすることにおいては、人と空間の間に価値を生み出す建築設計者の力が欠かせません。
comonyはリアルとバーチャルの垣根を超えて活躍するクリエイターを輩出すべく、建築設計者をはじめとする空間づくりにこだわりを持った全ての人のための「空間を一番理解できる」プラットフォームを目指します。
comonyの特徴
公開ギャラリーから様々な空間を体験することが可能
実在する建築やアンビルト建築、有名建築家の空間はもちろん、スポットライトが当たって来なかった素晴らしい作品や、遠いけどいつかは行ってみたい憧れの建築も、メタバース上で誰でも気軽に訪れることができます。comonyの建築メタバースでは、それぞれの思いを平等に届けるギャラリーを提供します。
メタバース上にあなただけポートフォリオを作成
専用SDK※を活用することで、建築作品を手軽にクラウド上へアップロードすることが可能です。
ウェブ上のダッシュボードからは、作品の詳細情報を編集する機能や設計図面の貼り付けなど作品紹介において必要な機能を網羅しています。
comony上に構築されたポートフォリオはウェブ上に公開すれば身近な人との共有はもちろん、一瞬で世界へと発信可能な強力なツールとなります。また、同じ組織やチームで空間の一元管理をすることも可能です。
空間内でのコミュニケーションにより、作品への理解を深める
comony上にアップロードされた空間を活用して、建築ツアーやオープンハウスを行い、作品への理解を深めることができます。
空間内にいなくても、誰かが入室するとメールが届く「入室通知機能」を使えば、空間へ訪問してくれた方へ設計者自らおもてなしをすることも可能です。
シンプルなUIの専用アプリとURLのみで共有できるためビジネスシーンでも使いやすく、クライアントと共有すれば空間内で設計へのフィードバックやプレゼンテーションなども行うことができます。
今後の展開
クリエイターによるイベント開催向け機能の開発
イベント作成が可能なチケッティングシステムや、手軽に参加者をガイドできるツアー機能の開発を行なっています。
個展や建築コンペ/イベントの開催
定期的なクリエイターの作品紹介企画や、建築コンペを開催していく予定。
comonyを一緒に盛り上げてくれる建築クリエイターを募集中
comonyを一緒に盛り上げてくれる建築クリエイターを個人、法人問わず募集。
メタバース内での建築や空間プレゼンテーションに興味がある方、建築士の方、建築CGに従事する方など幅広く募集いたします。参加いただける方には、新機能のテスターやイベント参加へのご協力をお願いすることがあります。
直近ではクリエイター向けビュワーアプリのテスト版を体験いただくことができます。
また、comonyを内側から共に作る正社員や業務委託、インターンも採用とのこと。
ご興味のある方は以下のフォームより
https://comony.net/contact
※ 現在空間アップロードは申請制となっており、SDKの一般公開は2022年中を予定しております。
※ 制作のサポート窓口としてアップロード申請をしていただけた方にDiscordコミュニティのご案内をしています。サービスに対するフィードバックや空間作成のサポートなどはDiscord内でお気軽にご相談ください
※ 企画内容によっては3D空間制作をサポートすることも可能です
おわりに
国土交通省は2023年度にすべての直轄事業におけるBIM/CIMの原則適用を定めている。
2022年4月からは適用の範囲が拡大している。
国土交通省が21年3月に示したロードマップからは、業務は小規模を除く全ての詳細設計で適用、工事は設計から1年遅れて大規模構造物での適用が開始されている。
このロードマップでは、3つの目標が掲げられています。
BIM/CIMを利用するのに必要な形状や属性情報の標準化、BIM/CIMの業務手順の標準化を行うことで国内規格の標準化を目指す
BIM/CIMの適用事業を拡大し、BIM/CIM技術者の活用などによってBIM/CIMの普及と促進を目指す
BIM/CIMを公共事業で活用することで公共事業の品質確保とBIM/CIMモデルの二次利用の促進など行いながら、継続的な業務改善を推進することを目指す
引用:国土交通省「BIM/CIM運用拡大に向けたロードマップ」
このように今後、CADからBIM/CIMへの切り替えは加速を増していきます。現状ではまだ多くの企業がCADを使用しているのは事実で、BIM/CIMの導入には莫大なコストや、BIM/CIMを利活用できる人材が不足していることで、日本の現場にはいくつかのハードルがありますが、ライターの視点には、ロードマップの3番目の「BIM/CIMモデルの二次利用の促進」という一文に可能性を感じます。
ロードマップの進捗により膨大なBIM/CIMモデルデータが生成され、それらを自由に組合せ、建築クリエイターが未来のまちづくりの提案者としてメタバースを介して発信していくでしょう。
そのプラットフォームとしての役割を「comony」はコミュニティの空間として果たしていくでしょう。そして、その空間は建築クリエイターのモチベーションを養う場、ひいては「人材育成」の場でもあると思いました。
本日も読んでいただき、ありがとうございました。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□ラストマイルワークス株式会社 https://lastmile-works.com
「多様な世界を活かす新しい仕組みをつくる」をミッションに主に東南アジアと日本の不動産、建築、都市開発業界向けにCG・VR関連サービス、DX支援をおこなう。
TEL:0120-979-856
お問合せ窓口:https://comony.net/contact
担当:三浦
□国土交通省
令和5年度以降の BIM/CIM活⽤に向けた進め⽅
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001464928.pdf