背景:労働環境の変化と自動化の必要性
建設業界は、高齢化や人手不足の影響を受け、生産性向上が急務となっています。特に、山岳トンネル工事における切羽作業は、粉じんによる健康リスクや過酷な作業環境が問題視されており、重機オペレーターが長時間にわたり従事する現状では、作業の自動化・遠隔化が求められています。
ICTを活用して熟練技能者の知見を次世代へ伝え、安全かつ効率的な施工を実現する取り組みは、業界全体の大きな課題解決に直結します。
開発経緯と実証試験の成果
安藤ハザマと株式会社三井三池製作所は、これまで「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATMアイナトム®)」の開発を推進してきました。
2024年6月には、令和3年度中部縦貫坊方トンネル工事において、AI-ロードヘッダを用いた自動掘削および遠隔掘削の実証試験を実施し、その有効性を確認しました。今回、さらに作業の無人化を推進するため、掘削からズリ出しまでのプロセスに集土・排土機能を付加した「積込み機能付きAI-ロードヘッダ」が開発されました。
積込み機能付きAI-ロードヘッダの主要な機能と特徴
- 自動運転機能
本装置は、内蔵センサによって自身の位置と掘削対象の切羽面を正確に把握し、専用PCが生成する移動経路に沿って半球形のドラムを操作し、自動掘削を実現します。暗闇でも目標を認識できる「機械の目」により、切削中の負荷に応じてドラムの速度を自動調整するため、最適な運転が可能です。 - 遠隔操作機能
遠隔操作室から、機械の「移動」「掘削」「集土」「排土」といった一連の動作を制御できるため、現場に直接赴くことなく、作業全体を安全かつ効率的に監視・操作できます。3Dモデルのデジタルツインが実機と連動し、ヘッドの角度や機体の姿勢を詳細に把握できる点も大きな特徴です。 - 自己位置推定とデータ収集機能
搭載されたLiDARセンサーを活用し、坑内のマッピングを実施。作成したマップ上における現在地を推定することで、精度の高い自己位置把握を実現します。また、電流・電圧、振動、温度などのセンサーデータをクラウド上にアップロードし、作業状況の可視化や有人操作時の動作記録の収集を通じて、さらなる自動掘削の最適化が可能です。 - 集土・排土機能
掘削で発生する土砂の搬出を容易にするため、集土装置・排土装置に加え、回転式シュートを装備。これにより、掘削土砂運搬機械との位置調整が簡単になり、工程全体の無人化を一層推進します。
今後の展開と展望
積込み機能付きAI-ロードヘッダは、2025年度に実際の山岳トンネル工事において運用され、その効果が実証される予定です。さらに、現場での作業員の掘削手順を記録・解析することで、より高度な自動化技術への改良が期待されます。
安藤ハザマは、今後も自動化・無人化技術の開発を推進し、安全性と生産性の向上を実現することで、山岳トンネル工事をはじめとする現場全体の革新に貢献していく構えです。
まとめ:自動化技術が切り拓く建設現場の未来
積込み機能付きAI-ロードヘッダの開発は、機械掘削工法における掘削からズリ出しまでの一連の工程を無人化するための画期的な技術です。自動運転、遠隔操作、自己位置推定、データ収集、そして集土・排土機能を統合することで、現場作業の省力化・安全性向上を実現。
私見として、こうした技術革新は、建設現場における作業負担の軽減と事故リスクの低減に直結し、労働環境の改善および生産性の向上に寄与する重要な一歩だと考えます。未来の建設現場は、よりスマートで安全、そして持続可能なものへと変革していくことでしょう。
参考情報
□株式会社安藤・間「積込み機能付きAI-ロードヘッダの開発」
https://www.ad-hzm.co.jp/info/2025/20250228.php
※本記事は、株式会社安藤・間 社が発表した公式リリース情報をもとにしています。