概要
株式会社安藤ハザマ(以下、安藤ハザマ)は、コンクリート構造物における品質向上と現場施工の効率化を目指し、コンクリート打継面処理の評価を誰でも簡易かつ瞬時に漏れなく行える打継面処理評価システム「ミドリガメ(注1)」を開発というリリースニュースをお届けします。
誰でも瞬時に品質を判断。未処理部分を漏れなく抽出可能。
写真1:打継面画像の取得状況と判定結果画面
開発の背景
コンクリートダムや橋脚などのコンクリート構造物では、打継面処理により打継コンクリートとの付着を向上させます。打継面処理は、打継面のレイタンス(注2)を高圧水やワイヤーブラシなどによって取り除く処理です。不足すると打継面の力学・耐久性能の低下に大きく影響するため、適切に処理を実施することが重要です。
現在、打継面処理の良否判定は熟練技術者の経験に基づいた目視判定によって行われることが多く、経験未熟な技術者がこれらを簡易かつ定量的に確認できる状態とはなっていません。
これらの課題を解決するために、本システムではタブレット端末で撮影した画像から打継面の良否を簡易かつ瞬時に漏れなく評価することを可能にしました。
システムの概要と効果
本システムは、打継面処理後の打継面の骨材分布状態に着目し、以下の構成としました。はじめに、タブレット端末で打継面画像を取得し、対象とする骨材のみを抽出するためにフィルタサイズ(注3)の異なる2種類の平滑化画像(注4)を生成します。次に、これらの差分から骨材部を定量的に抽出し、骨材部の面積割合を基に処理の良否を判定します(図1参照)。
任意のメッシュ単位で「処理十分」「処理不十分」の判定結果を数秒で表示します。これにより、漏れなく追加処理の要否をその場で確認することができ、迅速に是正指示が行えます。
事前に現場環境に適したパラメータ設定を行うことで、打継面の乾湿状態にかかわらず誰でも簡易かつ適切に判定が行えます。
判定結果は自動的にタブレット端末に保存され、トレーサビリティの確保に活用できます。
図1:打継面処理判定の概要
今後の展開
土木・建築問わず、さまざまな現場へ幅広く「ミドリガメ」を導入していきます。また現在、さらなる機能拡充を進めており、今後も「ミドリガメ」を通じて、コンクリート構造物の品質向上と職員・作業員の業務省力化・効率化を推進していきます。
※注1 ミドリガメ
「ミドリガメ」は打継面処理(=グリーンカット)をカメラ判定することから「グリーン=ミドリ」とカメラ判定の「カメ」を取って名付けました。
※注2 レイタンス
コンクリート中のセメントの微粒子や骨材の微粒分が、コンクリートの上面に上昇して堆積した、多孔質で脆弱な薄層
※注3 フィルタサイズ
一般的に画像のノイズを除去するために行われる処理(フィルタ処理)の平滑化を行う領域のサイズ
※注4 平滑化画像
画像中の急激な濃度値の変化を滑らかにした(ぼかした)画像
資料引用:安藤ハザマ
おわりに
コンクリート打継面処理が不十分だと、以下のような問題が生じます。
強度不足
- 新旧コンクリートの接着力が低下し、構造物の強度が低下します。
- 設計通りの強度が発揮できず、最悪の場合、構造物の崩壊に繋がる可能性があります。
- 特に、引張力や剪断力を受けやすい部材では、強度不足の影響が大きくなります。
漏水
- 打継面から水が浸入し、漏水が発生します。
- 漏水は、建物の腐食やカビの発生、鉄筋の腐食など、様々な問題を引き起こします。
- 水密性が要求される構造物では、特に重大な問題となります。
耐久性低下
- 打継面から酸素や塩分などの劣化因子が浸入し、コンクリートの内部を劣化させます。
- 凍結融解サイクルや塩害など、外部環境の影響を受けやすくなります。
- 構造物の寿命が短くなり、修繕コストが増加します。
鋼材腐食
- 打継面から水が浸入し、鉄筋などの鋼材が腐食します。
- 鋼材の腐食は、構造物の強度低下や断裂に繋がる可能性があります。
- 特に、海沿いの地域や塩分が多い環境では、鋼材腐食が進行しやすくなります。
美観の悪化
- 打継面が不均等になったり、ひび割れたりして、美観が悪くなります。
- 意匠性の高い建物では、特に問題となります。
現場の匠の感を「機械学習」に落とし込むことで、業務省力化・効率化が実現されています。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社安藤ハザマ
リリースニュース:
https://www.ad-hzm.co.jp/info/2024/20240213.php