無人化施工の実証 成瀬ダム工事での挑戦
近年、建設業界では生産性向上と省人化が急務とされており、デジタル技術を活用した施工の自動化が進められています。大成建設株式会社はその一環として、「T-iROBO® Rigid Dump」と「T-iDigital® Field」を連携させた無人化施工の実証実験を実施しました。本記事では、この実証の内容と、建設DXの今後の展望について考察します。
施工現場での試み
今回の実証実験は、秋田県東成瀬村の成瀬ダム原石山採取工事で行われました。
- 無人運転可能なリジッドダンプ「T-iROBO Rigid Dump」2台
- 遠隔操作対応の油圧ショベル1台(HOGシステム搭載)
これらの建設機械を専用エリア(自動運転距離:約250m)で運用し、夜間作業で47,200tのダム用骨材を運搬。オペレーター2名による監視のもと、自動運転と遠隔操縦の協調運転が実現しました。
データ連携と施工管理のDX
施工中に取得したデータは、「T-iDigital Field」のデジタルツイン技術を活用してリアルタイム分析され、
- 運搬量や効率データの即時フィードバック
- 施工機械の挙動最適化
- 遠隔からの施工監視
といった形で施工管理に活用されました。
建設DXがもたらす3つのオートメーション化
今回の実証は、「施工・データ連携・施工管理」の3つのオートメーション化を検証するものでした。それぞれのポイントを整理します。
1.施工のオートメーション化—省人化と協調運転の実現
従来の施工には多くの作業員が必要でしたが、今回の実証ではオペレーター2名のみで無人施工を実施。
- 複数の自動化機械が協調して作業
- 無線緊急停止システムを導入し、安全対策も強化
これにより、省人化と安全性向上の両立が可能であることが示されました。
2.データ連携のオートメーション化—施工情報のリアルタイム活用
データ活用も施工の効率化に大きく貢献しています。
- 「T-iDigital Field」により、運搬量や作業効率のデータを自動収集・解析
- クラウドでデータを共有し、現場の状況を遠隔から把握可能
これにより、手動での記録・報告作業を削減し、より迅速な意思決定が可能になりました。
3.施工管理のオートメーション化—遠隔監視で業務負担を軽減
「T-iDigital Field」を活用することで、施工管理のあり方も変化しています。
- 遠隔から施工進捗や安全確認が可能
- WEBカメラやデータ解析により、異常発生時の早期対応が可能
- 移動時間の削減により、管理者の負担を軽減
これにより、テレワーク環境でも施工管理が可能となる未来像が示されました。
今後の展望:無人化施工がもたらす建設業界の変革
今回の実証実験を通じて、建設現場の自動化・省人化・DX推進の可能性が具体的に示されました。
期待される変化
✅ 安全性の向上:無人施工による事故リスクの低減
✅ 生産性の向上:作業効率の最適化・省人化の推進
✅ 働き方の変革:テレワークによる施工管理が可能に
特にi-Construction 2.0のビジョンとも連動し、2040年までに建設現場の生産性1.5倍向上・省人化3割という目標に向けた動きが加速することが予想されます。
課題と今後の展開
しかし、完全な無人施工を実現するには、
- さらなる技術改良(AI制御・自動化範囲の拡大)
- 法律・安全ルールの整備
- 建設業界全体でのDX対応
といった課題もあります。今後、業界全体で協力しながら技術開発と制度設計を進めることが求められます。
まとめ:建設DXが生み出す新たな可能性
「T-iROBO® Rigid Dump」と「T-iDigital® Field」の連携による無人化施工の実証は、建設業界のDXにおける大きな前進でした。
- 施工のオートメーション化による省人化と安全性向上
- データ連携のオートメーション化による施工情報の最適活用
- 施工管理のオートメーション化による遠隔管理の実現
これらの技術革新は、建設現場の未来を大きく変える可能性を秘めています。
今後、さらなる技術発展と社会実装が進めば、建設業界の働き方はよりスマートに、より効率的に変わっていくでしょう。この新たな流れをどう活かしていくかが、今後の課題でありチャンスでもあります。
参考情報
□大成建設株式会社 「T-iROBO® Rigid Dump」と「T-iDigital® Field」の連携による無人化施工を実施
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250319_10375.html
※本記事は、大成建設株式会社の公式リリース情報をもとにしています。