概要
梅雨入りが各地で突入する今週から来週。そうした中で警戒したのが線状降水帯。6月から気象庁が開始した「線状降水帯予測」。その現状を紹介。そして、都市や街、インフラを建設してきた建設業は都市水害に対して寄与できる役割を紹介。
6月9日(木)、気象庁は6月11日から7月10日までの1か月予報を発表しました。
1か月の降水量は全国的に平年並みの予想。
6月下旬から7月上旬は梅雨前線の活動が活発になって、大雨となるおそれとのこと。
沖縄、関東が先に梅雨入りしてしばらくして、今週末から来週にかけて各地で続々梅雨入りする見込みの様子。
6月下旬からは太平洋高気圧は日本の南の海上に張り出し、梅雨前線が日本列島の南岸に停滞しやすくなり、今週末から来週にかけては各地で梅雨入りし、7月のはじめは本格的な梅雨を迎えるようです。(ウェザーニュースより)
「線状降水帯予測」の現状
このように列島梅雨入りカウントダウンを迎えるなかで、注目されるのが、気象庁が頻発する線状降水帯による大雨災害の被害軽減のため、6月1日から開始した「線状降水帯予測」です。
近年、線状降水帯による大雨によって毎年のように日本のどこかで大水害に苛まれています。
このような災害を引き起こす線状降水帯の発生について、事前に予測することは困難でしたが、
気象庁では線状降水帯予測精度向上を緊急課題とし、産学官連携で世界最高レベルの技術を活用し、
船舶GNSSによる洋上の水蒸気観測等の観測の強化や、大学等の研究機関とも連携した予報モデルの開発を前倒しで開始。
その第1歩として、気象庁では、早めの避難につなげるため、6月1日から線状降水帯による大雨の可能性を予測し、まずは「九州北部」など大まかな地域を対象に半日前からの情報提供を開始しています。
さらに、予測精度を高めるための産学官連携の取組を一層強化します。
具体的には、今年の梅雨期には、大学等の複数の研究機関と連携して線状降水帯のメカニズム解明に向けた高密度な集中観測を実施。
また、文部科学省・理化学研究所の全面的な協力を得て、スーパーコンピュータ「富岳」を活用して、開発中の予報モデルのリアルタイムシミュレーション実験を実施します。
これらの取組を通じて、令和11年度には市町村単位での情報提供を目指すなど、
線状降水帯による大雨災害の防止・軽減に向けてさらなる予測精度の向上を図ろうとしています。
「線状降水帯」とは
「線状降水帯」とは、積乱雲(発達した雨雲)が、線状に次々に発生して、ほぼ同じ場所を通過・停滞することで作り出される、非常に強い雨のエリアです。
次々に発生した積乱雲が、数時間にわたって、ほぼ同じ場所を通過・停滞するため、長い時間、非常に強い雨が降り続き、大きな災害の要因となる集中豪雨を引き起こします。
通常、一つの積乱雲だけでは災害は発生しません。
積乱雲が次々と通過する場合、数時間持続すると数百ミリの雨がもたらされ、災害を引き起こす要因となります。
線状降水帯は、台風とは違って、数時間程度と短寿命でありながらも記録的な大雨をもたらします。
このため、台風よりも事前対応が難しく、線状降水帯に伴う大規模水害からの避難が難しいという問題があります。
線状降水帯の発生予測の成功の鍵は、風上側の積乱雲の継続的発生と強雨域の停滞を予測できるかどうかにかかっています。
過去のデータから統計的に調査した研究によると、積乱雲の継続的発生および強雨域の停滞が発生するためには、積乱雲発生のエネルギー源となる水蒸気が大気下層に十分に存在する必要があると言われています。
(国家レジリエンス研究推進センターより)
【NR5】線状降水帯観測・予測システム開発 https://www.bosai.go.jp/nr/nr5.html
このように、梅雨入り後は「線状降水帯」の発生に敏感に警戒しなければならない季節です。
「令和2年7月豪雨」では、球磨川や飛騨川、最上川といった大河川での氾濫などが発生。
活発な梅雨前線の影響で、西日本から東日本の広範囲にわたり、長期間の大雨となったのは記憶にあるかと思います。
特に、顕著な大雨となった7月3日から8日にかけては、線状降水帯が九州で多数発生し、甚大な被害につながりました。
