概要
鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、CFT構造※1を採用する現場において、鋼管柱内にコンクリートを充填する作業の遠隔管理を可能にする工事映像配信システム「moni-asTM」(モニアス)※2を開発し、複数の現場で導入を開始というリリースニュースをお届けします。
「moni-as(モニアス)」とは?
「moni-as」は、さくらインターネット株式会社(以下、さくらインターネット)が提供するライブ配信サービス「ImageFlux Live Streaming」※3を採用しており、鋼管柱内のコンクリートの充填状況を、タブレットやスマートフォンなどから遅延なくリアルタイムに確認することができます。
※1 円形または角形の鋼管柱の内部にコンクリートを充填した構造
※2 monitoring assist system
※3 独自のライブ配信サービスをインフラ運用不要で構築できるマネージドサービス https://imageflux.sakura.ad.jp/livestreaming/
「moni-as」の配信画面、画面下部が操作バー(鋼管柱内のコンクリート充填状況)
moni-as機器本体(上)、有線カメラ(左下)、電源ケーブル(右下)
開発の背景
CFT構造は、剛性・耐力・変形性能・耐火性能などの面で優れ、柱断面をスリムにして有効空間を広くとることができるため、近年採用数が増加しています。
このCFT構造は、鋼管柱内に充填するコンクリートの品質管理が特に重要です。
そのため、専門知識を有する施工担当者がコンクリートの充填作業に立ち会い、施工状況を管理する必要があります。
鹿島建設では、鋼管柱内への異物混入や、充填中のコンクリート性状の異変をいち早く発見するために、充填コンクリートが到達する階から鋼管柱内に有線カメラを吊り降ろし、施工担当者がそのカメラを引き上げながら、充填中の映像を常時目視確認することで品質を確保しています。
一方、鋼管柱内へのコンクリート充填作業は連続した長時間作業となることが多く、その間、施工担当者は現場から離れることができないため、施工担当者の業務負担の軽減が課題でした。
また、充填中のコンクリート性状に異変が生じた際の適切な判断および迅速な対応は、専門知識を有する技術者でなければ難しいことから、当該技術者の確保も課題でした。
そのため、本社や支店などの遠隔地からでもリアルタイムで当該技術者が品質管理できるシステムの開発が求められていました。
moni-asの概要と特長
鹿島建設が開発した「moni-as」は、鋼管柱内に吊り降ろした有線カメラを通じて、工事現場の事務所だけでなく本社および支店などの遠隔地にも、遅延なくリアルタイムに施工状況の映像を配信するシステムです。また、専用アプリを必要とせず、パソコンやスマートデバイスで閲覧できます。
CFT構造の鋼管柱内のコンクリート充填作業においては、タイムラグなく品質管理を行うことが特に重要です。そのため、映像の配信には、さくらインターネットが開発基盤として提供する「ImageFlux Live Streaming」のWebRTC※4を採用し、無線通信で0.5秒以下という低遅延通信を実現します。
映像配信は、施工担当者が専用端末の画面上で「配信」ボタンをクリックするだけで行えるなど、
初めての利用者でもすぐに使えるよう、直感的に操作できるインタフェースを採用しています。
技術者は配信されたURLにアクセスすれば、リアルタイムにコンクリートの充填状況を確認できます。この配信映像は全て自動的にクラウドサーバーにアーカイブされるため、施工完了後にいつでも再確認することが可能です。映像の閲覧以外に音声通話やチャットも可能で、CFT充填作業の遠隔管理に必要な機能を備えています。
※4 映像や音声などの大容量のデータをリアルタイムに送受信できるオープン規格の通信技術
「moni-as」によるCFT柱コンクリート充填作業の遠隔管理イメージ
現場への導入と検証
鹿島建設は、「moni-as」を施工中の複数の現場に導入し、効果を検証しました。
その結果、専門知識を有する技術者が、遠隔地からリアルタイムにコンクリート充填状況を確認でき、不要となった現場間の移動時間を利用して他現場の支援も可能であることを確認しました。
また、映像の配信が有線通信から無線通信になったことで事前の配線作業が、配信映像データを自動アーカイブ化することでデータ移行作業が不要となったため、施工担当者の業務負担を大幅に軽減できました。
今後の展開
鹿島建設は今後、「moni-as」を配筋検査業務などの用途にも活用していきます。
これにより、さらに快適で魅力的な建築生産プロセスを推進し、「鹿島スマート生産ビジョン」と働き方改革の実現に繋げてまいります。
資料引用:鹿島建設
おわりに
「moni-as」の構築に寄与したライブ配信サービス「ImageFlux Live Streaming」のベースとなるWebRTCとは、簡単にどのようなものなのでしょう。
WebRTCは、ウェブブラウザやモバイルアプリでリアルタイム通信を実現するオープンソースプロジェクトです。従来の技術と比べて、以下の利点があります。
- プラグイン不要: 専用のプラグインをインストールすることなく、ブラウザ上で動作します。
- リアルタイム通信: 音声や映像をリアルタイムに送受信できます。
- 低遅延: 従来の技術と比べて低遅延で通信できます。
- オープンソース: 誰でも自由に利用・開発できるオープンソース技術です。
- 多様なブラウザ対応: Chrome、Firefox、Safariなど、主要なブラウザで動作します。
では、WebRTCが今後に実現できることは?
WebRTCを利用することで、以下のような機能をウェブブラウザ上で実現できます。
- ビデオ通話: ブラウザ上でビデオ会議を開催できます。
- ライブ配信: リアルタイムで動画を配信できます。
- チャット: テキストチャット機能を提供できます。
- 画面共有: 自分の画面を相手に共有できます。
- 遠隔操作: 相手の画面を操作できます。
- 教育: オンライン授業やオンライン学習に活用できます。
- 医療: オンライン診療や遠隔手術に活用できます。
- ゲーム: オンラインゲームの開発に活用できます。
WebRTCの仕組み
WebRTCは、P2P通信とサーバーを組み合わせた仕組みで動作します。
- P2P通信: ブラウザ同士が直接データを送受信することで、低遅延を実現します。
- サーバー: NAT越えや複数人接続などの機能を提供します。
WebRTCの今後の展望
WebRTCは、今後も様々な分野で活用されることが期待されています。
- メタバース: メタバース空間でのコミュニケーションに活用できます。
- IoT: IoTデバイスとのリアルタイム通信に活用できます。
- AI: AIとのリアルタイムな対話に活用できます。
このようにWebRTCは、ブラウザ上でリアルタイム通信を実現する革新的な技術です。
今後も様々な分野で活用されることが期待されています。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202403/14a1-j.htm