遠隔操縦の新時代へ。熊谷組ら、シンクロアスリートを活用した建設機械の遠隔操作に成功

sugitec

建設機械の遠隔操縦が現実に

株式会社熊谷組と東京工業高等専門学校(東京高専)が共同で開発した遠隔操縦システムにより、東京・八王子から茨城・つくばにある建設機械の操作が成功しました。
この技術は、オペレータが遠隔地からリアルタイムで建設機械を操縦しつつ、短時間で交代できるという画期的なものです。

開発の背景:災害現場での無人施工の必要性

自然災害が頻発する日本において、災害復旧工事では二次災害のリスクを抑えるために無人施工が求められています
今回のシステムでは、建設機械に高解像度カメラや加速度センサーを搭載し、オペレータは遠隔操作室のコクピットで操縦。視覚、音、振動情報をリアルタイムに再現することで、まるで実機に乗っているかのような感覚で操作可能となりました。

シンクロアスリートを活用した遠隔操作の仕組み

このプロジェクトの鍵となるのが、東京高専が開発した「シンクロアスリート」というモーションシミュレータです。これは、建設機械の動きをリアルタイムで再現する装置で、3軸の自由度を持つモーションベースの上にコクピットが設置されています。

システムの構成

  • 360度カメラ & 加速度センサー:建設機械の動きをリアルタイムで記録し、遠隔地のコクピットに送信。
  • ヘッドマウントディスプレイ(HMD):オペレータはHMDを装着し、建設機械の視点で操縦。
  • モーションシミュレータ:建設機械の傾きや振動を再現し、操縦時のリアリティを向上。
  • インターネット回線によるデータ伝送:遠隔地にいるオペレータも、低遅延でリアルタイムの操作が可能。

このシステムでは、東京高専のコクピット(No.B)からの遠隔操縦に加え、熊谷組の実験室(No.A)にもコクピットを設置し、2カ所で同時に搭乗感覚を共有できる仕組みが実現されました。

実証実験:80km離れたつくばの建設機械を操縦

2024年12月下旬に実施された実証実験では、東京高専のオペレータがシンクロアスリート(No.B)を使い、つくばにある不整地運搬車を遠隔操作しました。
この際、熊谷組の実験室に設置されたNo.Aのコクピットでも同じ映像や振動が再現され、遠隔操縦の様子をリアルに体験可能でした。

実験の主な成果

  • 遠隔操縦の映像・音声・振動の遅延は平均0.53秒と、ほぼリアルタイムでの操作を実現。
  • 遠隔地にいるオペレータの交代がスムーズに行えることを確認。
  • 実験室のコクピット(No.A)は、インターネット環境さえあればどこでも設置可能であることを証明。

今後の展望:どこからでも操縦できる未来へ

2024年6月の段階では、つくばの機械を熊谷組の実験室から操作する方式でしたが、今回の改良により東京高専側のコクピットからも直接遠隔操縦できるようにアップデートされました。
これにより、オペレータの所在地に縛られず、必要なときに即座に操縦を交代できる環境が整いつつあります。

今後はさらに、

  • 遅延のさらなる低減
  • 建設機械の種類の拡充
  • 災害対応システムとしての実用化

    などを目指し、システムの発展が期待されます。

まとめ:建設業のDXが加速する

今回の遠隔操縦技術は、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を大きく前進させるものであり、現場の安全性向上や人手不足の解消につながる画期的な技術です。
特に、オペレータの所在地を問わず瞬時に操縦交代ができる点は、今後の無人施工や災害復旧の現場で大きなメリットをもたらすでしょう。

技術の進歩により、「遠隔でのリアルな操縦」はもはやSFではなく、実用化が目前に迫っています。今後のさらなる発展に注目です。


参考情報:
□株式会社熊谷組「複数台が連動するシンクロアスリートを用いた遠隔地からの建設機械の操縦に成功~八王子からつくばへ~」
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2025/pr-20250312-003746.html
※本記事は、株式会社熊谷組の公式リリース情報をもとにしています。

□お問い合わせ先
熊谷組のリリースについてのお問い合わせ先
株式会社熊谷組 経営戦略本部 広報部 電話:03-3235-8155
東京工業高等専門学校 総務課総務企画係 電話:042-668-5111(代表)

技術に関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 土木事業本部 土木技術統括部 土木DX推進部 電話:03-3235-8653
東京工業高等専門学校 総務課総務企画係 電話:042-668-5111(代表)

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