先日の日経アーキテクチュアにて、天井材の落下事故に関する記事が掲載されていました。大分県や関西では神戸、滋賀などの公共プール施設での天井落下が相次いで起こっているということです。
どの現場に関しても定期点検はおこなっていなかった訳ではなく、点検はして異常がなかったにも関わらず落下事故がおこっています。
点検していても落ちる天井
※画像はプール天井とは関係ありません。
もともと天井は内装の一部としてや、見せたくない配管や電気線などを隠すことを目的として設置したり、音響など機能面を持たせるために設置している場合が多く、建物を支える柱などのような構造体とは違って明確な安全基準(耐震基準)はありませんでしたが、国交省では安全性確保を目的とした政令を平成26年に制定しています。
そもそも天井脱落の安全基準政令とは
地震による天井の落下事故などから、天井の脱落防止措置による建築物等の安全性の確保を目的として、「建築基準法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第217号)」「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成25年国土交通省告示第771号)」等が、平成26年4月1日に施行され。これらの政令や告示により、「特定天井」は技術基準に従って脱落防止対策を講ずる等が必要になりました。
出典:国土交通省
特定天井とは以下5つの条件に全てに該当するものです。
1. 天井の高さが6m超
2.平投影面積が200㎡超
3. 単位面積質量が2kg/㎡超
4.吊り天井
5.人が日常的に利用する場所
これに該当するものに関しては、技術基準に対応。それ以外の吊り天井以外の天井などに関しては、設計者の判断により安全を確保ということになっています。
大分や神戸、滋賀の天井落下の件に関してはこちらに該当はしていません。なので設計者の判断での安全性は確保されているという前提はあり、定期点検も実施されているという状況でしたが、にも関わらず天井が脱落した。
建築基準法を守ることだけが目的にならないように
いずれも共通しているのはプール施設の温水プールであるということ。原因は「天井材を留めている金属が結露で腐食していた」「天井の板材が結露を含んでのが要因」など、やはり温水プール内は湿度も高く結露も発生しやすい環境です。
おこなわれていた定期点検が、この環境を考慮してのものだったのかは定かではありませんが(勿論点検もしっかりとおこなわれていたと思いますが)建築基準法の規定に準ずることだけが安全と考えず管理・点検にあたる側としては、こういった事故を教訓にその知見を活かしていく必要があると感じた記事でした。
幸いこの天井落下で怪我人などは出ていないのは不幸中の幸いといったところでしょうか。しかし中には改修費用がかかるために閉鎖される施設もあるようなので、定期点検も環境により柔軟に対応していく必要がありそうです。ハードルはあるかもしれませんが事故が起こってからでは取り返しがつきません。
ちなみに天井点検はスギテックの日頃の点検箇所とは違いますが、主な外壁の調査等において落下事故が起これば、当然ながら我々の責任となります。
点検箇所は違えど、こういった事例からも慎重かつ正確な調査を心掛けていきたいですね。