「線状降水帯予測」の予測精度を高めるための産学官連携のなかで、都市や街をかたちしてきた建設業ができることはないでしょうか。
都市型水害予測解析システム 鹿島建設
鹿島建設の都市型水害予測解析システム(https://www.kajima.co.jp/tech/c_urban_infra/it_analysis/index.html#!body_03)
を候補として挙げましょう。
都市型水害予測解析システムは、
「豪雨時の雨水流出・排水現象を総合的に評価し、都市型水害への対策計画立案を支援」するとのこと。詳しく見ていきましょう。
都市化による人口・資産の集中、地下空間の利用拡大に伴って、豪雨時の都市部における水害が懸念されています。
近年は、ヒートアイランド現象、地球温暖化等の影響も加わり、時間降雨量100mm以上の豪雨が発生し、都市部が水害に見舞われるケースが増加しています。
このような状況から、「特定都市河川浸水被害対策法」が2003年6月に施行され、都市型水害対策への取組みが強化されました。
この法律は、河川と下水道が連携するとともに、ハード対策だけでなく、水防法、都市計画法に係るソフト対策も含めて水害対策に取り組もうとしている点が大きな特徴です。
鹿島建設は豪雨時の都市型水害の状況を高精度に評価することで、水害対策の計画立案を支援するシステムを京都大学防災研究所の指導の下、中部大学との共同研究で開発しました。
総合的で高精度な一体解析が可能
従来のシステムでは考慮することができなかった、地表面氾濫、河川流、下水管路網流を連成させた総合的な一体解析が可能です。
河川、下水管から水路に至るまで詳細にモデル化することで、雨水流出過程を高精度で追跡することができます。
さらにポンプ場、貯留施設等の各種水理施設を適切にモデル化できるので、浸水が予測される地域にそれらを設置する効果・最適な規模等を定量的に評価することができます。
効率的なプレ・ポスト処理により、解析実務を大幅に軽減
GIS技術※を駆使することでシステムの操作性が高められています。
プレ処理における入力データ作成、ポスト処理における計算結果出力の処理効率が格段に向上しており、大規模かつ複雑な解析実務を大幅に軽減し、解析作業を行うことができます。
※地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。
解析結果のビジュアル表示を実現
GIS技術を駆使した効率的な入出力処理に加え、解析結果をビジュアルに表示することができます。
動画化することも可能なため、業務の関係者だけでなく、住民説明等の場でも有力なツールとして活用することができます。
結びに
インフラや街をかたちづくる建設業として、これまでに、かたちづくられた建設のビッグデータをもとに、こうした水害予測が蓄積と解析され続けるならば、気象庁の「線状降水帯予測」気象予測と連携することにより、精度の高い建設業から発信する水害予報をすべき役割を担う時代にあるのではないだろうか。
人々のために、「住み続けるまちづくり」の旗のもとに。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社ウェザーニューズ:https://weathernews.jp/s/news/tsuyu/
□国土交通省 気象庁
リリース記事:https://www.jma.go.jp/jma/press/2204/28a/senjoukousuitaiyosoku20220428.html
□国家レジリエンス研究推進センター
【NR5】線状降水帯観測・予測システム開発 https://www.bosai.go.jp/nr/nr5.html
□日テレニュース24 https://news.ntv.co.jp/
□鹿島建設株式会社:https://www.kajima.co.jp/
リリース記事:https://www.kajima.co.jp/tech/c_urban_infra/it_analysis/index.html#!body_03