画像から鋼材のサビを検出するAI技術として国交省点検支援技術性能カタログに初登録
本日は株式会社NTT e-Drone Technology(以下「NTTイードローン」)が、ドローンカメラ等で撮影した画像をAIで解析し、点検業務や防災等に役立てる新サービス「eドローンAI」(以下、本サービス)を2025年4月21日(月)より提供を開始というリリースニュースをおとどけします。
本サービスは、ドローン撮影請負サービス「おまかせeドローン」のオプションサービス。この度、ドローンの機体やパイロット派遣だけでなく、撮影後の画像に対してのAI解析まで一気通貫した実施が可能になりました。
初回機能は、橋梁を対象とした鋼材の”サビ”とコンクリートの”ひび割れ”を、高精度に検出できる「サビひび検知AI」です。
このAIは、日本電信電話株式会社(NTTアクセスサービスシステム研究所)のR&D成果※1を応用活用し、検出率95%※2と高い精度を実現しています。
今後は、橋梁だけにとどまらず、社会インフラ設備の点検業務の精度向上や効率化、さらにはベテラン技術者の目で見つけていた損傷をAIが代わりに検出することで技術継承の課題解決へも寄与していきます。

(図1) 「eドローンAI」のサービス利用イメージ
※1:2022年5月16日 画像認識AIを用いて社会インフラ設備の錆を高精度に検出~さまざまな設備の一括点検により稼働削減をめざす~ https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/05/16/220516a.html
※2:サビ検出率=AIが検出したサビ個数/真のサビ個数、ひび割れ検出率=AIが検出したひび割れ本数/真のひび割れ本数で自社検証した結果です。お客様の環境次第で同じ性能が出ない場合がありますのでご留意ください。
背景
近年、社会インフラ設備の老朽化が進み、大きな社会課題となっています。
道路、橋梁、ダム、送電設備などのインフラは、高度経済成長期に整備されたものが多く、特に橋梁は日本全国で約73万橋ありますが、2030年になると、その内の50%が建設後50年以上経過した状態になります。
しかしながら、現時点でも、修繕工事が必要な橋梁の33%にあたる約2.2万橋の修繕が未完了の状況となっており、さらには少子高齢化の進行に伴い、点検や修繕業務を行う建設業の就業者は1997年をピークに30%以上も減少しており、ベテランから若手への点検業務の技術伝承も課題です※3。
このため、点検や修繕業務の効率化が急務となっています。
また、地球温暖化が進む中で、1976年から2020年にかけて集中豪雨の発生頻度も約2.2倍と増加しており、最近では山火事も増えています。これに伴い気象災害も増加しており、ドローンによる被災状況把握の対応も今後さらに増えることが予想されます。
こうした様々な課題に対し、NTTイードローンは、ドローンに関して蓄積した多くのノウハウと、
日本電信電話株式会社(NTTアクセスサービスシステム研究所)のR&D成果である画像解析AI技術を応用活用し、効率的なインフラ点検の支援や災害対応の支援等を実現する、新サービス「eドローンAI」の提供を開始します。
※3:数値データは、国土交通省HPより出典
サービス概要
本サービスはドローンの機体とパイロットを派遣し、点検測量、農薬散布、空撮等を実施する「おまかせeドローン」のオプションサービスです。
このため、ドローンの機体とパイロット派遣から、撮影した画像の解析までの一連の業務をおまかせいただけます。
なお、ドローンで撮影した画像以外に、お客様ご自身で用意した画像も、本サービスで解析することが可能です。
また、初回機能「サビひび検知AI」では、橋梁を撮影した画像に対して、本機能を活用することで、サビやひび割れの検知が可能となります。
さらに、橋梁以外のインフラ設備にも応用が可能な技術であるため、実証テーマをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
◆サービスHP:https://www.nttedt.co.jp/edrone-ai
「サビひび検知AI」の特長
特長① サビとひび割れを同時に自動検出可能
・鋼材とコンクリート、それぞれで損傷数が一番多いサビとひび割れの検出に対応しており、目視確認の負担を軽減し、点検業務の効率化に貢献
特長② 高精度で信頼度の高いAI
・画像から鋼材のサビを検出するAI技術として、国土交通省が定める「点検支援技術性能カタログ」に初登録
・全国でドローンを飛ばして集めた橋梁画像を中心に学習したAIで、検出率が95%と高精度
(NTT東日本グループでは、自社設備点検で年間100橋程度のドローンによる点検を実施)
特長③ ドローン撮影からAI解析までフルサポート
・ドローンを活用した包括的な点検業務のご支援が可能。契約手続きを1本化できて効率的
・AI解析に適した撮影条件・画像条件設定も、丸ごとおまかせ可能
・大量に撮影した画像から、AI解析に必要な画像にしぼる手間もなく、おまかせ可能
