圧倒的な安全性と作業効率。VRを活用した遠隔操作技術誕生

sugitec

こんにちは。今やパソコンの保有率を超え、日本人の約8割が保有しているスマートフォンですが、次の波としてAR/VRを実現するスマートグラスがやってくると言われています。

VRに関しては圧倒的な没入感で、土木・建設業界では安全教育などに活用されている例をよく見ますが、今回はVR技術を無人化施工に適用したという「無人化施工VR技術」をご紹介。

技術は「熊谷組」「独立行政法人国立高等専門学校機構東京工業高等専門学校」の共同開発となります。

シンクロアスリートの無人化施工技術への適用

この無人化施工VR技術ですが、遠隔操作している建設機械の傾きや振動・音を映像と同時にリアルタイムに反映することで、建設機械の遠隔操作の操作感覚を向上し、安全性と作業効率を図るものです。

技術は内閣総理大臣賞を受賞した熊谷組の「ネットワーク対応型無人化施工システム」と、東京工業高等専門学校の「シンクロアスリート」をコラボレーションし発展させたシステムになっているそうです。

ネットワーク対応型無人化施工システム

建設機械の操作、画像、ICT施工データを一括してインターネット プロトコル化し、光ファイバーケーブルや無線LANを使用し伝送するシステム。施工条件の厳しい災害対応において、工事全体をi-Constructionを活用した無人化施工システムによって完成したのは国内初。

シンクロアスリート

リアルタイムにスポーツ選手とシンクロすることができる、全く新しいスポーツ観戦システム。選手目線の360℃映像、VR及びモーションシミュレータを利用し、スポーツ現場の臨場感を体験。

どんなものかは紹介動画で一目瞭然

要するにこの2つの技術を合わせることで、これまで無人化施工をする際に体感・確認ができなかった実際の現場の「振動」や「建機の傾き」などの情報が得られるということになります。

開発の背景

自然災害現場での無人化施工は二次災害を防止するためにも極めて有効な手段です。オペレーターは建設機械のコクピット内から映像と俯瞰映像を頼りに、遠隔操作室から操作するのが現状でした。

安全な作業方法としては有効なものですが、実際の搭乗操作とは違い、実際の建設機械の傾きや振動を把握することはできないのが問題です。


出典:熊谷組

バックホウなどの堀削機械は重心変化が生じる作業を行うため、斜めの状態で作業をすると転倒を招くため、水平状態での作業が基本。そのため映像だけでは建設機械の傾きを把握することが困難で、その状況で安全性を重視するには作業時間の遅延が生じます。

そこで、オペレーターにコックピット内からの視界の他、建設機械の傾きや振動・音を提供することで、搭乗間隔に近い感覚で建設機械の傾きを振動・音を提供することで、搭乗操作に近い間隔で遠隔操作ができ、安全かつ効率の高い無人化施工VR技術を開発。

システム概要

無人化施工VR技術は「シンクロアスリート」を応用し、建設機械側に360度カメラと加速度センサーを設置し、コクピット内からの映像と音に加えて、建設機械の動きを遠隔操縦室にリアルタイム転送。


出典:熊谷組

遠隔操縦室では映像をVRヘッドマウントディスプレイに表示し、音を再生すると共に操縦席が取り付けられたモーションベースで動きを再現します。


出典:熊谷組

システム構成

無人化施工VR技術は、遠隔操作盤および3自由度モーションベースと、ヘッドマウントディスプレイを使用した建設機械遠隔操作システム。システム構成は「建設機械側」と「遠隔操作側」で分かれている。

建設機械側

360度カメラと加速度センサーをコクピット内に取り付け、搭乗者目線での映像配信と、音や建機の動きをを記録し配信。

遠隔操作側

遠隔操作のジョイスティックで建設機械を操作し、遠隔操作された建設機械側で記録した360度映像をディスプレイとHMDで再生すると同時に、建設機械の動きのデータによりモーションベースを駆動。


出典:熊谷組

これら一連のシステムで、オペレーターは遠隔操作室の操作座席でジョイスティックを用いて建設機械を操作し、遠隔操作された建設機械の映像と音、および動きは遠隔操作室座席でリアルタイム再生されるため、オペレーターは搭乗操作と同じ間隔で遠隔操作が可能に。

実証実験の様子

このシステムは実際に熊谷組技術研究所内に整備した屋外実験ヤードにて検証実験が実施され、その有効性が確認されたそうです。


出典:熊谷組


出典:熊谷組

まとめ

このような遠隔操作システムは他にもありますが、確かに映像のみで作業を行うとなると実際の操作感覚とは乖離したものになるのは想像できます。人は思った以上に様々な感覚を使いながら作業を行っているでしょうから。

「シンクロアスリート」の技術で振動や音、傾きなどを伝え、それをHMD内の仮想空間上で再現することで実際に現場で作業をしているかのような感覚が実現されています。

これはかなり実用度の高いシステムではないでしょうか。災害時の安全な応急復旧業務はもちろん、通常の現場においても有効に活用できそうです。

 

◆記事参考:熊谷組「無人化施工VR技術の開発 シンクロアスリートの無人化施工技術への適用」

◆お問い合わせ
・株式会社熊谷組
TEL:03-3235-8155

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