概要
清水建設株式会社(以下、清水建設)は、RC(鉄筋コンクリート)造の建物の大梁端部を高強度化することで耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発というリリースニュースをお届けします。
梁端部の主筋を増強。地震時の柱梁接合部の損傷を抑制。
本構法では、RC造の建物の梁端部の主筋を増強し、地震時に損傷が生じやすいヒンジ領域を梁の中央側に移行させて柱から遠ざけることで、柱と梁の接合部の損傷を最小限に抑制します。
これにより、地震に強く、より安全性の高いRC造建物の建設が可能になります。
本構法は、豊海地区第一種市街地再開発事業に初適用しています。
これまでRC造の建物は、構造上の理由から、地震時の揺れによる損傷を梁の端部に発生させるように設計されていました。この誘発損傷部分は、大きな地震によって建物が繰返し何度も揺れると、柱梁接合部に進行し、損傷部が広がるケースがあります。
柱梁接合部は一旦損傷すると補修が極めて難しく、地震後の建物の継続使用や早期復旧の観点から、柱梁接合部の損傷を防ぐ技術が求められていました。
今回開発したシミズハイレジリエントビーム構法では、梁端部の主筋を増強し、柱際から梁の中央側に向かって約300mmの範囲の構造強度を向上させることで、ヒンジ領域を柱際から遠ざけます。
これにより、梁のヒンジ領域が梁の中央側に移行するため、地震時の柱梁接合部の損傷を防いで健全な状態に保つことが可能になり、復旧時の作業負荷を軽減できます。
また、梁端部が非ヒンジ領域となることで、梁端部に主筋の継手を設けることができ、構造上、交差した状態での製作が必要だった柱梁を切り分けて、それぞれ柱・梁単材での製作が可能になります。
部材の形状が単純化できることで、製作工場から現場への運搬効率や、現場での施工性が向上します。ヒンジ領域が柱際から遠ざかるため、配管などを通す躯体の貫通孔を梁端部に計画することも可能になり、下り天井の範囲を縮小できる利点もあります。コストは従来構法とほぼ同等です。
豊海地区第一種市街地再開発事業の建設現場では、主に長さ7m・梁せい(高さ)1m・幅0.8mの梁に本構法を初適用しています。本構法の実証実験は、建物の構造的な知見を深く持つ静岡理工科大学の協力のもと、清水建設技術研究所と共同で実施しました。
実験では、実現場で初適用した梁の約2/5スケールの試験体を製作し、震度7相当の負荷をかけて耐力や損傷度を検証しました。本構法を適用した試験体は、従来構法と同等の耐力を維持しながら、柱梁接合部の損傷が軽微な補修で済む程度に抑制できることを確認しています。
清水建設は今後、本構法を広く展開していくことで、安全・安心でレジリエントな社会の実現への一助としていく考えです。
実証実験の様子
≪従来構法≫
柱梁接合部が損傷している
≪シミズハイレジリエントビーム構法≫
柱梁接合部の損傷が抑えられている
シミズハイレジリエントビーム構法を適用した配筋のイメージ
豊海地区第一種市街地再開発事業イメージパース
豊海地区第一種市街地再開発事業 概要
施行者 | 豊海地区市街地再開発組合 |
所在地 | 東京都中央区豊海町41番 |
工期 | 2023年1月~2027年(予定) |
区域面積 | 約2.0ha |
建築物の敷地面積 | 約15,901m2 |
建築物の延床面積 | 約228,096m2 |
主要用途 | 住宅、店舗、区民館、診療所、保育所 |
構造・規模 | 鉄筋コンクリート造・54階地下1階建 |
特定業務代行者(設計・施工) | 清水建設株式会社 |
おわりに
懸念される自然現象として…
10月9日に太平洋沿岸で津波を発生させた地震の震源の伊豆諸島・鳥島近海をJAMSTEC(海洋研究開発機構)が調査した結果、海底に火山の噴火活動によってできたカルデラ状の地形が確認されています。
JAMSTEC担当者は「津波との関連は分からないが、揺れによる音波の発信源が今回確認された海底火山の可能性は高い」と分析。10月9日に発生した地震で太平洋沿岸の各地で最大70センチの津波が観測され、気象庁は鳥島の南の海域を震源としていますが、津波の詳しい発生メカニズムは不明。
JAMSTEC(海洋研究開発機構)は地震の震源にあたる鳥島の南西およそ80キロにある海底火山の孀婦海山周辺の地形を音波を使って調査。結果、過去の噴火活動によってできた長さおよそ6キロのカルデラと呼ばれる巨大なくぼ地が見つかり、その北側には火口の直径が2キロほどある小規模な火山が確認された(NHKニュースより:2023年11月22日 6時58分)。
そして、この伊豆諸島・鳥島近海から北上すると、
静岡県伊東市の沿岸から沖合にかけて、主に川奈崎の沖合を中心とした北西-南東方向のおよそ20kmの範囲では、過去に何度も群発地震が発生しています。一つの群発地震の活動期間は数日から10日程度ですが、長いものでは1か月程度続いたことがあります。
群発地震の活動域が伊東市の市街地に近いことから、M5クラスの地震が発生すると伊東市を中心として震度5弱程度の強い揺れが予想され、場合によっては被害を伴うことがあります。これまでに発生した最大の地震は1980年のM6.7の地震です。
このような群発地震活動が、1978年以降これまでに49回発生。1998年までは活発な活動が発生していましたが、その後、活動はやや低調になり、群発地震活動期間中の地震回数も以前に比べて少なくなる傾向がみられます。2012年以降は、群発地震活動は小康状態にあります(気象庁より)。
こうした予測されうる危機を新構法で未来の住まいにレジリエンスを埋め込み、清水建設の歩みは続く。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□清水建設株式会社
リリースニュース:
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023041.html