提供開始日
2025年4月21日(月)
今後の展望と実証パートナーの募集
eドローンAIは、サビひび検知AI以外にも、さまざまなジャンルでの機能を拡大していく予定です。
例えば、コンクリートの漏水、遊離石灰、剥離、鉄筋露出検知、鋼材の腐食深さ推定、港湾設備でのひび割れや段差/ずれ検知、赤外線映像での人検知などのAI機能開発を予定しています。
さらには平常時だけでなく、防災分野での活用も視野に入れており、災害時の対応等にも活用できるAIをめざしていきます。このため、インフラ設備をはじめ、さまざまな分野から実証に関するご相談も受け付けておりますので、ご相談ください。
資料引用:NTTイードローン
おわりに
現在のサービスが画像からの損傷箇所の「検出」に主眼を置いているのに対し、今後展開される機能では、損傷の種類の識別、NEXCOや国土交通省の定める損傷程度の「判定・評価」、そして定量的な「計測・推定」といった、より高度な解析能力が求められてくるでしょう。
□想定できる追加機能
損傷種類の高精度識別機能:
単に損傷箇所を検出するだけでなく、それが「漏水」「遊離石灰」「剥離」「鉄筋露出」のいずれであるかをAIが自動で識別する機能です。
それぞれの損傷は視覚的な特徴が異なるため、これらの特徴を学習したAIモデルが必要となります。
同様に、鋼材の「腐食」についても、単なるサビの検出から、腐食の進行段階や種類(全面腐食、孔食など)を識別する機能が考えられます。そのためにも同社は実地調査、つまりデータを欲しているのが「パートナー募集」のテキストからも読みとれます。
損傷程度の自動判定・評価機能:
検出・識別したコンクリートのひび割れ、剥離、鉄筋露出などについて、国土交通省が定める近接目視でのC判定、D判定といった健全性の区分に準じた判定をAIが行う機能です。
ひび割れの幅や長さ、剥離の面積、鉄筋露出の範囲などを画像から定量的に測定し、事前に学習した判定基準に基づき自動で評価を行います。
これにより、点検担当者の判定のばらつきを減らし、より客観的かつ効率的な点検報告書の作成が可能になります。
腐食深さの推定機能:
鋼材の腐食箇所に対して、画像データから腐食の進行度合いを分析し、腐食による鋼材の断面積の欠損量や腐食深さを推定する機能です。
これはNTTグループが研究開発を進めている分野でもあり、eドローンAIへの搭載が期待されます。
腐食の度合いと画像の特徴(色、テクスチャ、形状など)との関係性をAIに深く学習させることで実現されると考えられます。
これにより、構造物の健全性評価や余寿命予測に不可欠な定量的データを提供できるようになります。
損傷箇所の領域・規模計測機能:
検出されたひび割れの幅や長さ、剥離や遊離石灰の発生範囲、鉄筋露出部の面積などを画像上で自動計測し、数値データとして出力する機能です。
ドローンで撮影された画像のスケール情報を活用し、実際の構造物上での寸法を推定する技術が必要となります。
これは損傷程度の判定・評価の根拠情報となります。
時系列比較・変化点検出機能:
過去に撮影・解析した画像データと今回撮影した画像を比較し、
新たな損傷の発生や既存損傷の進行・変化(ひび割れの拡大、剥離の進行、腐食の深化など)を自動で検出・通知する機能です。これにより、構造物の経年劣化のモニタリングが容易になり、早期のメンテナンス計画立案に貢献します。
点検レポート自動作成支援機能:
AIが検出・識別・評価した損傷情報を、位置情報や画像と紐づけて整理し、点検調書や報告書の作成を支援する機能です。
損傷箇所のリスト化、台帳登録、画像へのマーキングなどを自動化することで、点検後事務の効率を大幅に向上させます。
異なるセンサーデータとの連携機能:
将来的な拡張として、ドローンに搭載可能な赤外線カメラ等で取得した熱画像データと可視光画像を組み合わせて解析する機能も考えられます。
例えば、コンクリート内部の浮きや剥離は、表面温度に変化が現れる場合があり、赤外線画像がその検出に有効な場合があります。これにより、より多角的な診断が可能になります。
以上のような機能が強化追加されていけば、「eドローンAI」は単なる画像解析ツールから、インフラ構造物の総合的な維持管理を支援するソリューションへと進化を見据えているのでしょう。
日本の風土に適した定量的データの取得や自動判定機能は、点検業務の効率化、コスト削減、点検精度の向上に寄与の可能性を感じます。
参考・関連情報・お問い合わせなど
<本件に関するお客さまからのお問い合わせ先>
□株式会社NTT e-Drone Technology サービス推進部
リリースニュース:https://www.nttedt.co.jp/post/edroneai-20250421
メール:omakase_edrone@nttedt.co.jp
<本件に関する報道機関からのお問い合わせ先>
□東日本電信電話株式会社 経営企画部 広報室
TEL:03-5359-3711 メール: houdou-gm@east.ntt.co.jp