こんにちは。建築物の外壁タイルを打診調査(打診棒で叩いたりしながら異常箇所がないか検査する手法)にておこなう場合、通常であれば「外壁を打診する人」と「結果を記録する人」という、効率的に調査を行おうとすると最低でも2名は必要でした。
出典:奥村組
外壁の打音を聞きながら異常箇所があった場合には、記録係の人が手書きでそれを図面、又は野帳に記録していきます。とても手間がかかります…しかしこの度、奥村組がそんな打診調査を1人でおこなえるようにするシステムを発表されています。
ウェアラブル+測域センサーを使ったシステム
このシステムですが、ウェアラブル端末(衣類や腕時計のように身につけられるコンピュータ端末)と位置情報を計測するレーザー式の測域センサーの組み合わせで構成されています。
出典:奥村組
出典:奥村組
ウェアラブル端末を活用しているのが何とも今風ですね。果たしてこれでどのようにして1人で調査をおこなうのか?以下のような方法となっています。
概要
出典:奥村組
上の写真のように、作業員の方はウェアラブル端末を装備し片手には調査の為の打診棒、そしてもう一方の手には記録用のスイッチを持って調査をおこないます。測域センサーの方は予め調査する外壁面に対して取り付けます。
この測域センサーで外壁面のX軸Y軸の座標値を取得しますので、これが精度の悪いものだとデータの信用性に関わるので大事な部分と言えそうです。
従来の打診調査のように、打診棒で打音を聞きながら調査を進め、異常のある部分が見つかったらそこで記録用のスイッチを押すことで、異常箇所を記録するとともに測域センサーで検知した打診棒の位置情報も付加されるようになっています。
これにより、記録の為の作業員が不要になり記述の手間もデータ化の手間も無くなりますので、大幅な省力化になりそうです。
開発背景
外壁の調査方法として、打診による全面打診や赤外線カメラによる撮影・解析などの方法がありますが、全面打診に関しては足場の仮設が高コストになったり、赤外線カメラの場合は低コストなものの、天候条件に左右されるという弱点があります。
全面打診は調査結果の信頼性が最も高くなりますが、上記のコスト面のデメリットと、これまでの調査方法としては調査結果を手書きで記録するという方法が一般的で、記録のデータ化や整理に多大な労力を要していたため、調査の省力化ニーズが高まっています。
まとめ
こちらのシステムですが、現在の所は奥村組自社の調査業務にのみ使用して改善を加えていく段階のようで、一般的な普及にはまだ時間がかかりそうです。
弊社でも打診調査時の「手書き」の部分に無駄を感じ、省力化を求め「現場調査・報告書作成」までを一括でできる「SINQA」アプリを開発し、これまで多くの調査実績を積み重ねると同時に、喜びの声も頂いてきております。
ですがもっと「SINQA」を使いやすく便利にしていくという所で、今回のような既存の汎用製品を組み合わせて実現しているシステムの事例は非常に参考になる部分が多いです。