鹿島建設✕AI inside
AIとドローンによる新たな資機材管理システムで作業時間を75%削減。

sugitec

概要

建設現場では数多くの資機材を扱うが、従来の資機材管理では、現場職員が現場内を巡回して、目視と手作業で実施していました。また、現場で使用する資機材の大半はレンタル品のため、点検期限切れの資機材の使用してしまう危険性や、重複してレンタルしてしまうなどの問題もありました。
この度、それらの問題を解決するために鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)はAI inside株式会社(以下、AI inside)と共同で、AI insideが提供するAI統合基盤「AnyData」を利用した「AIとドローンによる資機材管理システム」を開発というリリースニュースをお届けします。

AIとドローンによる資機材管理システム

現場3Dモデルでの資機材表示例(黄色文字はAIが検出した資機材名称と通し番号)

本システムは、ドローンが空撮した動画からAIが資機材を認識し、その位置を現場3Dモデル上に表示するものです。このたび、国土交通省北陸地方整備局発注の大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事(新潟県長岡市、以下本工事)における資機材管理に適用し、その作業時間を約75%削減(1回あたり約2時間→30分)しました。なお本システムは、2022年度の国土交通省「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択され、今回、その有用性を確認・検証したものです。

開発の背景

建設現場では、建設物の構築にあたり数多くの資機材を扱います。
従来の資機材管理は、現場職員が現場内を巡回し目視と手作業で行っていました。
しかしながら、これらの手法は、膨大な手間と時間を要するだけでなく、現場職員が高所や狭所等に立ち入るという安全上の課題があります。
また、現場で使用する資機材の大半はレンタル品となりますが、万が一、点検期限切れの資機材を使用していた場合、作業員の安全を脅かすリスクが懸念されます。
さらに、管理が行き届かない場合、資機材を重複してレンタルし、それにより余分なコストが発生するおそれもあります。

本システムの概要とフロー

鹿島建設とAI inside社は、人より高速で自由に移動が可能なドローンと、画像の識別が可能なAIを組み合わせ、新しい資機材管理システムを開発しました。
本システムの概要とフローは以下のとおりです。

①学習データ準備~AIへの学習【事前準備】
ドローンが撮影した空撮画像を使い、AIに現場内の資機材の名称と形を学習させます。AIモデルの構築には、AI inside社が提供するAI統合基盤「AnyDate」を採用しています。

②ドローンによる現場の撮影
ドローンで現場内の動画撮影を行います。一定の高度から撮影を行い、その空撮動画とドローンの飛行記録をPCに取り込みます。

③AIによる解析と結果の出力
①で学習した結果をもとに、撮影した空撮動画と飛行記録からAIが資機材名称と位置を推定します。その結果を現場3Dモデルに取り込むことで、資機材の位置を現場3Dモデル上に表示します。

※AI開発・実装に求められるデータ・学習・運用を全て包含したAI統合基盤。テキスト・画像・数値などあらゆるデータに対応し、高度なスキルがなくても、それぞれの課題に応じた高付加価値なAIソリューションを開発できる

「AnyData」について
AI開発・実装に求められるデータ基盤・学習基盤・運用基盤といった基本機能を全て包含した、マルチモーダルなAI統合基盤です。AI inside のテクノロジーを複合的に活用し、数値・画像・テキストなど様々な形式のデータをマルチモーダルに処理しながら、お客様の任意の課題解決に寄与する高付加価値なAIソリューションを生み出します。

サービスページ:https://any-data.inside.ai/

本システムの成果

本システムにより、ドローンによる空撮動画からAIが資機材の名称と位置を検出し、現場3Dモデル上に見える化することが可能となりました。現在、人と同程度の大きさの資機材であれば概ね検出できており、検出可能な資機材は25種類に上ります。
また、個別の管理を行いたい資機材については、プラカードを使用した識別によって法定点検日等を管理することも可能です。

現場3Dモデル上に資機材の位置を可視化することにより、広大な敷地の現場でも資機材の管理を効率的に行うことができます。
これにより、活用していない資機材も判別できるため、そのような資機材があれば返却するなど、無駄をなくすことにもつながります。
本システムの効果を検証した結果、従来の作業と比較して、資機材管理の作業時間を約75%削減(1回あたり約2時間→30分)できることを確認しました。

プラカードを使った個別管理

今後の展開

今後、鹿島建設では、本システムの資機材の検出精度を向上させるとともに、手で持ち運べる小さい資機材の検出率向上に取り組んでいきます。また、本工事で構築したAIモデル(資機材学習モデル)は、他の現場でも活用できるため、全社への展開も視野に入れています。
さらに、本システムと、鹿島建設の多くの土木現場で活用が進んでいる、現場見える化統合管理システム「Field Browser®」とを連携させることで、さらなる現場業務の効率化を目指します。
これらの技術を発展させることで建設現場のDXをさらに推進していきます。

工事概要

工事名  : 大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事
   大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期その2工事
工事場所  : 新潟県長岡市寺泊野積107-23
発注者  : 国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所
施工者  : 鹿島建設・五洋建設・福田組特定建設工事共同企業体
工事諸元  : 鋼殻ケーソン基礎工 9基
   本堤工 1式
   減勢工 1式
   護床工 1式
   仮設工 1式(仮橋・仮桟台工、ガイド杭工 各1式)
工期  : 2019年2月13日~2024年12月27日

資料引用:鹿島建設

おわりに

このマルチモーダル処理とはどのような処理なのでしょうか?

マルチモーダル処理は複数の入力情報を統合して処理する手法を指します。
この処理工程は、テキスト、画像、音声、動画など、異なる種類のデータを同時に扱うことを可能にします。各モーダル(情報の形式)が独立して存在する場合でも、統合された情報を利用してより豊かな理解や効果的な処理が可能になります。

例えば、マルチモーダル処理は以下のような用途で活用されます:

  1. 自然言語処理と画像処理の組み合わせ:テキストと画像を同時に解析し、より精度の高い感情分析や内容理解を行う。
  2. 音声認識とテキスト処理:音声入力をテキストに変換して、テキストデータとして処理・分析する。
  3. 視覚と音声の結びつき:音声解析と同時に画像または動画を解析することで、より正確な物体認識や状況理解を行う。
  4. 複数のソースからの情報を組み合わせて予測する:例えば、自動運転システムではセンサーデータ、カメラ映像、地図情報を複合的に解析して適切な行動を決定します。

マルチモーダル処理は、個々のモーダルが持つ情報の補完と相互作用によって、より高度な意味理解や予測が可能になります。この手法は、自然な人間のコミュニケーションや認識に近づくために、人工知能の分野で幅広く応用されています。


参考・関連情報・お問い合わせなど

□鹿島建設株式会社
リリースニュース:
https://www.kajima.co.jp/news/press/202307/19c1-j.html

□AI inside 株式会社
リリースニュース:
https://inside.ai/news/2023/07/19/aiinside-kajima/

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