トンネル掘削の安全性と効率を向上させる新技術
トンネル工事の現場では、粉じんや落盤のリスクが常に伴い、作業員の安全確保と生産性向上が課題とされてきました。こうした状況を打破するため、建設大手の安藤ハザマが遠隔操作移動式コンベヤを開発し、無人化による効率的なトンネル掘削を目指しています。本記事では、この最新技術の開発背景や特長、今後の展望について詳しく解説します。
遠隔操作移動式コンベヤ開発の背景
山岳トンネル工事では、掘削作業中に発生するズリ(掘削で出る岩石や土砂)を効率的に搬出することが重要ですが、従来の方法では次のような課題がありました。
- 作業員の安全リスク:粉じんによる健康被害や切羽(掘削最前線)での事故リスクが高い。
- 作業の負担:ホイールローダーを使った積み込み作業など、長時間の作業が必要。
- 非効率なズリ搬出:トンネル掘削が進むにつれ、コンベヤとの距離が離れ、スムーズな搬出が難しくなる。
こうした課題を解決するため、安藤ハザマは、株式会社リョーキと共同で遠隔操作移動式コンベヤを開発。さらに、三井三池製作所の試験ヤードおよび実際のトンネル工事現場で実証試験を行い、その有効性を確認しました。
遠隔操作移動式コンベヤの特長
今回開発された遠隔操作移動式コンベヤには、以下のような特長があります。
- 遠隔操作による安全で快適な作業環境
タッチパネル式の遠隔操作装置を採用し、作業員は現場詰所など快適な環境からコンベヤの操作が可能。危険なトンネル内部での作業を減らし、安全性を大幅に向上させます。 - 周囲の状況を確認できる安全装置を搭載
・周囲確認用カメラ:遠隔地からリアルタイムで周囲の状況を確認可能。
・衝突防止用ミリ波レーダー:障害物との接触を防ぎ、安全に移動できる。 - 掘削の進捗に応じた柔軟な運用
従来の連続ベルトコンベヤは掘削が進むと切羽から遠ざかってしまうため、作業のたびに位置を調整する必要がありました。日々延伸テールピース台車との組み合わせにより、コンベヤを掘削現場に近い位置に保ちつつ、遠隔操作移動式コンベヤで細かな調整が可能になりました。 - ズリの受け入れをスムーズにする大型ホッパー
ズリを受け入れるホッパーのサイズを拡大し、搬出作業の効率を向上。掘削作業と連動したスムーズなズリ搬出が可能になります。
実証試験の結果:スムーズな運用を確認
実証試験は、以下の2つの環境で実施されました。
- 三井三池製作所の試験ヤード
- 実際の山岳トンネル工事現場
試験の結果、遠隔操作移動式コンベヤを使用することで、以下の点が確認されました。
✅ 各種建設機械との連携がスムーズに行える
✅ 掘削ズリの受け渡しが滞りなく実施できる
✅ 遠隔操作による作業の省人化が可能
この技術の導入により、山岳トンネル工事の無人化がさらに加速し、作業員の負担軽減と生産性向上の両立が実現できる見込みです。
今後の展開と技術の進化
安藤ハザマでは、今後も以下のような取り組みを進めていくとのこと。
- 開発技術のさらなる改良:より精密な遠隔操作や自動化技術の導入
- 現場での実証試験を拡大:実際のトンネル工事現場での運用を増やし、実用化を加速
- 他の自動化技術との統合:AI-ロードヘッダや移動式クラッシャーとの連携強化
これらの取り組みを通じて、山岳トンネル工事の完全自動化・無人化を目指し、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく方針です。
まとめ:遠隔操作技術がトンネル工事の未来を変える!
山岳トンネル工事は、安全性・生産性の向上が求められる分野ですが、安藤ハザマの遠隔操作移動式コンベヤの開発は、その課題を解決する大きな一歩となりました。
🔹 作業員の安全確保:粉じんや落盤のリスクを低減し、遠隔操作で安全性を向上
🔹 省人化・効率化:作業員の負担を減らし、スムーズな掘削・ズリ搬出を実現
🔹 DXの推進:AI・自動化技術と組み合わせ、建設業界のデジタル化を促進
この技術がさらに発展し、完全無人化が実現すれば、山岳トンネル工事の新しいスタンダードになるかもしれません。今後の展開に注目です!
参考情報
□株式会社 安藤・間「遠隔操作移動式コンベヤの開発-山岳トンネルにおける「掘削~ズリ出し」の無人化を目指して-」https://www.ad-hzm.co.jp/info/2025/20250324.php
※本記事は、株式会社 安藤・間の公式リリース情報をもとにしています。