概要
鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、神奈川県内の複数のレディーミクストコンクリート工場(以下、生コン工場)で発生した戻りコン※1から、スラッジ※2再生セメント「Cem R3」(セムアールスリー)を製造する体制を構築し、さらに、その「Cem R3」を用いた環境配慮型コンクリート「エコクリートR3」(アールスリー)※3を、鹿島建設が神奈川県横浜市内で建設を進めている共同住宅の柱・梁・床に採用したというリリースニュースをお届けします。
「Cem R3」と環境配慮型コンクリート「エコクリート®R3」
「エコクリートR3」は資源循環を図りながらCO2排出量を抑えることができる環境配慮型コンクリートで、住宅用途建物への採用は初めてです。鹿島建設は今後、「エコクリートR3」の採用先の拡大と既開発の環境配慮型コンクリートの環境性能向上をさらに進め、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
※1 受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されずに工場に戻されるコンクリート
※2 戻りコンの洗浄排水から骨材を取り除いて回収したセメント分を多量に含む水を脱水したもの
※3 2012年度から環境省の環境研究総合推進費(3J153001)による研究助成を受け、鹿島、三和石産、東海大学の3者で共同開発
新たに構築した「Cem R3」製造体制
「エコクリートR3」の打設状況
Cem R3の製造体制概要
「エコクリートR3」は、製造工程で大量のCO2を発生するセメントの代わりに、戻りコンから骨材を取り除いた後、脱水・粉砕して製造するスラッジ再生セメント「Cem R3」を、原材料として利用します。
これまで「Cem R3」は、三和石産株式会社(本社:神奈川県藤沢市 社長:中田泰司)の藤沢工場で発生する戻りコンを対象に同工場でのみ製造していました。
今般、鹿島建設が川崎市臨海部に保有する工場に「Cem R3」の新たな製造拠点を立ち上げ、複数の生コン工場で発生した戻りコンを収集して「Cem R3」を製造する体制を構築しました。
新体制では、周辺の生コン工場で発生する最大7工場分程度の戻りコンの処理に対応できるため、「Cem R3」の製造能力が従来の約7倍程度に向上します。
また、戻りコンの受入条件の設定、製造時の品質管理により品質を確保することで、「エコクリートR3」は一般財団法人日本建築総合試験所の技術性能証明(GBRC材料証明 第16-10号 改3)を、各生コン工場では生コンJIS認証を取得しています。
新たに立ち上げた「Cem R3」製造拠点(リコーン社:川崎市川崎区)
(戻りコン処理量: 約1500m3/月、Cem R3製造量: 約500t/月)
エコクリートR3の採用拡大
新体制で製造した「Cem R3」を原料とする「エコクリートR3」を、鹿島建設が横浜市内で建設中の共同住宅に初採用しました。
「エコクリートR3」は、「Cem R3」の含有量を調整することで幅広い用途に採用できます。
今回は、住宅用途に合わせるべく、法律で規定された基準※4に従って、「Cem R3」の含有量を10%としました。建物の柱・梁・床に採用した結果、施工性も良く、強度も充分であることを確認しました。
※4 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する「表示すべき住宅の性能に関する評価方法基準」
「エコクリートR3」の採用箇所
今後の展開
今後鹿島は、「Cem R3」の新たな製造体制のもと、「エコクリートR3」の採用先を様々な用途の建物に拡大していきます。また、新たな環境配慮型コンクリートの開発や、既開発の環境配慮型コンクリートの環境性能をさらに向上させることで、脱炭素社会への移行に積極的に貢献していきます。
フロール横濱関内 完成予想パース
供用開始: 2024年4月
募集HP: https://kjk-yokohama.jp/
工事概要
工事名称: (仮称)弁天通3丁目計画新築工事
工事場所: 横浜市中区弁天通三丁目47番2
発注者: 神奈川県住宅供給公社
設計者: 鹿島建設・梓設計設計共同企業体
施工者: 鹿島建設・工藤建設共同企業体
建物用途: 賃貸共同住宅・商業施設
延床面積: 約9,290m2
構造: RC造一部S造、地上13階、地下1階
工期: 2022年1月~2024年2月(予定)
おわりに
建設現場での余剰コンクリートである「戻りコン」の問題点は、処分のための費用をかけて再生されずに廃棄されているケースがほとんどです。残コンは、出荷先の生コン工場に戻ります。一般には工場の敷地内に薄く敷き、翌日に硬化したコンクリートを破砕し産業廃棄物として処理するのが一般的でした。
工事現場で注文したコンクリート量のうち、1~2%程度発生しています。全国の工事現場の残コンをトータルすると、年間150~200万立米もの残コンが発生しているため、環境に負荷をかけているのが現状です。再生骨材の利用としては、品質の差異があり、付着モルタルや異物の混入が問題となっています。
解決策としては、再生骨材の品質向上や効果的な再利用方法の開発が進められてきました。技術革新によって再生工程を改善し、品質管理を徹底することで再生骨材の利用範囲を広げることが重要です。
また、コンクリートの設計段階から再生骨材の使用を促進する政策やガイドラインの導入も考慮すべきで、環境負荷を減らし、有効な資源を再利用するために、業界全体での取り組みが求められています。
鹿島建設の「エコクリートR3」は、基本工程とおりに、戻りコンから骨材を丁寧に取り除くシステムを経て、脱水・粉砕して製造するスラッジ再生セメント「Cem R3」を原材料としています。その工程は、脱炭素社会とサステナビリティを志向する鑑といえるでしょう。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202312/6a1-j.htm