株式会社大林組は、株式会社digglueの協力で、建設現場で利用するコンクリート受入検査システムの検査データをブロックチェーン上に記録するシステム(以下、検査履歴管理システム)を開発した。システムは建設業界のブロックチェーン活用に向け実証実験を開始している。
近年では安全意識や環境意識の向上に伴って、他産業でトレーサビリティの取り組みが増えている。その一方で建設業界では施工プロセスの透明性の確保が課題となっていた。
これまでに大林組では、改ざんを防止・検知する機能をコンクリート受入検査システムに実装していたが、システムの脆弱性を突いた外部からの攻撃によるデータ改ざんのリスクがあったという。そのために今回新たにブロックチェーンを利用することで、建設現場での検査データの信ぴょう性をさらに高める取り組みに着手するに至ったそうだ。
ブロックチェーンとは
ブロックと呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結してデータを時系列に保管するデータベース技術。ネットワーク接続された複数のコンピュータで稼働する、所謂分散型ネットワークとなり、データをそれぞれのコンピュータで分散して管理しているのが特徴であり、中央集権型システムのように一箇所のコンピュータに何かあった際に稼働停止したりデータが消滅することがない。
データにはハッシュ値(元データから生成した値)が含まれており、少しでもデータが変更されれば全く異なるハッシュ値が生成される。実際にデータが変更されれば、分散しているコンピュータに全て反映されるので、改ざんがあればすぐに気付くことができるようになっている。
「検査履歴管理システム」の仕組みとしては、まず建設現場のコンクリートを受け入れる際にコンクリート受入検査システムへ、測定値や写真などのデータを記録し、それを「検査履歴管理システム」のデータベースへアップロード。それと同時に、データのハッシュ値をブロックチェーンへと書き込む。
出典:大林組
そして、コンクリート受入検査システムのデータから再作成したハッシュ値と、ブロックチェーン上のハッシュ値を照合し、一致していれば改ざんがないということが証明される。一方、一致しなかった場合には、検査履歴管理システム上に記録された変更履歴とブロックチェーン上のハッシュ値を照らし合わせることで、改ざんが発生したタイミングを追跡することが可能となり、検査履歴の透明性向上が期待できる。
出典:大林組
大林組では今回の実証実験で、コンクリート受入検査システムを対象とした検査履歴管理システムの有効性が確認されたとしている。今後はコンクリート受入検査システム以外でも、建設現場内の様々なシステムのブロックチェーンとの連携を検討していくとのことだ。さらに協力会社との取引においても納品や返却などの情報を共有化し、突合作業を簡素化するなどの現場業務の平準化を目指すという。
□株式会社大林組
建設業界におけるブロックチェーン活用に向けた実証実験を開始しました
改ざんが困難な形で品質管理の検査履歴を記録し、施工情報の信ぴょう性向上に寄与
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20201224_1.html