こんにちは。今朝は冷え込みが厳しかったですね。昨日、今季ではじめてインフルエンザの流行が注意報レベルを超えたという発表がありました。例年1~2月が流行のピークとなっていますので、今の時期は手洗いなどを徹底していきましょう。
さて、本日は自律飛行型のドローンとAIを活用し、トンネル施工の発破工法時において、発破の良否の判定を自動化し効率化するというシステムのご紹介。
熟練技能者の良否判定技術をAIで継承
システム名は「Blast Eye/AI:ブラストアイ」。戸田建設と株式会社Ristの開発となります。これはドローンが自立飛行して撮影、データを3次元化する「BlastEye」と、発破後の飛石形状を判定するAIの「BlastAI」で構成されています。
出典:戸田建設
システムの概要としては、トンネル施工で火薬類を用いておこなう発破堀削時に出る、飛び散った岩盤の飛石の形状を、まずドローンで撮影。その撮影データからBlastAIの学習データを用いて、飛石の形状の良否を判定します。
これらの活用で、通常は熟練技能者の技能で判定していた良否を、AIで自動化すると共にAIにその判定技能を継承することが目的です。
開発背景
中硬質岩の山岳トンネルでは、1~2m毎の発破堀削によって順次トンネル施工していきます。しかし地質は一定ではないので発破の適切性をその都度判定しながら、次の発破パターンに反映していく必要があります。
その適切性の判定は、
①発破作業を行った後の切羽の形状(堀削した空間の大きや凹凸)
②発破の飛石の形状を確認し実施
①は3Dレーザースキャナ等の使用により誰にでも定量的に判定できるようですが、②に関しては適切な形状が曖昧なために、これまでトンネル熟練工の判定に委ねられてきました。
この開発は、不足状況にある熟練工の経験をAIに学習させ後世に残す目的と、それを活用し誰でも効率的に適正な判定結果を得られるようにする為のものとのこと。
出典:戸田建設
システムを構成する2つの技術
①困難なトンネル内での自律飛行を可能に
一般的に、GPSが受信できない閉鎖空間などではSLAM技術によりドローンを自律飛行させることはできますが、施工中のトンネル内ではGPSの不通に加えて、トンネル内は長く単調な連続空間であるためにSLAMが参照する特徴が少ないという問題があります。
この現場実証では変化に乏しい路面などではなく、ロックボルトなどの特徴を捕捉しやすいトンネルの上部を飛行させることで、それら課題を解決しています。
②指定位置で自動撮影し3次元画像を作成
切羽近傍の3次元画像はドローンで取得。予め撮影位置をプログラミングしておくことで、少しずつ撮影位置を変えた20枚程の写真を処理し、3次元データを作成することが可能。
出典:戸田建設
軽量で安価なデジカメの使用とSLAM技術(カメラやレーザースキャナの情報から3次元地図を作成し、位置姿勢を同時に推定する技術)をドローンに活用することで、発破後の3次元切羽形状とその近傍の3次元飛石形状データを自動取得できる方法が、戸田建設が施工中のトンネル工事で実証されたそうです。
まとめ
今後の展開として、このシステムはトンネル測量や計測工にも活用できる可能性がある他、切羽画像などから地山等級を判定する際にも生かせると見込まれています。
その他、システムの開発過程で得たノウハウを、他の施工分野や用途に幅広く活用していく計画のようです。また、全国の実績データから深層学習で精度を向上し、他現場に展開していくとのこと。
ドローンに関してはGPSの問題はありましたが、これまでもこのブログでSLAMを使ったドローンのソリューションをいくつか紹介してきたように、その辺りの問題は解決されつつありますね。
そしてAIを用いることで、これまでの熟練工の技術をデータ化し学習させることでさらに精度が上がり、より効率的な作業をおこなうことが可能になります。
今後もドローン+AIを活用した現場の効率化と、AIを技術継承に活用する事例は増加してきそうです。