概要
株式会社竹中工務店（以下、竹中工務店）は、20年以上蓄積してきた構造設計結果データを学習したAI建物リサーチ・AI断面推定・AI部材設計の3つから構成される「構造設計AIシステム」を開発、全面導入したというリリースニュースをお届けします。
お客様の意志決定をサポートし、より高付加価値を提案
竹中工務店は、構造設計業務に2001年に自社開発した構造設計システム「BRAINNX®（ブレインエヌエックス）」（※1）を利用しています。BRAINNXで設計された建物約500件、30万以上の構造部材の諸情報は、社内の建設デジタルプラットフォーム（※2）に集積されています。集積された構造部材の諸情報を「構造設計AIシステム」に学習させ、「BRAINNX」の機能として実装することで、設計業務期間における計算作業に使う時間を大幅に削減します。
お客様への設計提案を迅速に行うことができ、これまで以上に速やかにプラン提案が可能となります。
そして新たな付加価値の提案に費やせる時間が増えることで、より高品質な建物設計を実現します。
今後はAIの学習に必要な構造データを常に最新の情報に更新し、AIを進化させ続け、さらなるお客様の満足度向上を目指します。構造設計AIシステムは、HEROZ株式会社と共同で開発・機能向上を行っています。
※1 BRAINNX：建物モデルの入力を容易にする超概略入力機能や強力な断面設計機能、複雑な建物形状への対応機能、地震応答解析機能、く体積算機能、各種BIMやCADソフトとの連携機能等を備えており、基本設計段階から詳細設計段階まで幅広く利用できる構造設計システム。
※2 建設デジタルプラットフォーム：当社が構築した、営業から維持保全に至る一連の建設プロセスにおけるプロジェクト業務や人事・経理など、事業に係わるすべてのデータを一元的に蓄積し、AIなどで高度に利活用するための基盤。2021年11月より運用開始。
「構造設計AIシステム」の活用例
- AI建物リサーチ：類似性の高い過去事例を自動探索し、最適な構造計画の提案を支援
プロジェクト初期段階での構造計画提案を支援します。計画条件ごとに複数の類似建物が提示されるため、構造計画別の部材数量を容易に比較でき、合理的な構造計画の方針決定が可能となります。
- AI断面推定®：部材の断面情報を迅速に決定、お客様との速やかなプラン検討を支援
構造設計結果を学習したAIが、柱・梁などの配置条件や構造的特徴から必要断面寸法を推定します。設計初期段階のお客様の速やかなプラン検討を支援します。
- AI部材設計®：時間のかかる繰り返し計算をサポート、効率的で高品質な設計を支援
部材ごとに個別に算定された仕様をまとめ、より合理的に安全性や生産性の高い最適な構造設計をサポートします。多数回繰り返しの検討業務を自動化することで、付加価値の提案に費やせる時間を確保し、より高品質な建物設計を実現します。
関連リリースニュース
竹中工務店とHEROZ 建設業におけるAI活用に向けて共同開発着手（2017.11.17）
https://www.takenaka.co.jp/news/2017/11/04/
おわりに
２０２５年大阪・関西万博に大阪府と大阪市が出展する「大阪パビリオン」の建設費算出にも寄与しているのだろう。
もともと、府と市は建設費を７４億円と算出し、参考価格として示した上で公募型プロポーザル方式で工事業者を募集。竹中工務店など２社が応募し、うち１社は審査前に辞退したため、竹中工務店が優先交渉権を獲得している。
しかし、竹中工務店が提示した見積額は１９５億円で、１２０億円もの開きが生じている。
特に差が大きかったのが屋根の部分で、府と市の１５億円に対して竹中工務店は５倍の７４億円。
屋根は網目状になっており、はめ込むガラス材の形状が異なるが、府と市はそれに伴う価格上昇を反映していなかったのが要因である。府と市はその後、建設費を圧縮するよう竹中工務店と交渉し、建物全体を覆う予定だった屋根を来場者から見える範囲に小さくしたほか、屋根のガラス材を薄い膜に変えるなどして１１５億円まで圧縮案を提案するが、
議会では批判が噴出。予算案自体は可決されたものの、市議会は、建設費の削減に努めるよう付帯決議で求めてくる。府と市は、竹中工務店がさらなる圧縮を検討した結果、屋根の縮小に伴って基礎部分を簡素化できると判断し、９９億円で合意した背景がある。
この建設費交渉の裏には難波の“商人”と構造設計AIの攻防があったのだろう。
□株式会社竹中工務店
リリースニュース：
https://www.takenaka.co.jp/news/2023/09/03/
□HEROZ株式会社
