記事のポイント
・株式会社大林組(以下、大林組)と大林道路株式会社(以下、大林道路)、宇部興産株式会社(以下、宇部興産)の3社は共同で、UHPFRC「スティフクリート」を開発したと発表した。
・この工法は、道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目的としており、実際に西日本高速道路株式会社発注のRC床版補強工事で採用された。
交通の早期開放と高耐久床版補強の両立が実現
大林組と大林道路、宇部興産は共同で、道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目的としたUHPFRC(※1)「スティフクリート」を開発。西日本高速道路株式会社発注のRC床版補強工事で採用された。
(※1)UHPFRC
超高性能繊維補強セメント系複合材料の海外の一般名称で、圧縮強度が100N/mm2以上の超高強度材料。また、非常に緻密な構造を有するため、透気性・透水性が極めて小さく耐久性にも優れている。
出典:大林組
昨今では、社会インフラの老朽化が社会問題となっている。国内の道路橋においても、今後10年間で建設から50年を経過するものが約半数になることから、リニューアルが急務となっているのが現状だ。橋梁のRC床版が老朽化した場合には、通常、SFRC(※2)を用いて補強する。
(※2)SFRC
鋼繊維補強コンクリート。コンクリートに鋼繊維を混合することで強度や耐荷性・疲労耐久性を向上させた材料。
しかし、SFRCの補強では床版が増厚になるため周囲の舗装面と高さが合わなくなり、また重量増加により下部工の補強も必要となる場合があるという。さらに「打ち継ぎ目からの雨水浸透」や「既設コンクリート界面とのはく離」による早期劣化も問題であったそうだ。また、常温硬化型UFC「スリムクリートR」(※3)を含む一般的なUHPFRCは高強度で、流動性や自己充てん性にも優れるため薄層での補強ができるが、硬化までの時間が長く、橋面に勾配がある橋梁での施工には適していない。
(※3)常温硬化型UFC スリムクリートR
高温蒸気養生を必要とせず、現場でのシート養生だけで、圧縮強度 180N/mm2以上、引張強度 8.8N/mm2以上を確保できるモルタル材料。
今回開発された「スティフクリート」は、スリムクリートの特長を活かしたコンクリート材料となっており、超高強度材料の採用により薄層での補強が可能となり、長期耐久性にも優れているという。さらに、スリムクリートに「早期強度の発現性能」と「早期硬化時間の制御性能」を付与することで、早期に交通開放が可能で、また、橋面に勾配がある橋梁への適用も可能となるそうだ。
出典:大林組
スティフクリートの特長は以下となる
1.超高耐久な補修・補強が可能
常温環境下でも十分なコンクリート強度(圧縮強度130N/mm2以上、ひび割れ発生強度6N/mm2以上(材齢28日))を確保できるため、疲労耐久性が大幅に向上する。また、高水密性・高遮塩性を有しているため、劣化因子の浸透を抑制し、凍結融解や塩害による床版劣化も防止できる。
出典:大林組
2.施工後3時間で交通開放が可能
補修工事後の道路開放時には、コンクリート圧縮強度24N/mm2の発現が必要となる。スティフクリートは、施工後3時間で圧縮強度24N/mm2以上、既設コンクリートとの付着強度1.0N/mm2以上を確保できるため、施工後の速やかな交通開放が可能に。これによって、夜間の車線規制だけで施工し、交通量の多い昼間には全車線交通開放できるため、道路利用者への影響を低減できる。
3.小型の施工機械で施工可能
外気温ごとに設定した混和剤添加量を調整するだけで、常時安定した流動性を確保。これによって小型の施工機械を用いた人力での施工が可能となる。また、専用の車載ミキサーで練り混ぜを行うことで、連続施工が可能に。さらに、車載ミキサーを含めたすべての設備が1車線内に収まるため、高速道路の夜間1車線規制内での施工が可能。
出典:大林組
今後、3社はこの開発されたスティフクリートを、高速道路のリニューアル工事に積極的に活用し、交通規制期間の短縮や既設床版の高耐久化を実現し、工事に伴う渋滞の緩和やインフラ構造物の長寿命化に貢献していくとしている。
□株式会社大林組
「スティフクリート™」を開発し、既設RC床版を新たに上面薄層増厚工法として施工
リリース記事:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210921_1.html
□この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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宇部興産 総務部 総務・広報グループ
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