災害時の迅速な被災状況把握と点検DXの推進
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)新潟支社、第一建設工業株式会社、エアロセンス株式会社の3社が連携し、VTOL型(垂直離着陸型)ドローンの自動飛行機能を活用した鉄道設備点検の実証実験を実施しました。2024年3月に磐越西線で行われたこの実験は、災害発生時の被災状況を迅速に把握し、安全性の向上と作業負担の軽減を目指すものです。
実証実験の背景
道インフラは、自然災害の影響を受けやすい施設のひとつであり、被災時の迅速な状況把握と復旧計画の策定が重要です。従来の点検手法では、作業員が徒歩や軌道用カートを用いて目視確認を行う必要があり、時間と労力がかかるうえ、安全面でも課題がありました。
そこで、東日本旅客鉄道(JR東日本)新潟支社、第一建設工業、エアロセンスの3社が協力し、VTOL(Vertical Take-Off and Landing:垂直離着陸)型ドローンを活用した鉄道設備点検の実証実験を実施しました。本実験では、VTOL型ドローンの自動飛行機能を用いた点検手法の有効性を検証し、被災状況の迅速な把握と点検者の安全性向上を目指しました。
VTOL型ドローンの特長
今回の実験で活用されたVTOL型ドローンは、マルチコプターモードと固定翼モードを併せ持つハイブリッド機体です。
- マルチコプターモード:垂直離着陸が可能で、狭い場所でも柔軟に運用可能。
- 固定翼モード:水平飛行時のエネルギー効率が高く、長距離飛行が可能。
- 自動飛行機能:事前に設定したルートを最高速度100km/hで飛行し、広範囲を迅速に点検。
この特長により、従来の点検手法と比較して広範囲を短時間で確認できることが期待されます。
実証実験の内容と結果
実施場所と飛行条件
2024年3月、磐越西線喜多方駅~馬下駅間(約75km)において、VTOL型ドローンを活用した実証実験が行われました。
事前に設定されたルートに沿って自動飛行し、上空からの画像データや測定データをリアルタイムで取得。飛行後には、撮影画像を基に点群データを生成し、鉄道設備の寸法計測や詳細な被災状況の分析が可能であることが確認されました。
(1) 飛行時のデータ収集と活用
- 事前設定したルートを自動飛行し、被災箇所のリアルタイム映像を遠隔地にWEB配信。
- 現場に直接出向かずとも、被災有無の一次確認を迅速に実施可能であることを確認。
(2) 飛行後のデータ収集と活用
- 取得した空撮データを活用し、オルソ画像を生成。
- 「TRANCITY」(デジタルツインソフトウェア)を用い、連続画像から点群データを生成し、構造物の寸法計測や被災状況の詳細分析が可能であることを確認。
- このデータを活用することで、復旧計画の迅速な策定や専門技術者による詳細調査の効率化が期待できる。
今後の展開と期待される効果
今回の実証実験で得られた知見を基に、JR東日本は2025年度内にVTOL型ドローンの本格導入を目指す方針です。今後の課題として、以下の点が挙げられます。
- 災害発生直後の迅速な運用体制の確立(機体の配備・飛行計画の事前策定)
- より広範囲での適用可能性の検討(他の線区への展開)
- 点検データの活用方法のさらなる進化(AI解析や自動診断技術の導入)
また、本技術の発展により、鉄道業界だけでなく、道路・河川・橋梁などのインフラ点検全般にドローン活用が広がる可能性も期待されます。
まとめ:鉄道設備点検の未来に向けて
VTOL型ドローンの活用により、鉄道設備の点検作業は「迅速化」「安全性向上」「作業負担軽減」という大きなメリットを享受できることが確認されました。特に、災害時における被災状況の早期把握は、鉄道の復旧スピードに直結する重要な要素であり、今回の実験はその可能性を示すものとなりました。
今後、より実用的な運用方法の確立が求められますが、この技術が普及すれば、鉄道インフラの維持管理がDX(デジタルトランスフォーメーション)によって大きく進化することは間違いありません。VTOL型ドローンの本格運用が、鉄道の安全性向上と作業効率化をどこまで加速させるのか、引き続き注目していきたいところです。
※エアロセンス公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@AerosenseJpn
参考情報
□エアロセンス株式会社 「VTOL型ドローンを活用した災害発生時における鉄道設備確認の実証実験を行いました」https://aerosense.co.jp/media/pressrelease/20250321_pressrelease
※本記事は、エアロセンス株式会社の公式リリース情報をもとにしています。