概要
東亜建設工業株式会社(以下、東亜建設工業)は、建設DXに取り組む野原グループの野原ホールディングス株式会社(以下、野原ホールディングス)と、研究施設の増築工事における施工フェーズでのBIM活用による乾式壁のプレカット施工※1を導入し、現場施工の効率化(作業時間の短縮)と二酸化炭素・現場廃棄物量の削減効果を共同実証したというリリースニュースをお届けします。
現場従事者不足と生産性向上、環境負荷低減にBIM活用効果を実証
内装工事は、建設プロジェクトの全体工期の終盤に行われる専門工事です※2。
壁や天井下地、石膏ボード、仕上げ、設備工事等と工種は多岐にわたり、現場従事者も工種ごとに入れ替わり、非常に人数が多いのが特徴です。
東亜建設工業と野原ホールディングスは、実証結果から、内装工事(乾式壁)へのBIM活用が、二酸化炭素排出量削減・現場廃棄物量の減少と、現場施工時間の短縮による生産性向上に効果があり、技能工不足への有効な解決策となりえることを確認しました。
一方で、施工BIMの体制・フロー、施工箇所ごとの最適なプレカットと作業効率のバランス等の課題も明確になりました。
今後、両社は実証結果と課題を踏まえ、施工フェーズでのBIMの在り方、内装工事と密接に関連する建具工事や設備工事へのBIM展開等について、複数の建物用途での実証により、BIMを活用した、建築主、設計者、元請業者、協力業者までを含むサプライチェーン全体での業務改善、効率化を目指してまいります。
実証概要 | 【研究施設(内装工事)】 BIM活用による乾式壁のプレカット施工の導入が及ぼす、現場施工の効率化(作業時間の短縮)と二酸化炭素・現場廃棄物量削減の検証 ※主要BIMソフトはRevit |
実施企業 | 東亜建設工業株式会社、野原ホールディングス株式会社 |
活用技術 | BIM設計-生産-施工支援プラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」の次の技術サービスを活用 1.施工BIMから建材パーツレベルまで詳細度を上げる「内装BIM詳細化」 2.パーツレベルのBIMから建材メーカーの加工に繋げる「内装BIM-プレカット加工連動」 |
期間 | 2022年3月~2022年12月 |
実証場所 | 東亜建設工業株式会社 技術研究開発センター 第二実験棟 2階の特定エリア |
実証項目 | 1.施工BIM作成から内装詳細BIM作成までの業務フロー試行による次の課題抽出 1)協力会社を含めたBIM作成体制の構築 2)BIMによる情報一元管理、変更管理 2.内装工事/乾式壁施工における、BIMを活用したプレカット施工導入による在来工法との次の比較(注)と課題抽出 1)現場作業の効率化(人工および作業時間の短縮) 2)現場廃棄物量・二酸化炭素排出量の比較 【注記】実証場所が特定階の特定エリアのみのため、施工m数やm²数での仮定を元に比較 (現場廃棄物量は過去実績数値からの推定値) |
※2 非住宅分野における内装工事の詳細は、建設産業担い手確保・育成コンソーシアムより発表されている「【内装仕上げ工事ガイドブック第13版】」を参照願います。
実証結果の概要
今回、東亜建設工業と野原ホールディングスは、東亜建設工業作成の施工BIMから、乾式壁の施工に必要な程度に詳細度をあげた内装施工BIMを野原ホールディングスが作成し、建材(主に軽量鉄骨下地材・石膏ボード)の割付BIM作成、プレカット施工へと展開しました。
BIM活用により自動算出される建材数量およびプレカット寸法等をもとに、建材メーカー工場でプレカットを行い、割付BIMをもとに内装工事会社が施工を実施しました。
主な実証結果
【生産性向上】
BIM活用プレカット施工により、軽量鉄骨下地材の施工時間は10~20%減少し、石膏ボードの施工時間は1.5~4分/m²の減少を実証でき、現場施工の効率化を確認。
【環境負荷軽減】
プレカットBIMモデルで建材数量を正確に把握でき、適切な数量の建材発注により、下表の削減効果※3を確認。
建材に関連する環境負荷軽減
※プレカット施工部の工m数やm²数から、実証場所全体をBIMプレカット施工した場合に換算した予測値
現場廃棄物量 | 二酸化炭素排出量 |
約36~56%減 | 約36~60%減 |
【現場の労務安全性】
LGS・石膏ボードのプレカット施工により、現場での高速カッター等の使用頻度が減少。
その結果、騒音および火花・粉塵発生の抑制、高速カッター・工作用カッターの誤操作による労働災害の防止に効果を確認。
【内装割付BIMの画像】BIM上での割付 赤枠:プレカット材、赤枠上部:定尺材
【実際の施工状況】現場施工の様子_下部にプレカット材(赤線部分)上部に定尺材を順に貼り付ける。
作業は、カット作業無しで順番に張り付けていくのみ。仕上がりの天井高+αの寸法でサイズを見込んでいる為、端部調整等も不要。
「私たちの今が、社会の未来を創る」を体現
自社物件という事で、本案件については様々なチャレンジをさせて頂きました。その一つがBIM活用です。BIMを単なる見える化や施工図化するだけではなく、将来有効にデータベースとして活用できる手法を模索している中、野原ホールディングス様に声を掛けて頂き、今回の実証を行う事が出来ました。
東亜建設工業株式会社 経営企画本部DX推進部 部長 兼DX企画課長
当初は業務効率化だけを期待していましたが、地球環境の改善や安全面にも寄与できる素晴らしい取組みだと改めて気づかされました。作業員不足が懸念される中、デジタル技術を活用してフロントローディングで出来る事はまだまだ沢山あると感じていますし、今回の実証が将来的に通常フローになればいいと考えています。
BIMについては、社内標準化もまだまだ模索中ですが、今回の実証のようにBIMの活用が広がれば、さらにBIM活用に拍車がかかり、当社のコーポレートメッセージの様に、私たちが今やっていることが、建設業の未来を創るという志を体現できたと感じています。
今後も引き続き、野原ホールディングス様と一緒にこのような取組みを継続的かつ積極的に実施できれば幸いです。
中野亘氏より
資料引用:東亜建設工業
おわりに
折しもこうした調査結果も公表されています。
建設業の2024年問題と働き方について、意識調査の結果、人手不足を「感じている」または「少し感じている」は96.5%、高齢化の「実感がある」または「少しある」は96.9%という結果になりました。
そして、人材確保のために優先すべき課題に対しては、「給与体系の見直し」と「労働環境の改善」が急務であると考えていることが明らかになりました。
そのほかにも建設業界における女性雇用は、約半数の企業が「10%以上30%未満」という結果をはじめ、残業時間管理に対しては6割の企業が残業管理を「積極的に行っている」または「行っている」と回答しています。労働時間の適正化に向けての動きでは、「デジタル化(DX)」が43.7%で、「人材確保」の34.5%より多い結果となっています。(ジャパンホームシールド株式会社による自社調査より)
建設業の2024年問題とは、「働き方改革関連法」が適用開始される2024年4月までに建設業界が解決しなければならない労働環境問題のことです。
ただし建設業では、一部の働き方改革関連法案の適用に5年間の猶予期間が設けられています。
背景には、建設業界の高齢化や、労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化しているといった労働環境問題の課題があげられます。
これらの問題解決は短期間では難しい点を考慮し、建設業では働き方改革関連法の適用が5年後の2024年4月に延期されています。
それぞれの現場単位、企業単位で建設DXが進み始めています。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□東亜建設工業株式会社
リリースニュース:
https://www.toa-const.co.jp/company/release/2023/230613.html