こんにちは。2020年3月からサービス開始が伝えられている5G通信ですが、時は既に3月。おそらくは遅くとも今月中には各キャリアから何らかの発表があるかと思われます。
これまでのように、初期段階では主に首都圏での展開になるのは間違いないと思いますが、総務省が地方の課題解決等に5Gが必要だと訴えているので、案外早い段階で広まるかもしれません。
そんな5G通信ですが、建設業界では既に大手ゼネコンが様々なソリューションを開発されており、中でも建機の無人運転や遠隔操作などが多い印象です。
本日もそんな建設業界の5Gを活用した建設機械の遠隔操作と自動運転、そして施工管理データをリアルタイムで伝送・解析し、施工を行うという実証実験に成功したという話題。
統合施工管理システムによる新しい建設工事の在り方
KDDIと大林組、NECは、2020年の2月3日~14日の間、建設中である三重県の川上ダムの施工フィールド提供を受け、5G通信システムを活用した実証実験を実施。
各社の役割
出典:大林組
3台の建機の遠隔操作と自動運転システムを搭載した振動ローラーの同時連携に加えて、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析による一般的な道路造成工事の施工を実施し、これに成功したとのこと。
出典:大林組
この実証実験は総務省の5G総合実証試験(※1)の一環として実施されています。
※1 5G総合実証試験
電波を有効に利用できる実現性の高い技術について技術的検討を行い、その技術の早期導入を図ることを目的とし、総務省が技術試験事務を実施している。
実証背景
建設業界では現場作業員の高齢化、若手就業者の減少による労働力不足や技能の継承が喫緊の課題であり、省人化による生産性の向上が急務です。
実際の建設工事にあたっては、設計データや出来形管理など様々な大容量データを活用して施工を行っていますが、その際測量や出来形の確認は人の手で行われているため、多くの時間・労力が必要となり、効率化が求められています。
そのような背景から、専門的技能を有するオペレーターが建機に乗らずとも、遠隔で操作できる遠隔操作システムの活用や、工事現場におけるICTを活用したセンシング技術による効率化が期待されています。
実証実験概要
各社ではこれまでに複数回にわたる5Gを活用した遠隔施工の実証試験を重ね、実用化に向けた取り組みを実施してきています。
今回の実証試験では、一般的工事現場での活用を見据えて、2020年2月3日~14日まで、川上ダムの一部施工フィールドで、5Gを活用した試験を実施。
道路造成工事に係る一連の作業を遠隔操作、自動化を実現できることが確認されたそうです。
この実証試験で用いられた技術は、統合施工管理システム(※2)として、将来的にオフィス等の遠隔施工管理室から複数の現場に連続しアクセスが可能になることや、一人の熟練工が複数の建機、現場に同時に対応できることを目指しているとのこと。
※2 統合施工管理システム
土木施工作業における複数の作業工程(計画、機械施工、出来形、品質管理、安全管理)を統合し、遠隔地で管理運用するシステム
実証試験内容
1.5Gを活用した建機3台の遠隔操作による堀削、運搬、敷きならしの実施
3台の建機(油圧ショベル・クローラーキャリア・ブルドーザー)へ、前方映像用の2Kカメラを各3台、全方位カメラを1台設置した計12台のカメラ映像と遠隔操作の信号データを5Gでリアルタイムに伝送。
出典:大林組
さらに各建機の工事キャリアを俯瞰する計8台の2Kカメラと、工事エリア全体を俯瞰する4K3Dカメラも活用し、土砂の堀削、運搬、敷きならしを実施。各建機には5G端末と基地局を向き合わせるための仕組みとして正対装置を搭載している。
2.5Gを通じた自動運転システム搭載の振動ローラーによる転圧作業の施工指示、および施工結果の取得
出典:大林組
振動ローラーで敷きならしされた土砂の転圧を実施。転圧作業にあたり、5Gを活用し自動運転システムを搭載した振動ローラーと遠隔施工管理室間で、施工指示データと振動ローラーの位置情報、転圧結果、品質をリアルタイム伝送。
3.5Gを活用したGNSSデータ伝送による施工管理
上記の1,2の各建機からの映像やデータ伝送と合わせて、4台の建機(油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザー、振動ローラー)に設置したGNSSから取得するデータ(建機位置情報、現場状況と設計値との差異)を5Gで遠隔施工管理室に伝送。
出典:大林組
マシンガイダンス(※3)により各建機の遠隔操作をサポートするとともに施工結果をリアルタイムに取得。
※3 マシンガイダンス
建機の操作席のモニタ画面に、施工する部分の完成形などを表示し、オペレーターの操作をサポートする機能。
4.リアルタイム3Dレーザースキャナによる土砂量や造成結果データの5G伝送
建機の工事エリアに3Dレーザースキャナを2台設置し、マシンガイダンスにデータを利用するとともに5Gを用いて施工現場の土砂量や造成結果のデータを伝送し、遠隔地からリアルタイムに出来形を確認。
まとめ
遠隔に居ながらにして複数の現場にアクセス可能になり、一人が複数の建機を見たり現場対応ができるようになるという、まさに次世代の働き方。
5Gの超高速、低遅延通信が可能になることで、建機の遠隔操作が当たり前になる時代はすぐそこまできていますね。