ダム工事において欠かせない「グリーンカット作業」。これまで手作業で行われてきたこの過酷な工程が、ロボット技術によって大きく変わろうとしています。今回、西松建設株式会社が開発した自動走行型のグリーンカットマシンが、作業の効率化と省人化を実現する可能性を示しました。本記事では、その背景、技術概要、試験施工の成果、そして今後の展望について詳しく解説します。
グリーンカット作業とは?ダム建設における重要な工程
グリーンカット作業とは、コンクリートを打設した際に発生するレイタンス層(セメントや骨材の微粒子が浮き上がってできる弱い層)を削り取る作業です。これは、次の打ち継ぎ時の接着強度を確保するために不可欠なプロセスですが、以下のような課題を抱えていました。
- 作業負担の大きさ:ハンドポリッシャーなどを使用し、大面積を処理するため、作業員に大きな負担がかかる。
- スケジュールの制約:コンクリート打設の翌日に作業する必要があり、施工スケジュールの調整が難しい。
- 品質のばらつき:人の手による作業では均一な仕上がりを維持するのが難しい。
これらの課題を解決するために開発されたのが、自動走行型のグリーンカットマシンです。
自動走行型グリーンカットマシンの概要
基本構造と特長
このマシンは、中山鉄工所(佐賀県武雄市)が開発したマイクロ建機「MSD700」をベースにしており、以下の特長を備えています。
- 小型化による高い作業性
・狭いエリアでも作業可能で、従来の油圧ショベルタイプのマシンに比べ、約1/2のサイズに小型化。 - 安定したグリーンカット品質
・桜電社製のレイタンスクリーナ「TM-12型」を搭載し、回転ブラシの押し当て圧力を安定化。
・人による作業と同等の高品質な処理を実現。 - 「自動モード」搭載による省人化
・リモコン操作で走行・アーム動作・ブラシ回転を制御可能。
・「自動モード」により、一定の動作パターンで無人作業が可能。
試験施工の成果ー自動化の可能性を実証
2024年12月、宮城県で建設中の川内沢ダムにおいて、グリーンカットマシンの試験施工が実施されました。
主な成果
- 1台あたり最大40m²/hの処理能力を確認。
- 支障物のないエリアでは完全自動化が可能であり、人力作業を置き換えられる。
- 安定した処理品質を実現し、従来の手作業と比較して遜色ない仕上がりを確認。
今後の展望ー完全自動化へ向けた進化
現在のグリーンカットマシンは、リモコンによる操作と「自動モード」による部分的な自動化を実現していますが、さらなる技術開発により、完全自動化へと進化しようとしています。
- 自律走行制御の導入
SLAM技術(自己位置推定とマッピング)を用いて、マシンが自律的に作業エリアを走行できる機能を開発中。2025年度には試験導入予定。 - 品質管理システムの構築
・グリーンカット作業データを収集・解析し、施工品質を定量評価するシステムを開発。
・BIM/CIMと連携し、ダム建設全体のデジタル管理を強化。 - 2027年度には完全自動化システムの完成を目指す
・作業の全自動化により、省人化・省力化をさらに推進。
・労働環境の改善と建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に貢献。
まとめ:建設現場の未来を切り拓く技術革新
グリーンカット作業の自動化は、労働負担の軽減・施工効率の向上・品質の安定化という3つの大きなメリットをもたらします。
特に、SLAM技術の導入やBIM/CIMとの連携は、建設業界のDXを加速させる重要なステップとなるでしょう。今後、グリーンカット作業だけでなく、他の建設プロセスにも自動化技術が応用されることで、建設現場のオートメーション化がさらに進むことが期待されます。
ダム建設という巨大なインフラプロジェクトにおいて、「ロボットが働き、人が管理する」時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
参考情報
□西松建設株式会社「ダムコンクリートの打継ぎ処理を自動化するマシンを開発」https://www.nishimatsu.co.jp/news/2025/post_143.html
※本記事は、西松建設株式会社の公式リリース情報をもとにしています。