革新的な鉄骨接合技術が高層建築の生産性を向上
鹿島建設(社長:天野裕正)は、高層建築における鉄骨梁端部の接合技術を刷新する「鹿島式ストレート梁工法」を開発し、札幌市の「(仮称)札幌4丁目プロジェクト」など8件の工事に採用しました。
本工法は、CFT(コンクリート充填鋼管)柱と鉄骨梁の接合部に孔あき鋼板ジベルを活用し、従来の水平ハンチなしでも高い構造性能を確保できるのが特徴です。これにより、柱周辺のスペースが広がり、鉄骨製作の効率化と現場の溶接作業量削減が実現します。
開発の背景 〜阪神・淡路大震災の教訓から進化〜
1995年の阪神・淡路大震災では、多くの鉄骨大梁の端部が破断する被害が発生しました。この経験を踏まえ、鹿島建設は従来、梁端フランジを拡幅する「水平ハンチ」を導入することで耐震性を向上させてきました。しかし、水平ハンチの使用には以下の課題がありました。
- 設計の制約:柱周りの設備スペースが狭くなる
- 製作・施工の負担増:鉄骨加工や現場溶接の手間が増える
- 品質リスク:溶接部の精度確保が難しく、補強作業が必要になる
このような課題を解決すべく、鹿島建設は新たな鉄骨梁の接合手法を模索し、「鹿島式ストレート梁工法」を開発しました。
「鹿島式ストレート梁工法」の特徴
本工法では、CFT造柱の接合部にジベルを溶接し、コンクリートとの一体化による補強効果を活用します。その結果、水平ハンチを不要にしながらも高い構造性能を確保できるようになりました。具体的な利点は以下の通りです。
- 設計の自由度向上
水平ハンチが不要になることで、柱周辺の設備スペースを広く確保でき、建築設計の柔軟性が向上。 - 施工の省力化とコスト削減
水平ハンチの取り付け作業が不要になり、鉄骨製作の手間が削減。さらに、現場での溶接作業量が軽減されることで、工期短縮やコストダウンにつながる。 - 溶接品質の向上
従来のハンチ付き梁では、フランジ幅の変化による溶接部のズレが課題だったが、ストレート梁にすることで精度管理が容易になり、溶接品質の安定化が図れる。
現場溶接ロボットとの連携でさらなる効率化
さらに、鹿島建設は本工法と合わせて現場溶接ロボットを活用した上向き溶接技術を導入。この技術により、溶接時の「スカラップ(切り欠き)」を省略し、ジベルなしでも高い構造性能を確保できます。これにより、現場ごとのニーズに応じた最適な接合方法を選択できるようになりました。
構造実験による性能検証
本工法の信頼性を証明するため、鹿島建設は柱梁接合部の構造実験を実施。結果として、ジベル補強による耐力向上が確認され、従来のノンスカラップ鉄骨梁と同等の変形性能を持つことが証明されました。この成果をもとに、日本建築センターから一般評定を取得しています。
今後の展開 〜CFT造建物の標準工法へ〜
今後、CFT造の高層建築はますます増加すると予測されており、耐震性だけでなく、施工の合理化やコスト削減が求められる時代になっています。「鹿島式ストレート梁工法」は、そうしたニーズに応える有力な技術として、今後の建築現場での採用が拡大していくことが期待されます。
まとめ 〜建築の未来を見据えた合理化技術〜
「鹿島式ストレート梁工法」は、過去の震災の教訓を踏まえた安全性向上と、現代の建築現場が直面する省力化・合理化の課題を両立した画期的な技術です。日本の建築業界では今後、職人不足やコスト削減の必要性が高まる中、こうした施工効率を向上させる技術の重要性が増していくでしょう。
鹿島建設は、この技術を軸に鉄骨建築の新たなスタンダードを築き、設計の自由度と生産性の向上を両立させることを目指しています。今回の導入実績を踏まえ、今後も技術の進化と市場ニーズに対応する工法の開発が期待されます。
この内容に関するお問い合わせ先
□鹿島建設株式会社
リリースに関するお問い合わせ:https://www.kajima.co.jp/news/press/contact/index.html