こんにちは。現在は様々な業界で人工知能の活用が広まってきていますが、今回ご紹介するのは集中豪雨などがあった際に警戒するべき災害である土石流を人工知能を活用して検知しようというもの。
土石流は早いものでは時速40kmもの速度に達し、一瞬のうちに民家などを壊滅させてしまいます。これに巻き込まれないためにもできる限り素早い対応が必要です。
安価なセンサーのみで実現させた真の土石流だけを検知するシステム
このシステムはブログでも何度かご紹介してきた、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の開発したもので、特長としては専用の特別なセンサーを用いている、というものではなく、汎用部品を用いた安価なセンサーを使用できるようにしているのが特長です。
出典:産総研
センサーを土石流が発生する地域に複数、面的に配置し、それらのセンサーからの振動波形をAIで解析。真の土石流のみを検知できるということです。
このシステムの完成にあたっては、昨年に土石流が頻発する桜島にて1ヶ月間センサーの振動データを収集。その振動データから学習データを生成し、その学習データから今回の土石流の判定AIソフトを開発しています。
検証結果と背景
出典:産総研
その判定ソフトに対して、桜島の実データで検証をおこなった所、誤検知無しで全ての土石流を検知できる見込みを得ているそうです。従来の方法では誤警報が約95%にも達しており、今回のAIを用いたシステムの有用性が確認できたということ。
95%となるとほぼ全てが誤警報ということですし、住民の方が「また誤警報か…」みたいに慣れてしまうとあまり良くないですね。
日本は国土的に山地が多く急な斜面も多くあり、梅雨・秋雨の時期や台風などの際に大量の雨が降っていることもあって、年間平均にすると1,000件程度もの土砂災害が発生しているそうです。
その中でも土石流は速度も早く、短時間で集落などに到達してしまうことから、いち早い土石流の発生や予兆を検知することが重要。
従来のワイヤーセンサーの問題点
しかしこれまでに土石流の検知に使用されてきたワイヤーセンサーは誤警報が95%。それには以下のような理由があります。
1.土石流がワイヤーを切ることで警報がなるという物理的な仕組みになっているそうで、一度ワイヤーが切れると現場まで貼り直しに行かねばなりません。
2.1の理由から、始めに起こった土石流でワイヤーが切れてしまうと、第二波・第三波の土石流が起こった場合検知ができなくなる。
3.動物がワイヤーを切断するという誤報も発生している。
上記のような理由から振動センサーでの検知を試みたそうですが、その場合は雨や風、地震など、土石流以外の振動でこれもまた誤警報になってしまうようです。
土石流の振動波形のみを面で検知
誤警報問題を解決するべく、AIの機械学習で土石流による振動だけを識別できる方法を実現したのが今回のシステム。
出典:産総研
従来では、土砂災害関連の計測機器やセンサーは高額であり複数設置することが難しく、点での検知になる場合が多かったようです。
点での検知は誤動作の可能性も高く、費用面を除けば複数設置することによる面での検知の方が誤判定の可能性が小さいということで、今回のシステムで安価な振動センサーを多数配置し、面による検知を実現しています。
まとめ
センサーを安価なものにすることで、誤判定の可能性が低い面方式が実装しやすくなり、そこにAIの機械学習で土石流のみを検知。この特定の波形のみを検知できるというのはAIならではですね。
計測データを学習すればするほどAIは賢くなっていきますので、限りなく誤検知の少ない土石流検知センサーができるのは時間の問題でしょう。