地下インフラの点検に、さらなる「目」と「測る力」を
GPSが届かない下水道内での点検作業は、これまで「見える」ことはできても、「測る」ことの難しさが課題となっていました。このたび、株式会社Liberawareと株式会社TKKワークスが神戸市の協力のもと実施した実証実験により、この課題解決に一歩近づいたといえます。
実証で使用されたのは、狭小空間専用の点検ドローン「IBIS」の後継機への応用を想定した新しい通信モジュールや計測技術。これにより、ドローン挿入地点と対象物との距離を正確に測定することが可能となり、下水道点検における情報の解像度が大きく向上する見通しです。
埼玉の道路陥没事故対応が開発のきっかけに
実証に至った背景には、2025年1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故があります。調査困難だった現場で、IBIS2がいち早く投入され、キャビンのような構造物をその日のうちに発見。後の検証により、それがキャビンであると確定されるなど、ドローンの機動力と即応性が評価されました。
今回の実証で焦点となったのは、こうした狭小空間において対象までの正確な距離を測定できるかという点。これは、地上とは異なる制約のある地下空間では、調査の質と安全性を大きく左右する要素です。
実証の詳細と使用機材
2025年3月28日、兵庫県神戸市内のトンネルにて実証は行われました。参加したのは、Liberaware、TKKワークス、神戸市の三者。加えて、OMデジタルソリューションズ社からは撮影機材の提供もあり、以下の製品が実証で活用されました。
・OM SYSTEM OM-1 Mark II:公式ページ
・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS:公式ページ
可視化性能と併せて、点群データや距離情報の取得においても、今後のIBISシリーズに重要なフィードバックが得られたと見られます。
下水道インフラの「見える化」から「把握」へ
これまでのドローン点検は「記録する」ことに重きが置かれていましたが、今後は「その位置関係を把握する」ことが不可欠になります。今回の技術はその分野における大きな進展であり、特にGPSが届かない地下インフラの可視化・位置管理におけるブレイクスルーとなる可能性があります。
まとめ:地下空間のDX、そして災害対応力の向上へ
この実証実験の成果は、ドローンを使った地下空間の点検業務に新しい可能性を提示しただけでなく、今後の災害対応やインフラ老朽化対策においても重要な意味を持ちます。今後、IBISシリーズへの技術実装が進めば、狭小空間における点検の自動化・高精度化がさらに加速するでしょう。
ドローンという「空を飛ぶ目」が、いよいよ地下にも届く――。私たちは今、インフラ点検のあり方が大きく変わる節目を迎えているのかもしれません。
この取り組みは、単なる技術開発にとどまらず、都市の安全を守るための「社会的実装」に直結しています。現場ニーズとテクノロジーの融合が、まさに今、進化していると感じさせられました。今後のIBISのアップデートにも大いに期待です。
参考情報
□株式会社Liberaware「GPSの届かない下水道内での点検利用促進のため新しい通信方式による小型ドローン位置測定の実証に成功 -地下インフラ点検の課題解決へ-」https://liberaware.co.jp/gps%e3%81%ae%e5%b1%8a%e3%81%8b%e3%81%aa%e3%81%84%e4%b8%8b%e6%b0%b4%e9%81%93%e5%86%85%e3%81%a7%e3%81%ae%e7%82%b9%e6%a4%9c%e5%88%a9%e7%94%a8%e4%bf%83%e9%80%b2%e3%81%ae%e3%81%9f%e3%82%81%e6%96%b0/
※本記事は、株式会社Liberawareの公式リリース情報をもとにしています。