こんにちは。11月下旬とはいえないほど日中は暖かいですね。今年はエルニーニョ現象が観測されたことから暖冬になるとの予想で、昼間との寒暖の差が益々激しくなる可能性が高いので、師走に向けて忙しい時期、体調を壊さないよう管理していきましょう。
さて本日は人工知能についての話題。生活の中で色々なものに使用されているポリマー素材ですが、そのポリマーを設計する際に人工知能を活用して材料開発の期間を短縮するという技術のご紹介。
従来の経験と勘を頼りにした開発からの脱却
ポリマー(重合体)はモノマー(単量体)という小さい分子が多数結合して構成された物質になります。ポリマーという言葉は日常の中でも何気なく良く聞くと思います。
例えば発泡スチロールの素材のポリスチレンや、ポリ袋のポリエチレンなど、名前の頭にポリという言葉が付いているものが分かりやすい物のひとつです。各種プラスチックもポリマーです。
他にも電子部品から接着剤、レンズなど幅広い分野で材料として使われていますが、これらはモノマーの構成や配置でポリマーの性状が変化するので多種多様な活用ができる製品が生み出されている訳です。
このポリマーの設計から検証までのサイクルにAIを取り入れることで、材料開発を効率化しようというのが今回の技術で、昭和電工と産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、ADMAT(先端素材高速開発技術研究組合)の共同開発となります。
これまでは経験と勘を頼りに開発をおこなっていたそうですが、これを取り入れることで1/20まで開発期間を短縮することを目指しているそうです。
具体内容
3社はポリマー設計におけるAI技術の有用性を実証するために、AIを活用し要求特性を満たすポリマーの探索を行い、モデルケースとして耐熱性の指標であるガラス転移点に着目。
出典:産総研
構造とガラス転移点が判明しているポリマーの構造データ417種類の中から最もガラス転移点が高いポリマーをAIで探索し、発見までに要する試行サイクルを短縮できるかを検証。
まずは無作為に抽出した10件のデータをAIに学習させ、残りの407件の中から最もガラス転移点の高いポリマーをベイズ最適化(予測値だけでなく推定される誤差も考慮し次の候補を選出する方法)を用いて予測・検証を繰返し、実際に所望するポリマーを発見するまでの試行回数を調査。
データの選び方で結果が変わることを防止するため、初期データを変えた試験を500回実施して試行回数の平均値を評価。
出典:産総研
その試験の結果、平均4.6回という極めて少ない試行で最もガラス転移点の高いポリマーを発見することに成功。無作為にポリマー選出した場合と比較して約1/40という非常に少ない試行で、AIでのポリマー設計の有用性が裏付けられた結果となりました。
今回の詳細は11月27日の「2018 MRS Fall Meeting」で発表されるとのことです。
まとめ
研究分野の現場のことは殆ど知りませんが、経験や勘を頼りにするという場面、個人の能力が大きく作業に影響しそうなイメージがあります。しかしそこに関しても、全ての工程とは言わずともAIで効率化が図れるようになると、開発期間は大幅に短縮できそうですね。
開発期間が短いほどその分早く提供できますし、AIに任せているのでヒューマンエラーが起こることがないと考えるとその恩恵は大きいと思います。