こんにちは。日々安全第一の建設現場ですが、毎年全国的に見てみるとやはり全産業の中でも災害の発生数は飛び抜けて多くなっており、それだけ現場は事故に繋がりやすい危険な状況が多いと言えます。
昨年の1月〜12月で言えば、全産業中の死亡災害の確定合計数は845件でしたが、その内の約32%となる269件が建設業より発生しているという状況です。建設現場では高所で作業を行ったり、様々な機材や重機等を使ったりと作業の種類が多岐に渡る部分や、時には天候状況等の外的要因にも影響を受ける場合もあり、あらゆる危険を想定すること、またその意識が重要になってきます。
本日はトンネル工事における人と重機との接触災害を防止するために開発された、AIの画像認識による「人物検知システム」が「株式会社鴻池組」と「ニシオティーアンドエム株式会社」により開発されたとのリリースがありましたのでご紹介いたします。
2段階検知による重機接触災害の防止システム
この度、ニシオティーアンドエム社が従来持っていた「人物検知システムHADES(Human Approach Detection Emit a Signal device)」に付加機能を持たせた「人物段階検知システム」を鴻池組と開発。
システムは実際の現場である東京都内の山岳トンネル工事において使用され、その優位性が確認されたそうです。
出典:鴻池組
開発の背景
山岳トンネル工事では、20クルス程度の暗い作業環境下で様々な重機が錯綜しながら堀削作業を進めるので、重機オペレーターの視認性は悪く、重機と作業員が接触するリスクが問題となっています。
それを解決すべく、近年は各社で重機接触防止装置の開発がいくつか進められてきていますが以下の問題があります。
・作業員と重機にセンサーを取り付けるシステムの場合:一般歩行者などの検知が難しい。
・ステレオカメラや赤外線センサーを用いて識別するシステムの場合:システム自体が高価で既存重機に後付できない物が多く、屈んだり寝転んだ状態など特殊な姿勢によってはご認識を起こすなど検知精度に課題があり。
AIシステムの概要
この度開発された「人物段階検知システム」は、AIカメラを用いて重機との接触リスクが高い「危険域」に侵入した人物を認識して重機を自動停止させる「人物検知システムHADES」に機能を付加。「危険域」の前に設けた「警戒域」に侵入した人物に対しても予め警報を発令できる2段階検知システムとなります。
出典:鴻池組
これによって重機オペレーターと作業員は「危険域」侵入以前の早い段階から重機への接近を双方で認識できるため、重機オペレーターや作業員の心理的負担と重機との接触リスクを低減することが可能となります。
出典:鴻池組
出典:鴻池組
安価な単眼カメラで利用が可能
このシステムの良い点の一つとしては比較的安価である単眼カメラを使える点。撮影範囲内に写った人物の手足など身体の一部や、屈む、寝転ぶ、座るなどの人物の特殊な姿勢をAIによってご認識することなく、またトンネル坑内という暗い環境においても0.1秒間隔で検知できるとのこと。
出典:鴻池組
また、このシステムで導入したAIは、現場状況や環境状況に応じてカメラ毎の人物検知レベルを細かく設定することができるため、現場の要望に応じた安全管理が可能。
さらにシステムの基本構成は、システム本体、単眼カメラ(4台)、監視モニター、ブザー付き積層ランプからなっており、既存重機にも容易に後付けが可能となっているそうです。
まとめ
これまで似たような接触防止システムがありましたが、人の特殊な姿勢に対応していなかったり、システム自体が大掛かりで高価であるために導入のハードルが高いといったデメリットがありました。
今回のシステムではAIを活用することで、トンネル内の暗い環境でも安価な単眼カメラを用いて人の検知が可能となる他、他の重機にも後付して使えるというのが大きなメリットとなっています。
このようなAIと安価な機材の組み合わせは、重機の遠隔システムでも同じような事例がありました。もはやシステムの為に高額な専用構成を導入しなければならないという時代ではないですね。