こんにちは。働き方改革、またi-Constructionが推進されている昨今では、現場でタブレットを持って仕事をするという企業さんも増えてきていると思います。
スギテックでは建物調査にタブレット調査アプリのSINQA(シンカ)を活用していますが、従来のアナログな調査をやっていた頃にはもう絶対に戻りたくない、という程に便利なものです。
中には写真台帳を作るものだったり様々なシステムが開発されていますが、10年前このような世界になると誰が想像できたのかというものですね。
本日はトンネル施工の切羽評価において、タブレットを使った便利なアプリシステムが開発されたということで、そちらをご紹介。西松建設とマルチメディア系ソフトウェア開発を手掛ける株式会社sMedioの共同開発となります。
iPadアプリひとつで切羽評価。評価はAIで
この「切羽評価システム」ですが、iPadアプリで撮影した切羽写真を使い、切羽観察簿の各項目をAIを用いて評価するもの。
AIについては、西松建設の開発した「DRISS(※)」の膨大な実績を切羽写真と組み合わせてディープラーニングしており、撮影写真からは地山強度まで推定することが可能とのこと。これにより観察作業の効率化と評価精度の向上が期待されます。
※DRISSとは
Drilling Survey Systemの略。削岩機による穿孔時の油圧や速度データを用い、切羽前方の地山の硬さ等を定量評価する西松建設の技術。
開発の背景
山岳トンネル施工の安全性、施工性の確保には、切羽の地質状況を把握することが重要。そのため少なくとも1日1回の頻度で目視を主とする切羽の観察が行われています。
この切羽観察は、状態や風化変質などの所定項目に基づき評価を行うもので、切羽の安定性や支保の妥当性の検討には欠かせないもの。
出典:西松建設
この不可欠になる切羽観察の観察作業の効率化や、評価精度の向上を行うためのAI活用技術「切羽評価システム」が開発されました。
システム概要
システムは専用のiPadアプリ等で撮影された切羽写真を用い、切羽観察簿の項目をAIで評価。またこれまで長年蓄積されてきた「DRISS」の膨大な実績もAIに学習させ、写真から地山強度の推定が可能に。
さらに「VIS(※)」という画像処理法を写真に適用し、切羽の凹凸の視認性を上げる機能もあり、割れ目に対する項目の判定精度向上が期待されるとのこと。
出典:西松建設
※VISとは
東京理科大学理工学部土木工学科、小島尚人教授により開発されたシステム。画像に錯視誘発処理を施し、ひび割れ等の細かい特長の判読性を向上させる特許取得技術。
切羽写真の撮影やAIによる評価がひとつのアプリで実施可能なため、観察作業の効率化や地山性状の把握の迅速化が期待される。
出典:西松建設
アプリ内ではAIの評価に加え観察者のコメント等も入力可能。データはクラウドに保存され、所定の観察簿の形式でダウンロードできるため、観察簿の作成を効率的に進めることができます。
期待される硬化
1.観察作業の効率化
・切羽写真の撮影やAIによる評価がiPadアプリひとつで実施可能なため、観察作業の効率化や地山性状把握の迅速化が可能。
・これまで蓄積された各現場の実績をAIに学習させ、それを判定に用いることで観察者による評価のバラツキを軽減。
・アプリで得られたAIの判定結果や観察者のコメント等を所定の形式でダウンロードができ、効率的に切羽観察簿を作成することができる。
2.評価制度向上
・写真から地山強度を推定することで、より定量的な評価が可能。
・画像処理機能により、割れ目に関する評価項目の判定精度を向上させることも可能。
まとめ
山岳トンネル施工において必要となる、1日1回の目視点検をタブレットアプリにより効率化できるようになるシステム。
出典:西松建設
このシステムではこれまで蓄積されてきた探査実績をAIに学習させ、アプリで写真を撮るだけでその写真から強度推定を可能にすることで、観察者を問わず評価のバラツキを無くすことができる他、観察簿の作成作業の効率化も図れます。
従来の目視では人によっての評価のバラツキが出るという部分は、このトンネルの切羽観察に限らず、我々の行っている建物の外壁調査等でも同じ課題がありますね。
調査業務などを行っている企業さんであれば、膨大な劣化状態等の写真を保有されていることだと思いますが、開発においてそれは大きな情報資産のひとつ。今後のためにも大事に保管しておきましょう。