プロジェクト概要と背景
1936年に竣工し、京都・祇園の街並みを象徴する国登録有形文化財「弥栄会館」。その歴史的価値を守る一方、耐震性の不足が指摘されたため、文化財の魅力を残しながら現代の安全基準に適合させるべく、躯体の一部保存および外壁の保存と増改築を組み合わせたホテル再生プロジェクトが立ち上がりました。今回、2025年10月の竣工、2026年春の開業を目指し、解体、保存、新築が同時進行する極めて複雑な工事が進行中です。
工事の難しさと挑戦
本工事は、京都という伝統と厳格な景観条例のもとで実施されるため、施工現場のスペースや車両の制限、さらには観光客が多い繁忙な祇園の環境など、数多くの困難が伴います。たとえば、主要な道路への搬入出は早朝に限定され、車両は4t以下とするなど、細部に至るまで安全と景観への配慮が求められました。
また、古い建物ゆえに、既存の図面との乖離や予期せぬ構造上の問題が発見され、現場と設計部門が密に連携して解決策を講じるなど、技術的な挑戦が続きました。さらに、文化財としての美的価値を保つため、外装タイルやテラコッタの再利用、3Dスキャナーによる精密な点群データ化など、保存技術の向上にも注力しています。
弊社の貢献と役割
弊社は、この一大プロジェクトに携わり、外壁タイルの改修工事(剥落防止等)など、技術的な側面で貢献させていただきました(上記写真は弊社施工作業状況)。
弊社の技術者たちは、現場での密な連携を通じ、保存工事の難題を乗り越えるためのノウハウを蓄積し、プロジェクトの成功に寄与できたと感じています。
今回、弊社にとっても大きな成長の機会となりました。文化財保存と現代建築技術の融合は、単なる技術的挑戦に留まらず、地域の歴史や伝統を未来に継承する重要な意義を持ちます。弊社は今回の経験を活かし、難解な現場における修繕・改修や、今回のような文化財保存技術の向上に努める所存です。
まとめ
今回の弥栄会館再生プロジェクトは、技術と情熱が結集した一大挑戦です。弊社は、歴史ある文化財を未来に繋ぐための技術的解決策の一端を担うことができたことを誇りに思います。
私たちは、伝統を守りながらも、現代の安全性や効率性を実現する革新的な工法が、社会全体の発展と持続可能な未来に寄与すると確信しています。
概要
名称:(仮称)弥栄(やさか)会館計画
場所:京都市
発注:【解体】八坂女紅場学園【増築】帝国ホテル
設計:大林組
概要:RC造一部SRC造、B2、7F、PH付、延10,804m²
工期:2021年6月1日~2025年10月15日(解体工事を含む)
施工:大林組
当プロジェクトの内容は、株式会社大林組のプロジェクト最前線にて紹介されています。
「京都・祇園の文化財がホテルとしてよみがえる」:https://www.obayashi.co.jp/thinking/detail/project87.html