こんにちは。昼間は暖かいですが朝晩と日に日に寒くなってきました。京都では今月の中旬あたりから来月にかけて、紅葉のシーズンがやってきます。
紅葉を目当てに来る観光客など、人の数が爆発的に増加する時期でもありますね。平安神宮のドローンの件ではないですが、ドローンで紅葉を撮影しようとして事故、みたいなニュースが出てこないことを願います。
さて、本日ですが大手ゼネコンなど建設会社9社が共同で、タイルの剥落防止工法「繊維植込みシートを用いたタイル張付けモルタルの剥落防止工法」の建築技術性能証明を取得されたというニュースを、建設工業新聞で見かけましたのでその工法はどんなものなのかご紹介。
繊維付きのシートを躯体表面に貼り付け、仕上げ層の剥落を防止
ちなみにその建設会社というのは、淺沼組・鴻池組・佐藤工業・西武建設・大末建設・東亜建設・東急建設・東洋建設・松村組の以上9社となります。
このタイル剥落防止工法ですが、コンクリートの躯体表面に繊維が植え込まれており、その繊維がタイル貼り付けモルタル層あるいは不陸調整材の層と絡み合う状態になります。
出典:鴻池組
その状態になることで、境界面に剥離が生じた場合でも、タイルを含んだ貼り付け材料の自重に対して容易には剥落したい状態を構築することができるそうです。
工法の特長と背景
この工法はポリプロピレン長繊維をポリエチレン基布に、ニードルパンチで植え込んだ繊維植え込みシートを型枠のコンクリート充填面に貼り付け、コンクリートを打ち込み、コンクリート表面に繊維を植え込んで、繊維のアンカー効果によってタイル張付けモルタルの剥落を防止するものです。
出典:鴻池組
背景
建物の外壁タイル等の仕上げ層が剥落すると、人的・物的被害をもたらす可能性が高く、建物管理者のみならず設計者や施工者においても最も防止したい現象のひとつ。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の外壁仕上げでは、コンクリート躯体表面に下地モルタルをはじめとするモルタル層を施してタイル張り等の仕上げをおこなうことが多く、仕上げ層の経年劣化や地震などの自然災害による剥離・剥落のほとんどがコンクリート躯体表面とモルタル層の境界面で生じています。
これら剥落事故を防止するには、境界面において剥落防止を図ることが重要です。
この繊維植え込み工法の性能
1.温冷を繰り返した抵抗性試験(20℃水中18時間、-20℃気中3時間、50℃気中3時間の24時間1サイクルを10サイクル)軸ひずみ繰返し試験(建物表面の温度上下によるひずみの繰返しを模擬し100年相当の繰返しひずみを与える)、これらの試験実施後の試験体で、引張接着強度が0.4N/m㎡以上。
2.繊維を植え込んでいないコンクリート素地と比較して、促進中性化試験(温度20℃ 湿度60% 炭酸ガス濃度5%)による中性化深さが同等以下。
3.せん断接着試験において、コンクリート躯体との境界面が剥離した後も、張付け材料の自重に対し10倍以上の保持力あり。
出典:鴻池組
まとめ
タイルやモルタルなど剥落事故の問題は本当に深刻で、平成22年度~29年度の8年間で67件もの事故が発生。その内負傷者があった事故が38件。毎年約8件の剥落事故が発生し、約4名が犠牲になっている計算です。
しかし問題なのが、上記の数字はあくまで国交省への報告があった集計数であり、全国では誰にも知れず剥落している事例は実際には沢山あると思われます。なので上記数字は完全に氷山の一角と言えます。
この工法は繊維を織り込むことで、躯体と張付けモルタルを噛ませ、自重程度では容易に剥落しない構造を構築できるということですね。試験性能を見る限りでもかなり有効だと思われます。
通常だとモルタルなどが劣化してくればそれがすぐに剥落に繋がってしまいますが、繊維で食い止められる分、剥落事故が減ることが期待できそうです。