こんにちは。先週末から一段寒さが厳しくなりました。全国各地で最高気温が今季一番低くなったようで、まだまだこれから気温は下がってくると思いますが、忙しい時期、しっかり体調を管理していきましょう。
さて、本日は水産業でのAI活用の話題。近畿大学水産研究所と豊田通商株式会社、日本マイクロソフト株式会社が共同開発した、魚の養殖現場での稚魚の選別作業に、AIを活用した実証実験を開始したという話題。
テクノロジー活用で漁業の働き方改革を目指す
養殖現場での稚魚の選別作業はこれまで人手に頼っていました。そもそも稚魚の選別作業は専門作業員の高度な経験・知識が必要になります。
出典:日本マイクロソフト
その上に目視と手作業で行うのが基本なので集中力も高度に要求され、作業員への体力的な負担も大きなものでした。作業の自動化は長年の課題となっており、働き方改革を実現するためにも解決すべき課題です。
そこで前述の通り、3社がこの稚魚の選別作業問題を解決すべく、画像解析と機械学習技術を組み合わせた「稚魚自動選別システム」を開発、実証実験の開始を発表しました。
研究の現状
通常稚魚の選別作業は、イケスからポンプで吸い上げた稚魚をベルトコンベアに乗せ、作業員の前を通過する間に生育不良の個体を目視で見分け、選別をおこなっています。
ここで最も重要な役目を担うのがポンプの流量調節をおこなう担当者。吸い上げる水量が多すぎると、コンベアを通過する稚魚が多くなりすぎて選別作業が追いつかなくなってしまいます。
逆に吸い上げる流量が少なくなると、稚魚の数が少なくなりすぎてしまい、全体の作業効率が落ちてしまいます。
システムの概要
今回開発の自動選別システムでは、ポンプ制御の自動化から取り組みを始めています。ベルトコンベア上の魚影面積とその隙間の面積をマイクロソフトのAIを活用し、画像解析し一定面積あたりの稚魚数を分析。
出典:日本マイクロソフト
さらに選別者の作業ワークロードを機械学習させ、作業のための最適値を割り出しポンプの流量調整作業を自動化するソフトウェアを試作。実証実験を継続しデータの収集・分析を行うとともに、改良した制御システムを19年3月までに本番環境へ実装することを目指しているとのことです。
今後の展開
今後はポンプ制御システムに次ぐ第2段階として、現状目視で行っている生育不良の個体を取り除く作業においても、画像解析と機械学習を組み合わせて自動化することを計画。
最終的に一連の簡単な選別作業をITで自動化・機械化することで、作業員の業務の負担軽減や業務改善につなげ、経験を持つ優秀な人材は新たな分野で有効活用するなど、若手の人材確保に悩む第一次産業である漁業での働き方改革への貢献を目指すとのこと。
まとめ
ポンプ制御と生育不良の個体の取り除きを、AIを使って人の手が必要になっていた部分を自動化。ずっと人が付きっきりで管理していた部分が自動化されることによって得られる恩恵は大きそうです。
漁業では定置網や底引き網など多種多様な魚類を捕獲するような漁があり、漁の後は必ず選別作業が必要になりますが、稚魚の選別作業に限らず、そのようなものにもAIによる選別ができるようになれば、業務改善が大きく前進しそうですね。