建設現場の安全性向上に求められる技術革新
建設業界では、クレーンの接触事故が大きな課題の一つとなっています。特に、複数のクレーンが稼働する現場や、送電線・通信設備の近くでは、クレーンのブーム(アーム部分)が障害物に接触し、大事故につながるリスクが高まります。
こうした事故を未然に防ぐため、清水建設グループの株式会社エスシー・マシーナリは、**GNSS(全球測位衛星システム)を活用した衝突危険警報システム「クレーンアシスト」**を開発・実用化しました。本システムにより、クレーンの位置と向きをリアルタイムで把握し、事故のリスクを事前に警告することで、作業現場の安全性向上が期待されます。
「クレーンアシスト」とは? 〜リアルタイム測位による事故防止〜
「クレーンアシスト」は、日本版GPS「みちびき」を活用し、センチメートル単位でクレーンのブームの位置を測位するシステムです。
システムの構成
「クレーンアシスト」は、以下の4つの機器で構成されています。
- GNSSアンテナ(ブーム先端・下端に設置) → クレーンの正確な位置を測位
- GNSS受信機 → 測位データを取得
- ルーターボックス(運転室内に設置) → データ通信を管理
- タブレット端末(運転室内) → ブームの位置や警報を表示
このシステムにより、0.2秒間隔でブームの「緯度・経度・高さ」を測定し、タブレット画面上でリアルタイムに可視化できます。
「クレーンアシスト」の機能と特長
1.複数クレーンの衝突防止
- 現場に複数のクレーンがある場合、各クレーンのブームの位置と向きをリアルタイムに検出。
- 最も接触リスクの高いクレーンとの最短距離を計算し、警報を発することで、オペレータに注意を促す。
- 危険レベルに応じて、タブレットの画面の背景色が変化(黄→橙→赤)、警報音の音量も段階的に増大。
2.作業空間の制限を考慮した警報機能
- 送電線や通信施設の近くで作業する場合、衝突リスクがある空間の座標を事前に設定。
- クレーンのブームがその空間に近づくと、自動で警報を発し、通信障害や停電事故を防止。
3.高精度な測位技術(誤差12cm以下)
- GNSS測位の精度は誤差12cm以内。
- これにより、従来の目視やマニュアル操作に頼らず、安全性を確保できる。
導入のメリット 〜安全性向上とコスト削減を両立〜
- 事故リスクの低減
「クレーンアシスト」により、クレーン同士の接触事故や送電線・通信設備への接触事故を防止し、安全な作業環境を確保できます。 - オペレータの負担軽減
リアルタイム測位と自動警報により、オペレータが目視で確認する負担を軽減し、作業に集中できる環境を提供します。 - 作業の効率化とコスト削減
・事故による工事の遅延を防ぎ、現場の生産性向上につながる。
・保険料や事故対応にかかるコストを削減できる。
さらに、本システムは12.5万円/台・月でレンタル可能であり、初期投資を抑えて導入しやすい点もメリットです。
今後の展望 〜建設業の安全革命へ〜
株式会社エスシー・マシーナリは、今後も「クレーンアシスト」のレンタル・外販を推進し、建設現場の安全対策を強化していく方針です。また、GNSS技術のさらなる活用を視野に、建設機械全般の安全管理システムの開発も期待されます。
まとめ 〜 GNSS技術が建設現場の安全性を革新する
「クレーンアシスト」は、GNSS技術を活用したクレーン衝突防止の画期的なシステムです。従来の目視やマニュアル操作に頼ることなく、リアルタイムでクレーンの位置を把握し、事故リスクを低減できる点は、今後の建設業界にとって大きな進歩といえるでしょう。
建設現場の安全確保が一層求められる中で、このようなデジタル技術の導入が、業界全体の安全性向上と生産性向上につながることは間違いありません。今後の普及とさらなる技術革新に期待したいところです。
この内容に関するお問い合わせ先
□清水建設株式会社
お問い合わせフォーム:https://www.shimz.co.jp/inquiry/