概要
株式会社奥村組(以下、奥村組)は、ユアサ商事株式会社(以下、ユアサ商事)と共同で、コンクリートの散水養生における乾湿状況を自動で認識できるロボットを開発し、実用化に向けた実証実験を行ったリリースニュースをお届けします。
コンクリート散水養生 自動認識ロボット
建設業における技能労働者数の減少は喫緊の課題であり、各種工事の省人化・効率化とともに、より高度な品質管理が求められています。
コンクリート打設後の散水養生は、コンクリートの強度や仕上がりを左右するため、乾湿状況の管理が非常に重要です。しかし、適切な湿潤状態を維持するには目視による常時確認が必要で、大変な労力がかかるうえ、養生期間において湿潤状態が維持されていることを定量的に自動記録する技術の開発も進んでいないことから、効率的な湿潤養生管理を実現する技術の開発に着手しました。
開発概要
「コンクリート散水養生 自動認識ロボット」は、桐生電子開発合同会社と共同開発した光学センサ(特許出願中)を搭載しており、コンクリート表面の乾湿状況を定量評価し自動認識することで、コンクリート打設後の湿潤養生管理を適切に行うとともに、点検・記録作業の省人化に繋がります。
《コンクリート散水養生 自動認識ロボットの概要》
実証実験の結果
奥村組の施工現場にて実証実験を行い、下記の3点を確認しました。
- コンクリート表面の乾湿状況を定量的に3段階(乾燥/半乾燥/湿潤状態)で判定することができました。
- ロボットの自律走行により、1,000m2規模の床コンクリート表面の乾湿状況を30分程度で自動認識することができました。
- コンクリート表面の乾湿状況をカラーマップ上に表示し、可視化することができました。
今後の展開について
建設現場に即した操作性や耐久性の向上、自動散水設備との連携およびロボットの小型化等の改良を進め、2024年度からの一般販売(ユアサ商事による)を目指します。
資料引用:奥村組
おわりに
コンクリートの養生方法にはさまざまな種類があります。
それぞれ乾燥防止、保温、温度ひび割れの防止、強度発現促進等と目的が異なりますので、構造物の種類や施工条件、立地、気温・湿度、周りの環境などの状況に応じて適切な養生を行うことが重要です。では、コンクリートの養生に失敗したらどうなるのでしょうか?
耐久性の低下
表面からの乾燥によって内部の水分が逸散すると、セメントの水和反応が十分に行われなくなり、硬化不良や強度不足が発生する恐れがあります。結果、コンクリートの耐久性が低下するなど品質にも影響します。
温度ひび割れの発生
セメントと水の水和反応が起こると水和熱が発生し、コンクリートの温度が上昇します。構造物の大きさによっては内部は100℃に達することもあります。
温度上昇による膨張と、温度降下による収縮で体積変化が起こります。外気に冷やされる表面部分は引張応力が増加し、コンクリートの引張強度以上となると温度ひび割れが発生します。
湿潤養生では、散水により温度が下がりひび割れが発生することもありますので、水分の供給だけではなく、温度の影響も考慮することが大切です。
寒冷地での凍害
水が凍結して氷になると体積は9%位膨張しますが、コンクリートの硬化過程で水分の凍結・融解作用を受けると強度低下やひび割れ、破損を起こします。この現象を「初期凍害」と言います。
コンクリート打設後の初期材齢で一度でも凍結すると、コンクリートは初期凍害を受け、その後適切な温度で養生を行っても、強度・耐久性が低下しますので、寒冷地では温度管理に特に注意が必要です。
参考・関連情報・お問い合わせなど
□株式会社奥村組|https://www.okumuragumi.co.jp/
リリースニュース:
http://www.okumuragumi.co.jp/newsrelease/2023/post-38.html
株式会社奥村組 ICT統括センター イノベーション部 戦略課 増田
TEL:070-4233-7021 E-mail:takayuki.masuda@okumuragumi.jp
□ユアサ商事株式会社|https://www.yuasa.co.jp/
□桐生電子開発 合同会社
https://www.krydk.co.jp/